サロンモデル
「サロンモデルになったんだよね。美容師なりたてのころにさ、カットモデル探すの大変だった経験あったから、後輩に頼まれて断れなくてさ」
ホテルの一室で美容師のだいちゃんが、つるつるになった陰部を見せてきたのだった。
彼が実験台になったのは美容室じゃなくてメンズ脱毛サロンだった。
「そうなんだ、なんか・・・気分じゃなくなったから帰るね」
わたしはそれを目の当たりにして、もうなにもする気が起きずに、脱ぎかけたシャツを着直し荷物を持ってホテルの出口に向かった。
知らない女にペニスを見せたことや、なんでわざわざ言い訳がましく説明してくることに怒りが沸いた。
「え、なんで?ちょっと、ゆか・・!」
彼の制止を振り切ってホテルの非常階段を駆け下りた。
途中で犬と女王様が散歩していたけど、気にせず駆け下りた。
とりあえずこの場から逃げ出して、大好きだっただいちゃんのことは忘れたかった。
わたしはただのセフレなのだから、彼が知らない女にペニスを見せたって怒る資格などない。と思うと涙が出そうだった。
彼は裸だったわけだし、すぐに追ってこれないことはわかっていたので、途中からゆっくりと階段をおりた。
だんだんと冷静になってきて、1日彼のためにあけていたことに気づく。
ひまになってしまった。
とりあえず、ホテルの近くの行きつけのバーへ行くことにした。
「あれ、ゆかちゃん、今日は早いじゃん」
バーは賑わっていたのだけど、知っている顔はいなかった。
「マスター、ゆたかは今日居ないの?」
「ああ、なんかね、サロンモデル?とかいうやつをしてからくるらしいよ」
なんということだろう…
わたしのお気に入りたちがサロンモデルに侵食されているようだ。
「サロンモデルってなに、はやってるの?田舎から出てきたばっかの学生じゃあるまいし…」
なんだかうんざりしながらひさびさに買った紙タバコに火をつけた。
「ははっ、たしかに。何飲む?」
マスターが灰皿を置きながら聞いてきた。
「んじゃ、レゲエパンチにしようかな」
「おっ、懐かしいね」
「うん。流行ったよね、昔」
1杯飲み干す頃にゆたかが出勤してきた。
「ゆかー!ひさびさだな」
「ゆたか、聞いたよ。ちんちんツルツルになった〜?」
「えっ、なんで知ってんの?」
もともと大きな目をさらにくりくりとさせてわたしを驚いた顔でみつめた。
カマかけただけなのに。
「ふふっ、女のカンだよ~」
いぶかしげな顔をしたゆたかは、着替えてくると言ってバックヤードへはけていった。
レゲエパンチを飲み干して、わたしはマスターにテキーラを1杯頼んだ。
そうするとマスターはテキーラのショットと、鈴とリボンが付いたロッカーの鍵を渡してくれる。
「ゆかちゃん、気を付けてね」
「任せてよ、マスター」
テキーラを飲み干し、秘密の扉の鍵をもってバーをでた。
武器庫へ行って、武器を持ち、サロンモデル荒らしの宇宙人を退治しにいくのだった。
「ひまが潰れたなあ。」
end