夢詠4
〈四季のなかの時〉
透明なシートの向かうの売り子かな(2020.9)
…
アクリルの板が隔つ客と客
(2020.9)
…
店員のおばけかぼちゃの髪飾り
…
けたたましき百舌鳥も何処か午後の陽や
…
からころと落ち葉転がる風の路地
…
黄落に踊るやうなり竹箒
…
冬陽射す野焼きのけむりたなびけり
…
タイヤ替へ鉛の雲や師走入り
…
店員のサンタ帽子の華やぎや
…
車内にて人喋りをり落ち着かず
(2020.12)
…
曇りたる車窓開ければ人の視線
(2020.12)
…
バラックにビニールハウスに冬陽降る
…
赤本が散らばる部屋の息子かな
…
ジャニーズのグッズに囲まれ妻憩ふ
…
しぐるるや娘のレポート添削す
…
枯葉踏み行く腰痛は悪化せり
…
猫遊ぶだけのBS見てゐたり
…
メシ代はあるかと出かける息子に言ふ
〈時のなかの影〉
校庭の
花も鎮守も
蟲喰ひぬ
…
老いは杖
嬰児の声は
空になし
…
あまりにも
淋しき夢に
一日淋し
…
夢なき眠り
絶望死してゐし
類比
…
喩は成らず
眠りは暗き
沼なりき
…
襤褸布の
如き継起の
酷きさま
…
冬夜空
星座描けず
時崩る
…
橋の向かう
彼岸は闇に
沈みをり
…
凍てし時
まざまざとあり
寒波来る
…
思考の火
絶え灰燼の
道寒し
…
冬の陽の
穏やかなれど
凍てし時
…
〈群衆の人〉なき
昼の
ただの人混み
…
人混みに
〈不安〉のオスロ
何処なるか
…
阻まれし
時は根もなく
狂ひ咲く
…
無底の夜が
時を
強迫化する
…
時阻む
鎧は重し
年の暮れ
…
あまりにも
難し…神の
宿題は
〈影のなかの時〉
ひとけなき
路地を行かんと
夢の中
…
我ひとり
蟲の送りを
夢にせん
…
暗き駅
下りて暗き
橋渡る
…
熱烈に
少年夢想す
ソーネチカ…
…
時沸けば
夢に賑はふ
センナヤ広場
…
郷愁は
カフカのプラハの
石畳
…
森の禁
破り皇子は
斎宮へ
…
水底の
影なる少年
呼び覚ます
…
陽の色の
柚子を掴みぬ
無底の夜
…
呼ぶ声は
荻の穂波の
隠れ里
〈時のなかの季節〉
山茶花と
目合ひしかと…
幻か
…
冬ざれの
草木塔に
祈り燃ゆ
…
汝が風は
我が夢野にて
土着せり
…
界面の
薄膜…時の
誕生
…
穏やかに
継起呼吸す
冬夜の灯
…
時介し
物象たちが
吸着す
…
時展けば
汝が髪の
美しき
…
雑踏に
シフォンスカート
翻る
…
暁けの黄金の
悪夢の
美しさ
…
低き陽や
帽子目深に
街を往く
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