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誕生日に思う
31歳の誕生日、理由は忘れたけれど、私は有給をとって会社を休んだ。
近所の、その時気に入っていた洒落た古民家カフェでランチを食べ、手帳に今年の目標のようなものを書き連ねた。
その後、やはり近所にある人気の和菓子やでいちご大福を買い、実家に寄って、夫が帰る前に自宅に帰った。
一年後、32歳の誕生日であった今日。
私はコーヒーショップでテイクアウトしてきた昼ごはんを、実家で母と一緒に流し込むようにして食べていた。
もうすぐ生後3ヶ月になる息子が、いつ起きるかとも知れなくて。
去年、誕生日のひとときを過ごした古民家カフェは、段差やそのたたずまいから、子連れには向かない。手土産を買った和菓子やは、小さすぎてベビーカーが入らない。有給をとって休んだ会社には、あと一年間は行かなくてもいいという手続きをとってある。
一年で、生活はおもしろいくらいガラリと変わる。
***
20代の頃は、年を取ることが怖くなんてなかった。
先輩たちは、新卒の自分なんかよりよっぽどイキイキとパワフルに働いていて、いつかそうなりたいと追いかけるように激務に身を投じて。
それがいつからか、年齢を重ねることが不安になってきた。
心が年齢に追い付かなくて。
「夢」や「目標」がよくわからなくなって。
選択肢が年々減っていくような気がして。
楽しかったけれど心身がついていけなくなってしまった場所から転職し、人間的な労働時間で相応のお給料をもらえるようになった。
それがメジャールートとは思わないけれど、結婚したいと思う人がいたので結婚し、ほしいと思って幸いにも子どもを授かった。
生活も心も豊かになっていくはずなのに、何かが私を焦らせる。
***
『HERS』2月号の特集が目を引いた。
「姉たちのことば」
HERSは、50代向けのライフスタイル、ファッション誌だ。つまり、HERS世代の「姉」とは、還暦を過ぎた年齢の女性たちとなる。
同年代のことばは、頑張ろうと思うと同時に、少し焦る。
年下世代のことばは、すごいなと思うと同時に、少し羨ましい。
飄々としていた先輩たちを思い出しながら考える。
いつだって私を励ましてくれるのは、先達たち――「姉」たちなのかもしれない。
***
来年の誕生日、私は一体何をしているだろう。
息子は歩いているだろうか。
カフェまではいかずとも、近場のチェーン店なら二人で行けるようになっているかもしれない。
「姉」の存在に励まされながら、私はまた年を重ねていく。
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