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全国スポーツ大会の改編;インターハイ

前回の note には、国民スポーツ大会;国スポの改編を望むことについて、記しました。その続きとなります。

高校スポーツの祭典であるインターハイ(全国高等学校総合体育大会)も、変わるべきもののひとつであると考えます。

ここではインターハイ陸上競技に絞り、私が望む姿・形などを記します。

ハードルの高さを下げて世界標準規格に」、開催費削減と猛暑対策などに向けて「参加規模を減らしてラウンドを少なく・日程短縮を」あるいは「秋の国スポと合併を」などということを書いています。

「何をばかなことを」「無理に決まっている」「何の権利と資格があってそんなことを」…ごもっともです。関係の皆さまには、お目汚しとなり恐れ入りますがご容赦ください。また、私が所属する組織を代表する見解ではなく、個人の意見であることもお含みおきください。


ハードルの高さを下げること

以前の note に、ハードルの高さに関して意見をまとめました。

私は、男子はジュニア99.1cm(現行106.7cm)、女子はユース76.2cm(現行83.8cm)の高さに変更することを望みます。

インターハイのハードルの高さは、世界の標準規格に比べて高く、中学生から高校生になった際、高さのギャップが大きい状況です(男子では 15.3cm、女子では7.6cm 上がります)。

この高さを世界の標準規格に合わせて下げることで、より多くの選手にハードルに取り組んでもらうことと、他種目におけるパフォーマンス向上にもつながることを期待するものです。詳細は下の当該記事をご参照ください。

規模を小さくする・時期を変える

インターハイ全体の課題は、開催費削減と猛暑対策であるとされています。

現在、インターハイを主催する全国高体連では、この2つの課題を解決すべく2024年5月にプロジェクトチームを立ち上げ検討を進めており、3年後に結論を導くといいます。

陸上競技に関しては、参加規模縮小もしくは時期の変更により、これら2つの課題解決を実現できると考えます。

[1]参加規模縮小

インターハイ陸上競技は参加規模が非常に大きく、全国11ブロック(北海道・東北・北関東・南関東・北信越・東海 ・近畿・中国・四国・北九州・南九州)から各種目上位6名(一部を除く)が出場権を得、男女別の種目毎に、それぞれ最大66名がエントリーします。

猛暑時期にもかかわらずトラック種目で2~3ラウンド、フィールド種目で2ラウンドの競技を行います。競技数も多いため、開催日数は5日間にも及びます。

改編の1案として、参加規模を半分程度に減らすことを提案します。

  • 全国に11あるブロック大会の上位6名全員がストレートに出場権を得るのではなく、上位2名に絞る。

  • 各ブロック大会の上位3~6位の4名;すなわち全国合計44名を対象として、ターゲットナンバー制でシーズン持ちタイムの上位14名に、出場権を与える。

こうして各種目で合計36名エントリーのもと、トラック種目で原則2ラウンド、そして男子5000m・女子3000m、競歩、フィールド種目は決勝のみで競技を実施。

開催日数も4日間程度に減らすことができるでしょう。競技日程にもゆとりができ、猛暑回避のため設けられる午後のブレイクタイムを長くすることも可能です。運営負担も大幅に減らすことができます。

現在は記録の公認制度が全国で確立されており、すでに各種大会でターゲットナンバー制が利用されています。こうした仕組みを活用することで参加規模を抑えることは、十分に実現可能と考えます。

[2]時期を変える=国体との合併

規模縮小のほか改編の2案として、国体陸上競技少年の部との合併を提案します。

インターハイ陸上競技を10月に開催し、一方で国体少年の部を取りやめ、インターハイの競技成績を都道府県得点に換算するという方式です。大会の統合によるサイズダウンです。

そして「8月にインターハイ、10月上旬に国体、10月下旬にU18」という現在の日程を、「5月または6月にU18、10月にインターハイ兼国体」という流れにするとバランスがよいと思います。

主催者が異なる大会の合併であるため、実現可能性は1案に比べ、低いものとなるでしょう。

陸上競技だけでなく、インターハイ夏季大会の屋外競技については(ウォータースポーツや競技人口が極端に少ないものを除き)、こうした方式で国スポ少年の部と統合するなどにより、秋以降に開催することが望ましいと考えます。

意義の再考

生徒の貴重な活躍の場面、活躍の機会を減らすことに対し、多くの関係者が強く反対することでしょう。同意を得がたいものであることは、十分に承知しています。それでも、現在のインターハイを見直す必要があると考えます。

全国高体連は次のように説明します。

言うまでもなくインターハイは運動部活動(以下「部活動」という。)に所属する全国 120 万人の高校生アスリートにとって憧れの夢舞台であり、教育活動の一環として開催される高校生最大のスポーツイベントである。従って、各学校で日々展開される部活動は、インターハイの基盤となる教育活動であると言える。

「運動部活動の一層の充実に向けて」 ―インターハイの課題整理と改善の方向性に関するまとめ― 公益財団法人全国高等学校体育連盟 運動部活動作業部会(令和2年6月12日)

昔は確かにこの通りでした。私が高校生だった40年前は、間違いなくこの感覚でした。

しかし現在は高校生のスポーツニーズが多様化しており、競技志向を求めない層の割合が確実に増えています。公立校では「純粋に競技を楽しみたい」「健康と体力を身につけたい」などとして部活に入る生徒の方が、多数を占めています。

団体競技の各都道府県代表校は常連校ばかりで、その多くは私立校。エリート水準の中学生がそうした学校へ集まり、他校との競技力格差は非常に大きい。少子化の進行もそうした状況に拍車をかけており、今後もその傾向は変わることがありません。

引用文の内容については、高体連組織やインターハイのもともとの成り立ちを考えると、確かにその通りであるとは思います。一方で現在における高校スポーツの現場の状況は、この文面にはフィットしないものとなっています。

それゆえに、冒頭に「言うまでもなく」と前置きを入れ、反対意見を許容しない姿勢を示しながら、従来通りの見解と方針を貫こうとする様には、悲哀なものを感じてしまいます。

私は、いわゆる競技エリートの活躍機会は一定程度に抑えつつ、生涯スポーツ寄りのスポーツ機会を広く創造していくのが、これからの高校スポーツの在り方であると考えます。

結びに

私は2020・2021年の2年間、栃木県高等学校体育連盟の理事長職にありました。その初年度にはコロナ禍に見舞われ、インターハイが史上初の中止となるなど大変な状況下におかれ、行政や関係機関などとの様々な協議機会に巡り合いました。

その経験を通じ痛切に感じたのは、現在のインターハイは持続可能なものではない、時代に合わないということです。

私は、今後インターハイを継続するにあたっては、歴史と伝統を尊重し従来通りの運営方式を続けるよりも、今の時代にふさわしい、そして未来の高校生を迎えるにあたり望ましい大会に変わってほしいと強く願うところです。

何も語らないのは現状に同意しているのと同じであるといいます。一方で、沈黙は金なりという格言もあります。私は前者を選び、ささやかながらここに意見を示す次第です。

(私の知人であったり、開催に向け尽力されている方などを含め、記事内容に気を悪くされる方もいらっしゃると思いますが、どうかご容赦ください。)