2024年春に発行された、みの著『にほんのうた 音曲と楽器と芸能にまつわる邦楽通史』を読んだところ、2020年発行の細川周平著『近代日本の音楽百年——黒船から終戦まで』(全4巻)と似た記述が多く見られました。
ここでは、書籍『にほんのうた 音曲と楽器と芸能にまつわる邦楽通史』のあり方に問題がないか、その判断材料となる情報をまとめておきたいと思います。
2024年春に発行された、みの著『にほんのうた 音曲と楽器と芸能にまつわる邦楽通史』(2024、KADOKAWA)を読みました(以下、『邦楽通史』と省略)。非常に濃密な内容の書籍であり、個人的には、現在の「邦楽」の起点となる明治時代の記述に興味を惹かれました。
この分野を深く知りたいと感じ、本書前書きでも紹介されている、細川周平著『近代日本の音楽百年——黒船から終戦まで 第1巻 洋楽の衝撃』(2020年、岩波書店)を手に取りました(以下、『近代日本の音楽百年 第1巻』などと省略)。
読み始めたところ、冒頭1ページ目でいきなり衝撃を受けました。文章に既視感を覚えたのです。みの著『邦楽通史』を確認すると、似た記述が確認されました。以下に2書籍の文章を並べます。
●みの著『邦楽通史』p.78-79
○細川周平著『近代日本の音楽百年 第1巻』p.1
私はこれを見て、みの著『邦楽通史』は、細川周平著『近代日本の音楽百年』の文章を"流用"しているのではないか、という疑念をもちました。
書かれた情報の一つ一つについて、参考文献を示すほど専門的な事項かどうかについては一般読者の私には判断がつきません。しかし、「ブラスバンドの編成」→「ペリー側の記録」→「日本側の記録」といった文章の構成には、著者によって個性が出るように思います。そこが一致していることから、"流用"しているのではないか、と感じました。
そして、同様の箇所が他にも多数見つかりました。具体的箇所は、後ほど列挙したいと思いますが、みの著『邦楽通史』の記述については、次の点が着目されます。
『近代日本の音楽百年』と完全同一の文章は無く、細かく言い回しが異なっている。(同義語への言い換え、語順の入れ替えなど)
『近代日本の音楽百年』と記述が似ている文章があっても出典の明示がない。(巻末の参考文献リストに『近代日本の音楽百年』の書名はあるが、本文との紐付けは無い)
『近代日本の音楽百年』と類似した箇所につき、細かな書き換えを行ったことで原典の趣旨からずれた内容になっていると思われる箇所がある。(ただし、ここでは具体的箇所の指摘はしない)
完全同一の文章について出典明示がなければ、「引用」とはみなされず、剽窃・盗用と判断されるかと思います。しかし、本書では完全同一ではなく細かく言い回しが異なっています。そのため、私には明確な判断が下せずにいます。
また、『近代日本の音楽百年』の著者と出版社である、細川周平氏、岩波書店との関係についても気になります。文章の使用に関して、細川周平氏、岩波書店の了承を得ていれば問題ありませんが、通例、そのようなことはないと思われます。
書籍『邦楽通史』のあり方に問題がないか、その判断材料となる情報(類似点の比較)を以下にまとめておきたいと思います。ご参考になりましたら幸いです。
(以下、比較資料)
みの著『邦楽通史』→細川周平著『近代日本の音楽百年』の順で、文章を並べます(類似点の分かりやすい29箇所)。
みの著『邦楽通史』の確認範囲は、「第3章 レコード歌謡——大正時代」まで(p.201まで)です。
引用文中で私が省略した箇所は【省略】と記すこととします。
●みの著『邦楽通史』p.44-45
○細川周平著『近代日本の音楽百年 第1巻』p.8
●みの著『邦楽通史』p.44-45
○細川周平著『近代日本の音楽百年 第1巻』p.9
●みの著『邦楽通史』p.89
○細川周平著『近代日本の音楽百年 第1巻』p.183
●みの著『邦楽通史』p.90
○細川周平著『近代日本の音楽百年 第1巻』p.189-190
●みの著『邦楽通史』p.92
○細川周平著『近代日本の音楽百年 第1巻』p.186
●みの著『邦楽通史』p.99
○細川周平著『近代日本の音楽百年 第1巻』p.202
●みの著『邦楽通史』p.106
○細川周平著『近代日本の音楽百年 第1巻』p.53
●みの著『邦楽通史』p.107
○細川周平著『近代日本の音楽百年 第1巻』p.51
●みの著『邦楽通史』p.108
○細川周平著『近代日本の音楽百年 第1巻』p.61
●みの著『邦楽通史』p.109
○細川周平著『近代日本の音楽百年 第1巻』p.64
●みの著『邦楽通史』p.109
○細川周平著『近代日本の音楽百年 第1巻』p.55
●みの著『邦楽通史』p.137
○細川周平著『近代日本の音楽百年 第1巻』p.294
●みの著『邦楽通史』p.138
○細川周平著『近代日本の音楽百年 第1巻』p.289-290
●みの著『邦楽通史』p.146
○細川周平著『近代日本の音楽百年 第1巻』p.205
●みの著『邦楽通史』p.158
○細川周平著『近代日本の音楽百年 第1巻』p.98
●みの著『邦楽通史』p.158
○細川周平著『近代日本の音楽百年 第1巻』p.98
●みの著『邦楽通史』p.158-159
○細川周平著『近代日本の音楽百年 第1巻』p.119
●みの著『邦楽通史』p.159
○細川周平著『近代日本の音楽百年 第1巻』p.119
●みの著『邦楽通史』p.160
○細川周平著『近代日本の音楽百年 第1巻』p.72
●みの著『邦楽通史』p.161
○細川周平著『近代日本の音楽百年 第1巻』p.146
●みの著『邦楽通史』p.161
○細川周平著『近代日本の音楽百年 第1巻』p.147
●みの著『邦楽通史』p.163
○細川周平著『近代日本の音楽百年 第1巻』p.157
●みの著『邦楽通史』p.163
○細川周平著『近代日本の音楽百年 第1巻』p.161
●みの著『邦楽通史』p.163
○細川周平著『近代日本の音楽百年 第1巻』p.171
●みの著『邦楽通史』p.197
○細川周平著『近代日本の音楽百年 第2巻』p.73
●みの著『邦楽通史』p.197
○細川周平著『近代日本の音楽百年 第2巻』p.74
●みの著『邦楽通史』p.197-198
○細川周平著『近代日本の音楽百年 第2巻』p.76
●みの著『邦楽通史』p.198
○細川周平著『近代日本の音楽百年 第2巻』p.81
●みの著『邦楽通史』p.198
○細川周平著『近代日本の音楽百年 第2巻』p.101
以上