全国スポーツ大会の改編;インターハイ・その3
インターハイ(全国高等学校総合体育大会)の改編についての続稿です。
インターハイ開催費削減策として「インターハイ総合開会式」廃止と「全国高等学校体育連盟研究大会」のスリム化 を提案するという内容です。
開催経費削減に向けて
前回までの記事では、勝手ながら「インターハイ陸上競技の参加規模を縮小する案」であったり「インターハイに協賛が集まりにくく、全国高体連が財政難に陥りがちな要因」などについて私見を綴りました。
実態としてインターハイは、施設規格の高度化や各種経費の高騰、その他各種要因により、開催経費削減が避けられない状況です。
経費削減に当たっては、各競技における削減策より優先すべきものとして提案したいのが、「インターハイ総合開会式」廃止と「全国高等学校体育連盟研究大会」のスリム化です。
[1] 総合開会式の廃止
2023北海道インターハイに関して、北海道教育委員会ホームページでは 全国高等学校総合体育大会 北海道実行委員会 関係情報として収支決算資料を公開しています。
それによると2023年インターハイ開催年度における総支出見込額は、約6.8億円(675,950,564円)。その内訳として競技種目別大会運営費が5.2億円(515,272,063円:トータルの76.2%)、式典活動費が1.1億円(108,979,275円:トータルの16.1%)を占めます。
全35競技の大会運営費が「5」として、式典が「1」の割合です。相当な規模の額であるといえます。
SNS発信情報から、式典の様子をうかがうことができます。
北信越総体2021の様子
北部九州総体2024の様子
インターネットが無い時代には、こうした「総合開会式」を行うことで組織の一体感が高まるとともに、参加者の意識高揚が図られたり、各都道府県関係者の相互交流が促されたりしたことでしょう。
しかし、オンラインで情報共有や意見交換を自由にできる現在、教育活動の一環として行われる高校生の全国スポーツ大会に、こうした多額の費用をかけて行う式典が本当に必要なのか。私は不要と考えます。
従来こうした式典は「開催地における文化部生徒・生徒会生徒の貴重な発表機会」と位置付けられてきました。しかし本来、文化部や生徒会にはそれぞれに正規の発表機会、活躍の機会があります。インターハイ総合開会式は、それら団体にとって必須のものではありません。
こうした式典について、昔から続いてきたことだからといっていつまでも続けるのではなく、時流を捉えながら経費削減を適切に図るため、廃止するのは何ら不都合や不合理は無いものと考えます。
そもそもとして、イベント業者が演出をし、大会を盛り上げるといった総合開会式は、明確な意義・役割を欠くものといえます。この式典の存在に関し、参加選手やチームにメリットは無く、各競技にとって本質的に必要ないものです。
以上のことから、インターハイの経費削減策を講ずる上で、最優先事項とすべきは総合開会式の廃止であると考えます。
[2] 全国研究大会のスリム化
全国高体連では毎年1月、2日間のスケジュールで「全国高等学校体育連盟研究大会」という事業を開催しています。一部で「教員のインターハイ」とも例えられています。
オンラインで情報共有や意見交換が実現可能となった現在、こうした事業を毎年参集して開催する必要は無く、例えば従来型の事業を3年に一度開催し、間の2年については、例えば「地域ブロック別で交流発表大会を開催(1日のみ)」などとするのが良いと考えます。
生徒の活躍機会となる全国大会を「3年に一度」に制限することはできませんが、相手が先生であるなら支障ないことです。発表希望者が溢れるほど多く、年をまたいで順番待ちしている、などということも無いようです。
大会の発表内容等は、ホームページで閲覧できるよう公開すれば良いでしょう。昔と違い、Web上で好きな時に様々な情報が得られる時代です。「毎年全国持ち周り開催」は不要です。
この大会のスリム化は、事業の価値や意義を損ねること無く、経費削減・開催地負担軽減に利することとなり、生徒の活躍機会などにも影響を及ぼさないため、大いに意義がある取り組みであると思います。
接待・物見雄山を止めること
これら2つの事業について、参加対象となる大会関係者、行政関係者、来賓出席者の多くは毎年、地方持ち回りで行われるこの式典を楽しみにしていることと思います。「あの土地へ行くと、○○(観光地)に寄ることができる、○○(名産の飲食物など)を食べられる」など。
しかし、これら2つの事業は「毎年持ち回り」の必然性を欠き、形式と内容が時流にそぐわないものとなっています。恐れずに例えると、慣例に従い続けられている「大会役員と来賓を喜ばせるために接待として行われるイベント」になっているといって良いでしょう。
特に総合開会式に関しては、競技と直接的に関係がない役員や行政関係者等に対し、激励・応援という名目のもと公務扱いで物見雄山をする機会を無駄に設けるものとなっていると感じます。今の時世、経費削減が求められるのであれば、ただちに止(や)めるべきであると考えます。
(以上、放言をご容赦ください。)
結びとして
過去に私たちが辿ってきた道筋の延長線上に、次世代の望ましい未来が存在するとは限りません。
特に、戦後から高度成長期に形成された、慣習的性質を持つスポーツ組織や事業については、速やかに、社会情勢に合った形に再編成すべきであり、変わるべきもののひとつがインターハイであると考えます。
これまでの記事で取り上げた、開催経費削減と暑熱対策などを検討する「全国高体連プロジェクトチーム」が3年度、どのような結論を導くのか注視したいと思います。