この「七宝彫金模型」について説明します
先日別のところに写真を出したのですが、説明をするのを忘れていたので、改めて説明します。枠が横向きになってしまいましたが、実際は右側から縦に見ます。(10✕20センチくらい)
これはかれこれうん十年前に、大きな作品を作る時、試しに作った模型です。大きな作品ができた時に、いらなくなるといえばそうなんですが、大きな作品の方は、ちょっと私の思っていたものと出来上がりが違ってきたので、代わりにとっておきました。
これを趣味で作ったときは社会人だったのですが、短大で服飾工芸を学んだことがあり、そのとき七宝も一通りですが教えてもらいました。それから近くのカルチャーセンターで教えてくれるところがあったので、仕事のあとに夜通っていました。
そこの講師のそのまた先生から、コンクールに出してみよう、と誘っていただいたので、何人かの生徒と七宝作品でトライしました。あまり応募がなかったのか、運良く入賞して、次の年はハードルを上げて彫金七宝で出すことになりました。
これを作ったのはその時です。前の平面の作品は、大体50センチ四方だったかと記憶していますが(手元にないので憶測です)、次の作品はもう少し大きくなりました。(測ってなくて)
これも運良く入選したのですが、あまり大きくて重いので、実家のどこかで眠っています、たぶん。いつも思っていたのですが、こういう作品はいらなくなると、「不燃ゴミ」にしかならないのです。小さなアクセサリーは展示販売して手元には残っていないのに、不思議です。
作り方を以下に説明してみようと思います。もしかしたらローカルルールかもしれないのですが、私がそのとき教えてもらったやり方です。
まず、銅板に模様をマジックのようなもので書いて、下にマツヤニを熱して固定し、バーナーで銅板も熱して柔らかくして、そこをタガネで打っていきます。そして凹凸ができたら、これを金切りノコや専用のハサミで炉に入る大きさに切り分けます。
それから銅板を王水(硝酸+硫酸で液を作る)にくぐらせ、汚れを除去します。その時有害ガスが発生する(鼻の奥がツーンと痛い)ので注意します。それから裏に釉薬を塗りつけ、表にも一回目の釉薬をのせて電気炉で焼きつけます。
そのあと何回か色をのせて焼きますが、今回は窯変という技法で、釉薬の色が高温で変化するのを狙いました。焼くたびに銅版が少しずつ反り返るので、形をもとのとおりに維持するのが結構難しく、この模型も反り返っています。
これを私一人でできるはずもなく、肝心な部分は先生方にお手伝いしていただきました。始めてやることばかりでしたから、うまくいくかどうか全くわかりませんでした。
最初に「デザインを100枚くらい描いて」と言われたのですが、そんなにできませんでした。その次は「タガネ」を何本か金属の棒から磨きだして作りました。これは包丁を研ぐような作業で、好みの形に金属が凹むように先端も削りだすのです。かなり時間がかかりました。
そしていよいよ彫金作業に入りましたが、コインのように薄い厚みの中に、立体的な形を叩き出すのが理想でとても難しく感じました。マツヤニや銅版の温度が高すぎると、柔らかくなりすぎて、上からタガネで叩くと深く凹んでしまいます。そうなると釉薬をかけた時に、その溝に流れて溜まってしまい、色が変化してしまいます。
釉薬は鉱物の粉で、ガラスのようなツブツブですが、これを乳鉢ですって細かくします。水でよく洗い、それを糊と水で溶いて、筆で銅板にのせて覆っって乾かします。乾くと釉薬がかかっていないむき出しの銅版が光るので、そこもきちんとのせて、全体を覆います。そうしないと、そこが焦げてしまいます。
この模型は途中です。一番左の部分は透明な釉薬だけで焼いたので、次に空色とか、色をのせるつもりだったのでしょう。ちなみにテーマは一応、太陽の光を浴びたヨットの帆が風を孕んで波の上を走っているところです。全然そうは見えないのですが。。。
あれから幾度も引っ越しをしましたが、バラバラの金属片のまま、最後まで手元に残った私の青春の思い出の品を、今回出して眺めながら、いつか額装してやりたいな、と考えることでした。