栃木県陸上競技・種目別レコードリストのこと
「栃木県陸上競技・種目別レコードリスト」に関することを綴ります。同サービスは、栃木県の陸上競技全登録者のベスト記録を掲載しているものです(小学生・中学校所属の中学生選手を除く/2018年開設)。
経緯
栃木では2022年に国体開催を迎えるにあたり、その数年前より当然ながら「機運が高まる」状態となり、各競技団体で様々な企画や取組が進められました。
2017年当時当時、私は栃木陸協で記録情報担当でした。ある役員から「ぜひ、Webで栃木県の登録者全員のベスト記録が表示されるシステムをつくってほしい」と提案を受けました。
それはベースボール・マガジン社の有料サービス「陸上競技ランキング」(以下「陸上ランキング」)を利用すれば、事足りる話です。しかし、それを県独自に、無料で誰でも容易にアクセスできるサービスをつくろうというものでした。
陸上ランキングでは、各都道府県から公認申請データを送ってもらう見返りとして、各都道府県担当者に対し、各都道府県における所属選手の全データ(県外で出された記録を含みます)を提供してくださいます。そのデータを活用すれば、実現は可能です。
そこで、そのデータを活用したシステムを作ることに着手しました。
しくみ
利用したのは、jquery.csv2table.js というプログラム。「エクセルなどで作ったCSVファイルを読み込み、クロスブラウザなテーブル表示を行うjQueryプラグイン」というものです。ネットで検索して探し当てました。
栃木陸協でレンタルしているサーバースペース(さくらインターネット)に専用のスペースをつくり、システムを構築してWeb公開する形にしました。(HTML・CSSといったWeb言語、WebサーバーとFTPなどの仕組みの理解が必要です。)
初年度のサイト構築には、わりと結構な時間をかけました。その後、年度切り替わりの際には3時間程度あれば、新しい年度のページを構築できるようになっています。
データ更新=csv入れ替えは、だいたい2時間くらいを要します。はじめの3年間は、毎週データ更新をしていましたが、最近は月1回ペースになっています。更新の要領は以下の通りです。
陸上ランキングから提供されるcsvデータ(おおよそ2MB)をダウンロード(その年の3月1日から現在まで)
中学生のうちクラブ・個人登録選手のデータを抽出し採用
高校から一般までのデータを抽出し採用、2と合体
対象種目を選択し採用
同一選手のデータを検索し上位記録を抽出
全角カタカナの半角化や重複スペースの削除など表記調整
大会名・会場名の略称化
種目をカテゴリー分類(1つのcsvデータにまとめると読み込みが遅くなるため4分割する)
csvデータのアップロードとトップページのテキスト編集
同様のサービス構築を検討されている方のために、公開フォルダ内の構成をご紹介します。「list*_***.csv」4つが元データになります。「_archive」フォルダ内には、データ更新前の「list*_***.csv」を保存しておき、万一間違いが生じた際に復元できるようにしています。
サービス
栃木陸協・日本陸連の個人情報保護方針に沿った対応のもと、サービスを展開しています。
レコードリストという名称ですが、ランキングという表現にはしないことにしています。便宜上、記録順に並べているということです。リストのタイトル行をクリックすると、日付順、氏名順、所属順に変えることができます。
編集者としては「レコードリストの上位にある記録に価値があり、下位記録の価値が低い」という扱いではなく、「扱う記録は各選手のベスト記録であり、すべて同等に価値があるもの」という方針で編集・公開しています。
掲載対象は当初、全登録選手を予定していましたが、中体連登録の中学生は対象外とすることになりました。公開前年度の3月、中体連の内部で協議していただいた結果、その方針が示されたという次第です。なお、クラブ登録や個人登録の中学生は公開対象としています。
メリットとデメリット
開設当初から大きな反響があり、大好評でした。今でもX(旧Twitter)DMやメールなどを通じて、様々なリアクションをいただきます。総じて、多くの選手・保護者・指導者の励みや手助けになっていることを実感しています。
栃木陸協の強化スタッフからは、県代表選手を選考する際に活用できて便利とのこと。高校の先生からは「大学の指導者がこのレコードリストをみて、スカウトする選手を検討している」というお話もうかがいました。そうした情報は、運営の励みになります。
それから、中学生や高校生の保護者などからは「はじめはこのリストを使っていたのだけれど、県外・過去選手の記録などより多くの情報がほしいため、有料の陸上ランキングに登録するようになった」という声も多く届いています。そうした相乗効果的なものも、良かったと思っています。
すべての記録を公開することで、当然、序列最後の記録も表示されます。このことの是非については公開前、議論を重ねました。「標準記録制にしてはどうか」「異常値のような記録を除外してはどうか」という提案もありましたが、結局は「すべてを掲載する」ことでまとまりました。
削除要請があれば、すぐに応じることになっています。しかしサービス開始後7年が経過しますが、削除依頼は過去0件となっています。
マスターズの90歳代選手の記録や、定時制高校で競技に取り組んだ選手の記録など、序列で下位に位置することがあります。それはそれで、素晴らしいチャレンジの証である訳です。公開前には若干の懸念がありましたが、サービスを始めてみると「すべて掲載」で良かったと感じています。
これから
正確性が非常に大切なのは言うまでもないことなのですが、残念ながら、2023年度から日本陸連の登録システムが変わったことに伴い、選手の記録と所属地(都道府県)のリンクに不整合が多く生じるようになりました。現在のリストは以前に比べ、精度が低いものになっています。
そうはいってもご愛顧いただいているサービスですので、当面しばらくは続けていく見通しです。
課題は、共同編集体制の構築と、サービス継続です。これまでサービス提供を個人単独で担ってきましたが、諸事情により更新頻度が低下するなど、利用者ニーズに応じるのが難しくなっています。後継者を見つけて育てながら、チームで運営できるようにするのが理想であると考えています。