NVICアナリストのつぶやき第12回 「価値の在り処~大食漢の気づき~」
皆さん、こんにちは。NVIC note編集チームです。
本日はNVICイチのグルメ(?)アナリスト、小松によるコラムをお送りします。
価値の在り処~大食漢の気づき~
突然の告白になるが、私は食べることが大好きだ。
「出没!アド街ック天国」、「寺門ジモンの取材拒否の店」などのテレビ番組に出てくるお店をチェックしては、時間をみつけて食べに行く、これが私にとっての至福の時間です。
そして、訪問した店を自分の中で勝手格付することがささやかな楽しみでもあります。将来的には高評価のお店のみを抽出した厳選リストを作成する予定です。評価方法としては、(ほぼ適当ながら)価格・味・サービス・店の雰囲気などを加味して、総合評価5点満点で採点しています。
最近はパン屋さんを開拓していて、週末にママチャリを一時間こいで買いにいくこともあります。
食パンは極めてシンプルな食べ物ですが、うどん粉などを混ぜることで今までにないモチモチ感がもたらされる製品特性を持ち、焼き方にも長年の創意工夫が求められる奥深い食べ物です。また、バケットはパン職人の技術が如実に反映され、店によって食感・風味などが相当に異なるので探索し甲斐があり、最近は特にハマっています。今では、お気に入りのパン屋が何軒かあり、近くに用があるたびに購入しています。
そんな私のお店リストなのですが、外出自粛期間のため暫時更新が止まってしまいました。これを機に久しぶりに過去数年分を見返してみると、ふとあることに気がつきました。
NVICに着任した2年ほど前から、採点が明らかに厳しくなっているのです。高評価の4~5点を付けることが減り、3点前後が多くなっています。
その原因を評価項目ごとに探ってみると、価格面の評価が従来よりも厳しくなっていることに気がつきました。
例えば、従来は単純に美味しければ高評価をつける傾向があったのですが、NVIC入社後は価格以上の満足度(≒価値)の有無について拘っているようです。メモをみると『素材はいいが、シェフの付加価値があるかは疑問』などと、大して味も分からないのに一流美食家気取りのコメントを残しています。
自分のことながら改めて評価の傾向とコメントを見返してみると、値段が少々張る店は良い素材を使っているので美味しいのは当たり前であり、支払っている価格以上の満足度(≒価値)がなければ、厳しい評価をつける方針にしているようです。
逆に、低価格でもサービスや雰囲気が良かった場合、はたまた店主との会話が弾み楽しいひとときを過ごせたときなどは、高評価をつける傾向にあるようです。(食べ歩き仲間からは、単に財布の紐が堅くなったのではないか?と鋭い指摘を受けましたが、私はこの考えに与しません)。
要は、従来よりもお店が提供する料理・サービスの価値を意識するようになったということです(と私は信じています)。
そんな私ですが、先日、誰もが知っている小売店に妻と立ち寄り、想像以上に女性客が多い事に驚きました。女性客の多くは、その小売店の衣服や雑貨を吟味しながら、買物を楽しんでいる様子です。ふと妻に女性が多い理由を尋ねたところ、『質が良くて、値段も手頃だし、何よりも友達と会うときに着ても平気なのよ』との回答でした。
真偽の程は私にはわかりませんが、『友人と会っても恥ずかしくない安心感』が購買行動に繋がっているという意見で、これは私にとっては新たな発見でした。
それまでどちらかというと衣服の機能的価値(品質など)に着目しがちで、商品を購入して得られる消費者の感情にまで思いを馳せることがありませんでした。消費者が商品を購入するときの心理的描写まで考えを巡らすこと、そして商品によってもたらされる情緒的価値を洞察することの大切さ、に気づかされた週末の昼下がりでした。
そのような視点を意識して持てば、生活のワンシーンに潜んでいる価値にも気づけるかもしれません。例えば、スターバックスは単にコーヒーを売っているのではなく、リラックス出来る『特別な空間』を価値として提供している、と言われます。はたまた、定番のスコッチウィスキーは単なるお酒ではなく、『長年受け継がれる伝統あるお酒を飲んでいる自分に酔う、ある種の優越感にも似た感情』を売っているのかもしれません。
単にコーヒーやお酒といったモノだけに囚われていては、本質的な価値を捉えられず、持続的に成長する企業の本質を見誤ってしまうことになりかねません。
財・サービスの表面的な部分に囚われず、『本質的な価値の在り処』を見出す。言うは易く行うは難し。何気ない生活のワンシーンにも人々が気づかない価値が潜んでいるかもしれません。そのような価値を視ることが出来る投資家でありたいと思った週末の昼下がりでした。
(担当:小松)