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逆算と,かけ算順序は整合しない

 算数の指導で「かけ算には順序がある」という主張(以下「かけ算順序」と表記)があります。この記事で伝えたいことは次の通りです。

「かけ算順序」の考え方では,逆算(に入る数を求める計算)のときに論理的整合性が失われますよ。だから,最悪でも逆算を学習するまでには,「かけ算順序」は解除されなければ指導上の悪影響が予想できますよ。

 「かけ算順序」では,「1 本 10 円(税込み)のうまい棒を 3 本買うと,いくらになりますか?」という問題では,10×3=30 のみを正解とし,3×10=30 は順序が逆なので✕とします。「え,かけ算には交換法則があるんじゃないの?」と思われるかもしれませんが,10×3 と 3×10 は表す場面・意味が異なるので同一視できない,というのが彼らの主張です。
 では,次の画像を見てください。Twitter から切り出しました。

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「式には意味がある」というのが「かけ算順序」の主張なので,それに沿って生徒は次のように意味づけをしたとしましょう。
 ① ▢個のおはじきを 9 人で分けたら 7 個ずつ配れた。
 ② ▢個のおはじきを 9 個ずつ配ったら 7 人に配れた。
これを,「かけ算順序」に沿って立式すると,
 ① ▢個=7×9  ② ▢個=9×7
となります。この 2 つはどちらも,「かけ算順序」の下で整合するので,②だけを✕にする理由はないことがわかります。つまり,逆算と,かけ算順序は整合しません。
 一応,予想できる反論をつぶしておきます。「もしかすると,生徒は出てきた 9 と 7 を頭を使わずに適当にかけているだけかもしれない」という方が結構いるんですが,それは「もしかすると,生徒はちゃんとした筋道で考えているかもしれない」という可能性を否定するものではないですよね。生徒の認知がバグっているかどうかを判断するのは,式からは無理です。「多くのパターンの問題を解かせれば,認知のバグはようやく洗い出せる」「授業での発問と生徒の解答で,認知のバグはようやく洗い出せる」のであって,その高度な作業をカラーテストごときに委ねることが誤りだと思いますよ。

 このように,ちゃんとした道筋で物事を考えている生徒が,教師から不当に「それは誤っている」とされれば,生徒の認知構造がバグり,自分の力で考えることができなくなると予想されます(これは経験則ですが)。「かけ算順序」を仕込んだところで,早々に矛盾してしまうんだから,仕込むのをやめたらいいと思うんですけどね。

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