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市場の厨房の鮭のハラス焼(築地市場)

「肉! 肉! 肉!」

と、身体の中で肉☆愛がたぎりあふれていた時期がありました。
打ち上げは大体焼き肉でしたし、えらい人たちに「何が食べたい?」と聞かれれば「肉で(即答)!」と答えていたかわいい(金銭的にはかわいくない)時期が。
ビッグマックのバリューセットにさらにチーズバーガー追加!みたいなことをやってたのは中学生の時でしょうか。幼少期は常に背の順一番前のやせっぽちだったので、太るという懸念は抱いたことすらなかった。おそろしや成長期。今はガッツリ脂肪が腹回りにつくようになったんだからね! 摂取した栄養はその直後20センチ伸びた身長のほうに割り振られてくれたので助かりましたよ、いやマジで。

しかし、そんな肉人間も、ある日気づくのです。
肉を多量摂取した直後から次の日にかけての胃もたれに。そして、自分がこれまで大切な食材をないがしろにしてきたことに。

「魚……食べなきゃ…………!!」

***

そんなわけで魚。
職場から築地市場が近いくせに、場内にはあまり行かないのだが、この店はややイレギュラー。
場内と場外の中間地点にそんざいしているとでもいいうべきか。あまり混まないのでよく通う。

私はこちらにくるまで知らなかったんだが、場内って案外魚に関係ない店も多い。
そりゃ毎日毎日魚あつかってたら魚以外のものが食べたくなるよね!
ただ、そこは観光客仕様といいますか、一応ラーメン屋にも刺身が置いてあったりはする。お疲れさまです。

そしてこの店も。
レギュラー昼メニュー数点と、日替わり昼メニュー数点でランチタイムを回しているのだが、レギュラーメニューには、天丼や海鮮丼(ややお高いので恐らく観光客価格)に混じり、「カツカレー」「豚のしょうが焼き」がしれっと肩を並べている。
じゃあ日替わりはその日の新鮮海鮮か、と思いきや、「一口かつ」「つけめん」なんかが差し込まれてきているから、油断ならないのである。
日替わりの目玉は大体、その日のおすすめ食材で作られた海鮮丼(※ごはんは酢飯でない)だが、早めの時間帯にいかないと、魚系の日替わりメニューはほとんどなくなってしまう。

そしてたまーーに現れるのが、写真のような、刺身以外の調理法を使用した新鮮魚の魚料理だ。

メニューを見た瞬間、「あっ、ハラス焼!!」となった。ハラスって何だがイマイチ知らなかったが、これ絶対美味しい!!となった。(調べたら、マグロでいう大トロの部分らしい)

大変美味でした。
かりっとした皮と柔らかい身の間からあふれる脂。大根おろし、醤油、レモンでさっぱりと。

「私、魚食べてる!!」

と実感する。

***

魚を食べると頭が良くなる、という歌が流行った時代に、子どもやってましたので、漠然と「魚っていいい食べ物だなぁ」と思っていた。

しかし食卓に魚が載ったときと肉が載ったときのテンションには大きな落差があった。
特に、魚を見るのは好きなくせに、食べるのはイマイチの弟の落胆ぶりは激しく、大きな切り身はたいてい彼によってさりげなく私のもとへと寄せられた。

が、月日の流れは人の身体と考えを変える。

大戸屋なんぞに行くと、弟は必ず魚を注文するようになった。
「どうしたどうした?」
と尋ねると、「魚を食べなければならない」と神妙な顔つきで言う。

「煮魚は未だにあんまりだけど、焼き魚はいいよね」

どこで覚えたのか、きれいな箸使いで骨を避けながら、弟は言う。

齢26歳の弟。

魚食文化が薄まりつつあり嘆かわしいと呼ばれる私たちの世代だが、魚を食べると頭が良くなる、のおかげで、
「なんか知らんが、年をとったら魚を食べないとマズイ気がする」
という刷り込みが行われているのは間違いない。

***

余談。

件の店で、これまで一番感動したのはマグロのつみれ汁だったのだが、一度しか出会えていない。
マグロの水揚げ量現象のせいか。

市場が移動する前に、もう一度だけ出会いたいものである。

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砂東真実
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