「違法の冷蔵庫」 #ショートショートnote杯
勝負の時がやってきた。
「ただいま〜」
「お、おかえり〜」
私はスマホを見ながら、必死に平然を装う。
「ご飯すぐ食べるよね?先お風呂入る?」
「お腹すいたー。ご飯にするー。」
僕は我が家の食事担当。用意していた夕飯のセットを始めた。
今日の妻はいつもに増して疲れているようだ。
そうだ、食後には、実家から届いたリンゴを剥いてあげよう。
炭水化物を気にする妻に配慮して、茶碗には小盛りにご飯をよそった。
最後に、ジャガイモと玉ねぎの味噌汁を温めて......
その時だった!
「今日は疲れたからビール飲んじゃおうかな〜」
味噌汁の鍋に気を取られている隙に、妻が冷蔵庫を開けた。
”しまった...!”
「あなたも飲む〜?......あれ?」
まずい。
妻は、今朝まで安寧が保たれていた冷蔵庫の異変にすぐに気がついた。
次の瞬間、恐ろしい形相で、鬼は言った。
「...あたしのプリン食べたでしょ。」
我が家の冷蔵庫の法を犯した僕は、その後厳しく裁かれた。