鳥屋野潟の娘の5400秒〜Season.5 ep10〜
想いの強い方にボールは転がる
すでに新緑とも言えるスタジアム。
もう初夏すら感じる。
ゴールデンウィークのど真ん中に開催となった第11節。
対広島戦。ホームに迎える。
理屈じゃなく
キャプテンがロッカールームで、そうみんなに声を掛けた。
この1ヶ月ちょっと、サポーターみんながモヤモヤしていた気持ちがまさにそれだと思う。もう何があったかは振り返らないけど、今日は理屈じゃなく負けられない。
その想いが乗ったのか、一段とスタジアムの声は響く。
すごい熱気。もちろんブーイングは一段と酷かったのだが。
試合が始まる。
スタメンがいつもと変化を迎え、こうビシッと収まるような感じで、よく進めていた。
決定的な変化が訪れたのは、前半33分。早川選手が行ったプレーに、イエローカードが提示される。そこから、さらにVARが介入。オンフィールドレビューまでに至ったが、判定が覆りレッドカードに。
思い出すのは
あれは多分、高校1年生の時の夏、選手権大会の予選だったと思う。
初めてマネージャーとしてきちんとした大会に挑んだ時。
3年生の先輩たちは、これが終われば引退。結構前半早いうちだったと思うのだが、何かの折に、キーパーの先輩がレッドカードをうけ退場、慌てて2年生が出場することに。
あのときの慌ててグローブを抱えピッチに入る先輩と、ベンチのやりきれない怒りと困惑、そんなことを思い出していた。
その時下した判断が正しかったと思いたいけれど
判断が分かれるとは思うが、今日のジャッジもなんだか全体を通して納得ができないものが多かったに思う。
フラストレーションが貯まる中、それでもなんとかなったのは、前列に可愛いお子様たちが一生懸命試合観戦をしていたからだ。前半はお昼寝タイムだったけど。
そんな光景に救われながら、審判団に抗議をするチームメイトとフィールドから離れる早川選手。
それでも諦めない。こんな感じの困難はたくさん乗り越えてきたではないか。選手を、そして自分たちを鼓舞するように、アイシテルニイガタのチャントが。これには鳥肌がたった。
その時何かが見えた気がして
数的不利の中前半は無失点に抑え、なんとか耐えてきた。
それでも70分。セットプレーで先制されてしまう。
仕方ない。それでもよく守っていた。
でも、どうしたって、ただで負けるわけにはいかないんだ。
相手もだんだん疲れと勝利が見えてきて、少しずつ綻んできた。
それでも90分はすぎる。あと5分。ここでなんとか。
試合終業間際94分。
ダニーロ選手が深く切り込んだところに、相手のクリアが転がり、高木選手が滑り込みながら打ったボールがゴールネットに突き刺さる。
歓喜のゴール裏。本当に地鳴りのような歓声でスタジアムは満たされた。
そして、間も無くゲーム終了。
倒れ込む選手たち。
10人でよく守り切って、その上、引き分けに持ち込んだ。
やっと笑顔が
これまであまり笑顔が見れなかった選手も、嬉しそうな表情で駆け寄る。
絶対に落とせないゲーム。これを自分たちの想いで引き分けまで持ち込んだ。間違いなく全員での勝利。
正直、この1週間、サッカーから離れようと違うことを考えたりしていた。
サポーター仲間も同じようなことを口にしていた。
それでもやっぱり、こういう瞬間があるから、この場所に集まりたくなる。
今度こそ、もっと上を目指して。
アイシテルニイガタ
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