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社会保険料と人件費:医療従事者の残業
こんにちは、Sonnyです。
今回は、社会保険料と人件費の関係ついて残業代という文脈から考えていきます。
社会保険料が高すぎて現役世代が搾取されていると論調がネットを中心に広まっています。多くの若い人たちは、自分の給料から社会保険料は引かれただけで、医療にアクセルする頻度も少ないし、「どうせ高齢者の医療に使われているんでしょ」って思っているかと思います。
それはその通りなんですが、医療費の最終的な行き先は、医療従事者の人件費です。人件費の中でも考え方の分かれる残業代について、中でも医療従事者の残業代について自分の考え方をまとめておきます。
ぼくは、理学療法士として病院勤務しているのですが、部署内で残業代の話になります。ぼくの部署では、残業したら自らどのくらいの時間を残業したのかを申告し、翌月の給料に残業代として上乗せされた形で支払われます。
ぼくは、医療従事者の残業代について思うことがあります。それは、医療従事者の残業代ほど病院経営を圧迫するものはないだろうということです。
今回、記載するものは、自分自身の考え方をアウトプットするのであって全員が考えるべきものであるとは思っていません。しかし、医療従事者としては頭の片隅に置いていくべき考えだとは思っています。
それでは、本題です。
♦︎医療従事者(リハビリ)が作ることができる売り上げには限度がある
今回は、自分自身が従事しているリハビリの業界についての話になります。もし、これからリハビリ業界を目指すことを考えている方々は、かなり現実問題を目にすることになると思います。先に伝えておくと、リハビリの仕事はやりがい的に言えばかなり大きいと自分は考えています。しかし、いわゆるやりがい搾取になったり、制度が故に自己成長を怠るとったことになりかねないので、このような現実問題を知っておくことは重要だと考えています。
医療は基本的に医療行為に点数が割り当てられており、(基本的に)1点=10円として計算します。リハビリは20分が1単位と定められており、1単位が170-180点くらいです。2年に1回の診療報酬改定で前後することになります。この点数は、1日、そして1週間に算定することができる点数が国から上限が決められているのです。この辺は別記事でも記載しました。
リハビリの業界は、売り上げの上限は決まっているので、病院から提示される月給は大きく上げたりすることはできません。病院間で差はあるのですが、これは病院経営としての努力であり、売り上げに紐づいているわけではないんですね。
今年、リハビリ部門では世間の賃上げの機運を拾って診療報酬の引き上げが行われましたが、ぼく自身の給料ベースでみると、2%に届くかなぁくらいのもので、インフレにすら勝つことができていません。
次に売り上げですが、患者さんは医療費を全額負担するわけではないので、9-7割は健康保険料や市町村国保、後期高齢者医療制度の中のお金から病院に支払われることになります。この支払われたお金と患者さんが自己負担したお金の合計が病院としての売り上げになり、ここから人件費が根出される。冒頭でもお話しした通り、皆さんの健康保険料からぼくたちの給料が支払われているんですね。
♦︎残業代が発生すればするほど病院としては損失になる
そんなシステムで動いているので、なかなか昇給もしないし、頑張ったからといって給料が上げるわけでもありません。それぞれ自己研鑽的に研修を受たり研究したり、論文を読んで、アウトプットの質が上がったとしても給料が大きく上がるわけではありません。自分がいる職場や土俵の中で収入を上げるには、残業代に頼らざる得なくなってきます。
だからこそ、ぼく自身は別の収入源も確保する必要があると考えていますが、多くの人はなるべく残業代を取りたいとなるでしょう。
自分も社会人になってしばらくのうちは「もらえるものは」と思っていましたが、今ではすっかり考え方が変わりました。今では、なるべく残業せず残業代を取らないか、と考えるようになったのです。
それは、これまでお話ししてきたものを考えはわかることですが、ぼくたちリハビリは1単位20分という時間、1単位の診療報酬の点数、そして1日および1週間に算定できる点数の上限が決めれているので、多少の前後はあれどほぼ売り上げの上限が決められています。だから、リハビリスタッフが残業代を算定すればするほど、病院の利益を食い潰すことになるんです。
今の世の中、医療制度を大きく変えたり、診療報酬を大きく引き上げたりなどすることはかなり困難です。そんなことはできないし、やっていいはずはありません。では、医療費が減ればその浮いた分が医療従事者に分配できるとも思いますが、高齢社会がここまで極まっている中で医療の需要は減らないし、高齢者の自己負担を引き上げて、なんともないけど暇だから病院にくるみたいな層の通院を食い止めることは今の政府にはできない。
だからといって、必要のない残業を重ねて病院の利益を食い潰してまで残業代を申請するものも違うよなと思うようになりました。
♦︎社会保障という枠組みの中で仕事をすることに疑問を持つ
病院でのリハビリ職としてに勤務は確かにやりがいはあります。痛みがあったり困っている人に対して触接的に介入することで、何らからの形で貢献することができる。ただ、今の社会保障の枠組みの中で仕事をしていることに、いろいろと疑問が湧いてくるようになりました。
一つは、これまで述べてきたお金の問題。構造的に自分の病院から収入が大きく上がることはないこと、上げようとするには残業代に頼らざるを得ないが、それでは病院を利益を食い潰すだけになることなどはすでに述べました。
次に、集客的視点の欠落です。今現在は、医療にアクセスする頻度が高い高齢者ほど自己負担が安く病院に行きやすいので、仮に病院を企業と見立てた場合は、集客すること自体には困らないことが多い。だから、自分が何の努力をしなくても、お客さんから足を運んでくれるんですね。病院でリハビリする上では一番最初に医師から処方を出してもらう必要がありますが、一度題してもらえれば150日間は継続することができるので、患者さん自身が来たいという希望があればその時点で次の仕事につながるわけです。
また、集客的視点が欠如することで、自分のスキルアップに対する考え方も変わると思っています。ほとんどの場合、患者さんは病院に信頼があるから、その病院を選んで来院するわけなので、リハビリ自体を信頼してくるわけではありません。通っているうちに信頼しれもらえることはあるにしても、特に初診の場合なんかは、久しぶりの怪我だったりしても病院もしくは医師の信頼を元に病院にきます。
受け身の集客になってしまうと、自分のスキルに尖ったものがなくても次々と仕事が入るので、目の前の仕事をこなしていくことに優先順位がおかれてしまい、本当の意味でのスキルアップすることを後回しにあってしまうことを危惧しています。言葉を選ばすにいうとマンネリ化みたいなことでしょうか(患者さんへの介入自体がマンネリするのではなく、自分の介入方法が進化しないという意味です)。
そんなことを危惧していたので、自分なりの武器を作るべきと考え、自分の信念のもとでスキルアップを図ってきました。いろいろ著名な方の勉強会にもセミナーにも参加しました。失敗することもありますが、努力を重ねて徐々に変化してた実感もある中で、次の疑問が現れます。それが、社会資本についてです。
病院に所属して仕事を頑張り、自分なりの武器を磨いていき結果が出たとします。そこで患者さんが持つものは、「病院に対する信頼」であり、リハビリスタッフ個人への信頼ではありません。つまり、病院の中で仕事をしている限り、病院の社会資本構築の貢献をすることができますが、自分自身の社会資本の積み上げにはならないんですね。
ここに気がついてから(一般的には知られた事実なのかもしれませんが、病院という一般の企業とは違う世界では気づいている人は多くはないと思っています)、自分の身動きの仕方を変える必要があると感じています。
いろいろ動いて頑張るのみです。
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今回はここまで。
最後まで読んでいただきありがとうございました。