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輪島塗の魅力とは
それは昔私がまだ上京して間もない頃。ある時、実家での家族との食事で、父は「輪島塗は日本の最大のおもてなしだと思っている。だから最高の域にまでもっていく。」と話していました。
「いつもの熱い話だな」と何気なく話を聞きながら、父の蒔絵が描かれたお椀の蓋を開けたのですが、お椀の蓋の内側は夢のように輝く世界だったのです。お椀の蓋を開けた時に立ち昇る湯気にキラキラと輝く蒔絵で描かれた物語。金は水分をまとって輝き、雫になった水滴がさらに物語を輝かせる。それは蒸発するまでの1分間の美しさでした。
そのとき、私は輪島塗のファンになりました。
今のわたしが思う輪島塗の魅力とは…
① 輪島塗を使う豊かな時間
最高のおもてなしをするためには最高のもので。という気持ちに応えるように、見えないところまで手をかけ、妥協せずに仕上げられた輪島塗は、職人さんの魂をも込められています。そんな輪島塗を使っておもてなしや日々を彩れたら、その時間はとても心豊かに過ごせるのではないでしょうか。お料理の温かみがほんのりと手に感じられる輪島塗のお椀、口当たりが柔らかな輪島塗のお箸やスプーン。故に少し滑りやすいかもしれませんね。でもそのおかげで自然とゆっくりとしたお食事が出来るのです。どこまで計算されていたのかは分かりませんが、つくり手の優しい想いが使う人に届いているのだと思います。
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② 次世代へ受け継ぎたい輪島塗
輪島塗の品質は一目では分かりません。目に見えないところ、下地にあるからです。下地に輪島でしか取れない地の粉(珪藻土を焼いたもの)を混ぜ、布を巻き、何度も漆を塗り重ねることで輪島塗りの堅牢さが保たれています。だから5年後10年後感じるのです。使い続け、剥がれてきた漆を取ると綺麗なままの木地が残っていて、また補修して新品のように生まれ変わります。下地が強いからその木地が傷まないのだそうです。なので、お子様にお孫様にと次世代へ受け継がれます。輪島塗の堅牢さは、今でもずっと輪島塗ブランドが信頼されていることが何よりの証です。
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輪島塗は、職人が誇りを持ち、見えない部分に時間と手間をかけて作り上げています。その精神には、奥ゆかしさと日本の心を感じます。だから、それを天然素材のみで実現できるのは輪島市の土地ならではなのです。湿度が高く、漆に適した気候と、豊かな自然から得られるデザインのインスピレーションも、この工芸を支えています。輪島塗はその土地に根付き、未来へと進化し続けるでしょう。
ヌシヤ株式会社 浦出