都道府県陸協における組織情報の公開状況
この記事は、全都道府県陸協のホームページ上で公開されている、組織情報の公開状況についてまとめたものです。
組織情報をホームページ上で適切に公開することによって、組織の健全性を示すことができ、社会からの信頼を高めることができます。やがては組織体制の改善や事業内容の充実など、組織の成長・発展につながることが期待できます。
リサーチについて
各都道府県の陸上競技協会のホームページをリサーチし、2023年12月23日現在における組織情報の公開状況をまとめました。
役員名簿 … 主な構成員の氏名など。
組織図 … 団体の組織構造を一目でわかるように示した図。
定款 … 団体の「憲法」といえる書類。
会議議事録 … 団体の意思決定が行われる理事会などにおける会議録。
会計情報 … 財産目録、貸借対照表、収支計算書など。
項目内容が見当たらない場合、Web上を検索して確認しました。確認失念の可能性があるため、空欄は「非公開」ではなく「未確認」になります。内容の正確性を保証するものではないことをご了承ください。
結果について
役員名簿を公開しているのは40団体(85.1%)、定款については32団体(68.1%)になります。大半の都道府県が、積極的にこれらの情報を公開していることがわかりました。
会計情報についても、10団体(21.3%)が公開しています。
すべての項目について「未確認」扱いであったのは、栃木を含め6団体でした。
情報公開が進んだ経緯
スポーツ関係団体においては昨今、スポーツ庁による「スポーツ団体ガバナンスコード」(2018年8月)に示されるとおり、組織の公正性や健全性、透明性などを適切に確保する上で、積極的に組織の情報を公開することが求められています。
背景には、スポーツ界に古くから蔓延する、不正黙認・許容体質を排除し、スポーツの社会的価値を高め、スポーツ環境を改善しようとする狙いがあります。
私は、とある都合から今回と同様のリサーチを、2017年12月に行ったことがあります。記録を残していないのですが、当時の記憶を辿ると、コンテンツ内容について、まだ現在ほど組織情報の公開が行われていなかったと思います。
都道府県陸協の多くは一般財団法人であり、本来、組織情報を公開する法的義務はありません。組織内共有・外部非公開でも、非難を受けるべきものではないといえます。
その後、おそらく2018年頃より「ガバナンス・コード」通知の影響を受け、多くの団体が公開を始めたようです。「組織の健全性や公正性、透明性を確保することが重要である」という認識が、全国に広まっていることの現れだと思います。
また、長野陸協では「ガバナンスコードの審査結果/自己説明」を公開しています。この対応を含む、諸条件を満たすことによって、サッカーくじ= toto の助成を受けることができるようになります。事業を展開する際、一定水準額;例えば予算の50%までなどを、助成してもらえるというものです。
こうした社会の情勢や制度等をみると、現在、組織情報を公開していない団体においても、手順と段階を踏んで、情報を公開していくことが望まれるところだと思います。
栃木の状況
先の資料では、栃木は現状、全項目が「未確認」扱いとなっています。同様の県は、全国で6団体ありますが、人口規模や地域などに基づく法則性は、無いようです。
次の資料には、同じ栃木県内の他競技団体における公開状況を示しました(公開している団体の一部を抜粋したものです)。サッカーとバスケットボールでは、全ての項目を公開しており、取組が進んでいることがわかります。
栃木のスポーツ界が、情報公開に対して奥手(おくて)であることを示す例を紹介します。
次に示すのは、過去記事で紹介した「2021年度・関東8都県におけるスポーツ推進審議会の議事録公開状況」の再掲です。この当時、栃木は関東8都県内で唯一、会議内容の全文や概要等を公開せず、項目のみを公開していました。他に比べ、取組が遅れていたことがわかります。
本来、県税で行われ、県全体の取組に関わる重要な審議会ですので、議事録等を外部に公開するのが一般的であると考えられます。このような、当時における行政の対応は、域内における競技団体の取組にも、少なからず影響を与えてきたものと想像されます。
説明責任を果たす
陸上競技の場合、ひとりの選手が年間に支払う「登録料」「大会参加料」は相当額に及びます。登録者数は日本陸連が公開しており、各種大会の参加人数はホームページで確認できますので、丁寧に計算すれば、年間でどれだけのお金が動くのかが推計できます。
それらが何のために、どのように使われているのか。また、組織運営に関わる構成役員は、どんなメンバーなのか。その人々が、どのような意見を交わし、組織の意思決定を行っているのか。公的性質を持つ組織であれば、本来はそれぞれについて説明責任を持つはずです。
これらを公開することと併せて、組織の経営を適切に行うことで、組織体制や事業内容の改善や充実が促されるほか、社会における信頼が高まるなど、組織の成長・発展につながることが期待できます。
公開に踏み切ること
私の過去経験から推測するに、非公開から公開に踏み切ろうとする上では、次のような理由をもとに、組織内で反対意見が生まれることが想像されます。
義務では無いことを、やる根拠は無い
これまでやっていないのだから、やる必要は無い
我々だけでなく、ほかでも公開していないところがある
公開すると(何らかの)リスクが生じ、不利益が起こる
スポーツ界の組織における判断・意思決定は、情熱(パトス)が圧倒的優位であり、その暴走しがちな情熱を、論理(ロゴス)と倫理(エトス)が調整しながら進む傾向があります。
情報公開はいわば「論理の世界」であるため、どうしても先代の年長者などによる「熱い情熱」が優先されがちです。そのため論理が情熱に負けてしまい、結果として公開が実現しない運びとなりがちです。
しかし、組織情報等を公開する取組は、例え義務では無くても広く社会から求められていることです。それを果たそうとしない組織や団体において、成長や発展は困難であり、多くの場合は衰退するのみだと思います。それほどまでに、情報公開は大切であると考えます。
結びに
この記事を公開する目的は、この分野に関するアップデートの機運を、全国に広めたいという願いにあります。そして更に広く、旧態依然とした(特に地方の)スポーツ界の古き風習や慣習、体質そのものを、変えていきたいという想いを込めて公開するものです。
(改めてになりますが、私が所属・関与する組織を代表する意見ではないことをお含みおきください。)
以上、長文をご拝読いただき、ありがとうございました。