犯罪白書から考える、今度の子育ての在り方〜我が子が犯罪に手を染めないためには何が必要なのか?〜
我が子が犯罪を犯さないようにするためにはどうしたらいいのだろう?
親であればみんな思うことですが、実際にどのように子育てをしたらいいのかは正解のない難しい問題です。
ぼく自身も一人の親として、将来の我が子には真っ当な道を進んでほしいと思います。少し大袈裟に思うかもしれませんが、子どもを幸せな未来を願うのであれば考えないわけにはいかないわけです。
そんな問題に対してある一つの洞察を得る機会があったので、整理の意味もかねて言語していきます。きっかけは、木下さんのvoicyの放送👇
こちらの放送では、犯罪白書を取り上げて、過去の犯罪の認知件数の変化を世の中の動向を照らし合わせて今後の日本がどうなっていくのかがまとめられています。
今回、自分自身でも犯罪白書、特に少年犯罪のところを読んでみて自分の子育てに活かせるなと思ったポイントがあるので、まとめていきます。
♦︎社会が混沌する今だからこそ、改めて犯罪について考え直す意義がある
まずは、以下のグラフをご覧ください。
これは、日本における犯罪認知件数の変化を示すグラフです。このグラフからわかるように、統計が開始された昭和21年から昭和後半にかけては、犯罪認知件数はほぼ横ばいで推移していました。しかし、平成に入る手前から増加傾向となり、平成8年には戦後最大を更新し、平成14年にピークを迎えます。
この時期は、日本の高度経済成長の終わりとバブル崩壊の時期が重なっています。経済の低迷や失業者の増加など、不安定な社会情勢が背景にあったと考えられます。
その後、平成15年以降は犯罪件数が毎年減少の一途を辿り始めます。この背景には、検挙率の向上に加え、防犯意識の高まりや防犯システムの普及が要因として挙げられるでしょう。
では、これからの日本では犯罪がどのように推移していくのでしょうか?ここでは、以下の2つの視点から考えてみます。
社会情勢
犯罪の検挙率
現在の日本は、物価が高騰しているにもかかわらず、賃金が上昇しない、いわゆる「実質賃金の低下」が問題となっています。また、政治の混迷や先行きの見えない経済状況が重なり、国全体が不安定な状態にあります。
このような社会情勢の中では、人々の生活が困窮し、全体的に犯罪が増加する可能性が考えられます。経済的な困難が犯罪の温床になることは、過去のデータからも示されています。
さらに懸念されるのが、検挙率の低下です。特に平成に入ってからは、検挙率の低下と犯罪件数の増加が一定の相関を示しているとされています。
最近では、投資が一般層にまで浸透し、ネット上での投資詐欺も増加しています。このような犯罪は末端の実行犯が逮捕されても、主犯格にまで捜査が及ぶケースは少なく、組織的に継続されるリスクがあります。そのため、こうした新しい形態の犯罪が今後さらに増える可能性は否定できません。
以上のように、社会情勢の悪化や検挙率の低下、新しい犯罪の形態が重なることで、今後の日本では再び犯罪が増加する可能性があります。これからの時代において、犯罪に対する理解と対策を強化していくことが、社会全体の安定にとって重要な課題となるでしょう。
♦︎少年鑑別所に入所した子どもたちの78%は家庭にむしろ満足している
これからの日本を生きていく我が子には、誰しも犯罪者になってほしくないし、犯罪に巻き込まれてほしくないと願うものです。親として何ができるかを考える方も多いのではないでしょうか。
ぼく自身も、自分の子どもに対して「しっかり向き合いさえすれば、犯罪に巻き込まれることなく、真っ当に楽しい人生を送れるだろう」と思っていました。
しかし、その考えを改める必要があるかもしれないと感じた瞬間があります。そのきっかけになったのが、以下のグラフです。
このグラフは、少年鑑別所に入所した子どもたちが自身の家庭環境に対してどの程度満足しているかを調査したものです。平成2年の時点では、満足と回答したのが60%、不満と回答したのが16.7%でした。しかし、令和3年になると、満足は78.0%に増加し、不満は9.9%にまで減少しています。
この結果は、個人的に非常に意外でした。というのも、ぼくは少年犯罪の背景には家庭環境の問題が大きく関わっていると考えていました。正直、このグラフを見るまでは、その考えが思い込みであることにすら気がついていなかったのです。家庭環境にある程度満足していれば、犯罪に手を染めることは防げるだろうと思っていたからです。
しかし、このデータを見ると、必ずしも家庭環境が直接の要因とは限らないことがわかります。ここで、子育ての方針について一つのヒントが見えたような気がしましたが、その点については後ほど触れます。
もう一つ、抑えておきたいのが「お金」の問題です。確かに、経済的困窮が原因で犯罪に手を染めるケースは少なくありません。書籍『なぜ罪に問われた人を支援するのか?』の著者であり、認定NPO法人「育て上げネット」の理事を務める工藤さんは、罪に問われた人に仕事やスキルの支援を行うことで再犯を予防する活動をしています。こうした取り組みからもわかるように、経済的な問題が犯罪に関与していることは疑いようがありません。
しかし、お金だけが全てではないことを示唆するデータもあります。以下のグラフをご覧ください。
最上段の項目に「家庭に収入が少ない」と答えた子どもの割合をピックアップしています。このデータを見ると、平成2年から平成23年にかけて、家庭の収入が少ないことに不満を持つ子どもは倍増し、47.0%にまで達しました。しかし、令和3年にはその割合が一気に減少し、11.1%となっています。
このデータからもわかるように、貧困が犯罪に結びつくケースがある一方で、他の要因にも目を向ける必要があるのです。家庭の経済的な問題を改善するだけでは、すべての子どもが犯罪から遠ざかるわけではありません。子育てにおいては、経済的支援に加え、子どもが社会とのつながりを持ち、健全な価値観を形成するための環境を整えることが重要です。
♦︎物理的には満たされやすい今の時代だからこそ、「問い」を立てられる教育が求められる
これまでの考察を踏まえ、親として何ができるのかを考えてみたいと思います。子どもが犯罪に手を染めるきっかけを、家庭環境やお金の問題以外の視点から考えると、主に外部環境が大きな要因になるでしょう。
子どもたちにとっての外部環境は、基本的に学校や友人関係です。塾やクラブ活動もその一部に含まれます。こうしたコミュニティで、いわゆる「悪い友達」と出会ったとき、最初は興味本位であったとしても、徐々に悪い方向に流されていき、気づいたときには戻れなくなるケースも考えられます。
しかし、周囲の環境すべてを親がコントロールすることは不可能です。引越しによって学校を変えたり、クラブ活動をやめさせたりすることはできるかもしれませんが、子どもが所属する全てのコミュニティで善良な人間だけと関わるのは現実的ではありません。
大人であれば、自分の経済力をもとに、働く場所や付き合う人をある程度選ぶことができますが、子どもにはそれができません。だからこそ、親がサポートできる部分を考える必要があります。
今の時代、物理的に満たされないことはほとんどありません。物資が不足することはなく、ネットやスマホが小学生にまで普及し、人とつながることも簡単になりました。情報の流通やコミュニケーションが便利になり、多くのメリットを享受しています。
しかし、この利便性にはデメリットもあります。簡単に他人の意見に触れられるようになったことで、自分自身の信念や価値観を持たないと他人の意見に振り回されたり、承認欲求に囚われたりしやすいのです。さらに、適切なリアルな人間関係を築くことが難しくなっているように思います。
ネットやスマホの普及は止めることも止める必要もありません。むしろ今後は、行政サービスのデジタル化などを通じて、スマホが生活の起点になることが不可欠でしょう。そんな時代だからこそ、しっかりと「問い」を立てられる力が必要だと感じます。
子どもが自分自身に問いかけられるようになることは、社会の変化に適応し、他人に流されず自分らしく生きるための基盤です。たとえば、
自分は何に興味があるのか?
何をしていると楽しいと感じるのか?
問題に直面したとき、どのように対処すればよいのか?
こうした問いを自分で立てて答えを探すことができる子どもは、困難な状況に直面しても柔軟に対応できます。
また、悪い友達や周囲からの誘いに対しても、ただ感情的に断るのではなく、「自分にとってこれは本当に必要か?」と冷静に判断できるようになります。誘いを断ると仲間外れにされるのではないかという恐れも、視野が広がっていれば軽減されるでしょう。なぜなら、自分の世界が広ければ、特定のコミュニティに依存する必要がなくなるからです。
家庭でできる具体的なサポートの一つが、子どもに多様な経験をさせることです。たとえば:
さまざまな人と出会わせる
旅行や異なる文化に触れる機会を増やす
こうした経験を通じて子どもの視野が広がれば、悪い誘いを受けても「他にも楽しいことがある」「ここに執着する必要はない」と体感的に理解できるようになります。
もちろん、親として知識を教えることも重要です。しかし、それ以上に「問い」を立てられる力を育てることや、子どもの世界を広げることが、未来の彼らにとって大きな財産になります。
時代がどれだけ変わっても、自分で考え、判断し、行動する力を身につけた子どもは、どんな環境においても自分を見失わずに生きていけるでしょうか。