5. 先は
二人はドアを開けて中に入った。セルクがドアのすぐ左にあらかじめ用意されていただろうぶら下がった懐中電灯を手に取り、その灯りを頼りに暗い道を歩いた。
空気は薄かったが、歩いて5分位で前に白い淵の黒い長方形の光が見えた。少年は最初、その光景にどこか違う世界に行く扉なのではないかとふと思ったが、すぐにそれは鉄の扉の隙間から出ている外の光だと気付いた。
セルクは少年に「ちょっと肩離すね。」と言って、鉄の扉のノブを押した。ギィッと音がした。
扉の向こうは薄暗い小さな部屋だった。コンクリートで出来た壁の部屋は空っぽで何もなかったが、2人が出てきた扉の向かい側にもう一つ扉があった。そこから外からの太陽の光が見える。
セルクが言う。
「ここから外に出るよ。あ、でもその格好じゃ目立つな…。しょうがないから物陰に隠れながら僕の家に行くしかないな!」
適当なアイデアだったが、セルクは直ぐに少年の肩を担いで、扉を開けた。
外の光が少年の顔を照らした。
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