赤い実と夢
「トマトば、食べていかんね」
青々としたビニールハウスに、招かれる。
赤い実をちぎっては、かぶりつく。
汗がふきだす暑さのなか、山奥の道で出会ったおばあちゃん。
自転車で走ってきたわたしたちに、とても驚いていた。
阿蘇で自転車に乗ろうと、遠方から集まった仲間たち。
はじめましてでも、サドルにまたがれば、もう友だち。
彼らは、平地をびゅんびゅん走り、坂をぐんぐん登る。
わたしはついていけず、彼らを待たせてしまう。
雨に降られたり、泥に埋まったり、パンクしたり。
目の回るような、ジェットコースターみたいな、自転車旅。
無事に?旅を終えて家に帰ると、しばらく放心・・・。
着替えようと、背中のポケットに手をやる。
すると、赤い実が、ごろり。
「これも、持っていきなっせ」
赤い実は、冒険の果てに、つぶれていて。
自転車も、泥だらけで。
ああ、夢じゃなかった。
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