9月に読んだ本
小説
すずめの戸締り
王道の中にもひねった要素があって新海誠の味みたいなのが感じられてとても好きですね。
映像を前提に作品が作られているからか、文章を読んでいて情景が浮かんでくる描写が多くて読んでいて臨場感がありとても楽しめました。
映画も見に行く予定ですね、楽しみです。
探偵AIのリアル・ディープラーニング
AIものとしても推理小説としてもかなりライトでふわっとしているけど、だからこそとっかかりやすくて読みやすい感じでもある。
本格SFが読みたい人にも本格ミステリーが読みたい人にも合わないだろうけど、なんとなくふわっと知的な雰囲気を味わいたい人とかは好きそう。
まあ二巻以降は読まないかな、買って損とは思わないけど継続して買いたいとも思わなかった。
マザコン野郎はぶっ飛んでて割と好き。
マリアビートル
ブレットトレインを観るための復習に読み直し。
終盤になるまでどう収拾をつけるのか見当もつかない展開がすごくわくわくさせてくれる作品。
伊坂幸太郎って本当にちょっとおかしな感じの人を描くのが上手いと思う。ともかく登場人物が魅力的で引き込まれるんですよね。
僕が愛したすべての君へ/君を愛したひとりの僕へ
並行世界ものという設定を利用して全く違う運命を選んだ一人の主人公の生涯についてを描いた作品。同一人物ではあるけどその性格、あり方は全然違うし、話自体が交わるのは一部だけ、ただその一部のリンクが上手い事二つの作品を繋げて一つの作品にしているのは面白い試みだなと思った。
読み方によって読後感が変わるという銘を打たれている作品だけど、個人的には君を愛したひとりの僕へから僕が愛したすべての君への流れで読んだ方が物語の流れとして綺麗になるかなと感じました、まあ好みの範疇ではある。
女神
展開ではなく文章で魅せるってこういうことだなと。
ともかく文章が読みやすく、飽きがこない、きれいな文章が続いたかと思ったら意図的に息を抜かせるための軽い冗句なども交えてきていて読ませる技術が凄まじいなと感じた。
直接的な描写をせず、比喩や暗喩を使うからこその官能的な雰囲気を愉しむと言うのもなるほど良いものですね。
恋重荷が特に好きな短編かも、表題作の女神も素晴らしかった。
ツインスターサイクロンランナウェイ
独特で結構ハードな世界観をライトノベル的な雰囲気と百合で中和して読みやすくしている作品。
技術体系から社会の仕組みまで結構がっつりオリジナルな世界観で組まれているので、SFに慣れてない人だと一瞬で離れていきそうなものなのに、それを上手い具合に二人の女性の関係性を中心に据えながら説明することで追いかけやすくしているのは本当に上手いなと思います。
ちょっと全体的な雰囲気がライトノベルに寄り過ぎなのだけが残念だったなと思う。
かわいそ笑
オムニバス形式かと最初は思ったのですが、実際は多角的に一つの物事に関して捉えた本を組んでいて、色々とギミックが楽しくてわくわく出来るホラー小説。
時代性もすごく良くて、この作品は本当に今じゃないとダメだと思う、ガラケーが過去の遺物になって、個人ブログとかが衰退して、古い廃れたインターネットと新しいインターネットが入り混じっている今という時代だからこそ面白い物語ですね。
ホラー小説ではあるんだけど個人的にはあまり怖くはなくてやってくれやがったなこいつって笑っちゃいました、楽しかったです。
月と六ペンス
ウィットに富んだ軽快で丁寧な文章で書かれていて、文章を読むだけでとても楽しい作品でした。
内容も素晴らしく、神視点ではなくストリックランドという一人の男を傍観した一人のイギリス人の独身男性の視点から綴られたこの話は、得られる情報が限られているからこその現実味があって、まるですべての人物が実在していたかのような錯覚をしてしまうほどに真に迫りつつも、破天荒な作品でとても面白かったです。
ライトノベル
三角の距離は限りないゼロ
イラストレーターのHitenさんが好きだったので前から気になっていて、完結したという話を聞いてとりあえず一巻を読んでみました。
現代のコミュニケーションにおけるキャラ文化みたいなものに関しては読んだこともあったし感じることもあったものであり、そこそこ腑に落ちたし退屈することなく読めました。
ヤングアダルト向けの娯楽作品であればこそ、そこに描かれている悩みといったものはファンタジーなものではなく身近なものであると思うのですよね。
一通りの設定が出た時点で大体結末までの流れは予想出来てしまったけど、この手の作品はストーリーよりもキャラクター重点なので問題なく楽しめました。
各キャラクターの心情が明言しすぎない程度にバランス良く書かれてて、ライトノベルとして非常に高い完成度を持っていたと思う、結構楽しめたので続きも読むかな。
月とライカと吸血姫
以前一巻だけは読んだことがあったのでとりあえずそれを改めて読み返しました。
史実をベースにしつつもライトノベルとして読みやすく纏まっていて娯楽として楽しめる作品ですね、面白かったです。
二巻以降もこれから読もうと思います。
紫色のクオリア
並行世界ものの作品を読んだことで読み返したくなって再読、一番好きなライトノベルの一つですね。
作中で使われている理論はかなりのとんでもですが(作中でもそう扱われているし)、作品の持つ勢いと引き込む力がすごいので結構一気に読めちゃいます。
結末の部分は結構抽象的かつ思想的で賛否両論あるものではあると思いますが、個人的には結構好きなのです。
砂の上の1DK
壊れてしまった人間と人間を真似る化け物のお話。
個人的にはとても良かったです、もともと人とともにある人以外の生き物をテーマにした物語が好きというのもありますが、そういった個人の好悪を別にしても出来が良く面白い作品だったと思います。
単巻完結で長さもちょうどよく、内容的にも向いていそうなのでアニメ映画とかになってほしいですね。
お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件
Twitter漫画とかでありそうな展開をそのままラノベにしましたって感じでしたね。
まあ悪くは無いんですけどあまり進んで読みたいなと感じられなかったです。
二巻以降は読まなそうですね。
1パーセントの教室
怪奇ものとして見ると恐ろしさが足りないし、恋愛ものとして見ると甘さが足りないし、ミステリーとして見るには謎が物足りなくて、青春ものとして見ると人間関係が狭い、要素を色々盛った結果芯が見えなくなっちゃっているなーって感じでした。
二巻は読まないで終わりそうです。
千歳くんはラムネ瓶の中
個人的にちょっと合わなかった作品でした。
ライトノベルとしては文章はそこそこ読みやすいんですけど、なんかいまいち話に乗り切れないというか、あまり登場人物に魅力を感じられなかったなと。
流行りの作品が合わなくなってきたのを感じると老害オタクになってきたのを実感しますね。
魔女の旅々
魔女イレイナの旅を綴った短編集。
キノの旅に近くはあるんだけどあちらよりも心情面の描写が多く、優しさ成分多めってイメージ。
後味悪めの話もほっこり来る話もあっていい感じですよね、結構好き。
漫画
マチネとソワレ
Twitterの万札でケツ拭いている広告で興味を持って一巻を買って、一巻読み終わったタイミングで全巻購入したしその日のうちに全て読み終えてしまいました。
大須賀めぐみって本当に表情だとかコマ割りでの表現が尋常じゃなく上手くて、それが演劇というテーマと奇跡的なかみ合い方をしていてすごい作品になっています。
身も蓋も無さや薄汚い欲望とひたむきさや純粋さのバランスもすごい上手く取れていて、そこいらへんの緩急もこの作品の魅力だなと思う、汚いところもかっこいいところも全部見せてくれるからどんどんキャラクターが好きになっていくんですよね。
続刊がとても楽しみです。
こみっくがーるず
きらら系列でたまに見かける、強烈な猛毒を甘ったるいほどの優しさで包み込んで見えなくしてるような作品が結構好きで、この作品もそんな感じの作品なのでかなり好物でした。
しかし登場人物を美少女にすることでこうも甘く優しい世界になるのだからやはり美少女キャラクターの持つパワーって凄まじいと思います。
ダメダメだけど頑張るかおす先生は好きです。
聲の形
絵も含めて基本的に一人称視点で進む作品で、だからこそキャラクターの心情や思考がダイレクトに伝わってくるのがすごくしんどいと同時に素晴らしい点だと思います。
登場人物の全員に問題があるし、それを認識したうえで改善をしようと努力しているのが好き。
細かい表情での心情の描き方も見事だよなと思います。
快楽ヒストリエ
土台の知識とかが無駄にしっかりしている歴史ものの中にエロ漫画ネタぶっこんでアホやっているギャグ漫画。
言ってることもヤっていることも1から10までくだらないんだけどそれ全部を真面目にやっているので本当に面白いんですよね。
まさに才能の無駄遣いって感じの作品ではありますが、無駄遣いされても天才は天才ってことみたいです。
金色のガッシュ!!2
まだ状況説明とルール説明に徹している状況でありなんにせよここからといった感じ。
わくわくするし面白くはあるんですけど、物語の展開としては大きく動いていないからじれったい気分になりますね。
続きはとても気になる状態なので2部目の一巻としてはいい雰囲気だと思います。
星おとしプール
短編集。中身自体は最後の一編を除いてpixivで読めるけど物語の配置の仕方とかも練り込まれていて買うだけの価値はあるなーと感じました。
体内と純愛が一番好きですね。
生徒会にも穴はある!
Twitterで情報見てた時は結構お下劣よりなのかなって思っていたけど、快楽ヒストリエみたいにめっちゃ下ネタ出しまくるけど直接的なお色気はあまりない感じの作品で結構読みやすいものでした。流石に電車内とかで読む気はしないくらいのお下劣さではありますが。
どのキャラもアクが強くて結構欠点(この作品的には穴と言うべきですかね?)があるのだけど、ちゃんと魅力的に書かれて過度に不快になりすぎず、でも一切の不快感が無いような書き方もされず描かれていて、だからこそキャラクターが魅力的で良かったです。
野原ひろし 昼飯の流儀
ネットミームになっているのは知っていても読んだことは無かったなと思って読んでみたんですけど、本当に初っ端っから野原ひろしが絶対に言わなそうなことを言っていて笑いましたね。
キャラクターを一切トレース出来ていないんですけど、だからこその謎の笑いみたいなのが存在するのである意味で野原ひろしというキャラを採用したのは正解だったのかも。
ただ、そのギャップに慣れたら退屈になってしまいましたね、二話目くらいまではギャップで楽しめると思います。
他
文章読本
三島由紀夫による文章読本。
いかなる文章が美しい文章であり、それが何故美しいのか、そしてそれらはどのように成り立ったのかを説明してくれるため、これ一冊で文章の美しさというものへの解像度がぐっと上がります。
そしてこの本自体が美しい1つの作品として仕上がっていて、三島由紀夫の持つ矜持や信念と言ったものが込められています。
技能書としても一つの作品としても非常に優れていると思いました。
後書き
モームははじめて読んだんですけれど、月と六ペンスはとても楽しめました、他の作品も読んでみたいですね。
流浪地球と老神介護はまだ読み終わってないので来月の間に読み終えたいです。
ライトノベルだと月とライカと三角の距離は限りないゼロは読み進めたいかなと、あとすかすかも積んでいる状態なのでそちらも読みたいですね。
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