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ずっとUNDER CONSTRUCTION

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人は生きるために忘れる、と言うけれど

18歳で上京した時、私は“完全無欠の幸福”な人生を送りたいと思っていた。 それは簡単に言えば、FacebookやInstagramで幸福そうに見える暮らし。見栄えの良い大学を出て、見栄えの良い職業に就き、自分より見栄えの良い大学を出て見栄えの良い職業の男性と結婚し、子宝に恵まれ、友だちも沢山いて……といったような。 コンプレックスの塊だったので、あらゆることで勝ちたいと思っていたし、若かったのでそれが出来ると思っていた。 しかし東京で暮らすことになると、あっという間にそのよ

    • ブルーカラーの娘

      私の父は建設会社で働いている。親族の男たちのほとんどは建設建築関係の仕事をしている。 と言うのも私の祖父が建設会社の創業社長だからだ。そうして長男である父は産まれた時から人生が決められていた。 特に興味のない東京に行かされ、本当に学びたかったことを諦めて大学で土木を学び、結婚したかった恋人は開業医の一人娘だったので婿養子になることを拒否して別れ、大学を卒業すると地元に連れ戻され、地主の娘である母とお見合い結婚した。 父は下積み経験がほとんどないまま役員になったので、ひど

      • 人間失格

        消えてなくなりたいという気持ちで、心が、頭が、いっぱいになった時に太宰の真似事しか言えない自分を恥じるけれど、結局のところ、これに尽きる。 女に生まれて、すみません。 地方に生まれて、すみません。 レールを外れてしまったのに、生きていてすみません。 「死にたい」なんて言っていたくせに、まだ生きていてすみません。 もう生きる価値なんて無いと思っているくせに、誰かを傷つけたりして、すみません。 私の地元は飛行機なら2時間。電波に乗ってしまえばリアルタイム。太陽が昇るの

        • 雨降りじゃない生活

          夜が深まり黒に支配される、完全な黒なんてどこにもないけれど。 蝉の鳴き声、そういえば今日は聞こえたかなあと、痛む頭でぼんやり考えるけれど、よく思い出すことが出来ない。蜻蛉が飛んでいるのをベランダから眺めたことは覚えている。 日中はまだじっとりと汗ばむけれど、朝晩は涼しい。日が短くなってきたお陰で、最近は比較的よく眠れている。 今朝は、なんとなく水やりを続けていた葉っぱに花が咲いていることに気づき、嬉しくなって踊りそうになった。ひょっとしたら冬に枯らしてしまった千日紅かも

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        人は生きるために忘れる、と言うけれど

          A whole new world

          もうすぐ夏が終わる。たぶん。 もう銀杏並木を想ってる。次の冬も東京で雪が積もるだろうか。 いくつもの夜を眠れずに過ごして鎮めた気持ちを、再び解放しなくてはならなくなったり、もう叶わないだろうと思っていた願いがあっさり叶ったりした。 少しばかり楽になったり、その一方で、新しい不安にも押しつぶされそうだ。 結局いつも、ないものねだりで、私は一生満たされないのかもしれないと思うとゾッとする。 私はもう大人なのだ、そう、十分に大人なのだと言い聞かせて、そうして、もう"女の子"

          A whole new world

          自分の踊り方を捜している

          あっけなく夏が終わろうとしている。焼けた足にだけ、夏を感じる。 まだ蝉は鳴いているけれど、もう秋の訪れ。そうして冬に想いを馳せる。 最近は毎日おおむね楽しいと思い込んで生きているし、実際に私は幸せな部類の人間だと思う。だからこそ苦しいことだって沢山あるのだ。けれど、こんな人間の不幸気取りなんて他人の気に障るだけだから、言葉に出来ない。言葉にするとダメになっちゃいそうで、出来ない。 始まったことには必ず終わりが来ると感じた夕暮れ。 私は近い将来、経験せずに済んだかもしれない

          自分の踊り方を捜している

          確定した公共料金はただの生活の記録で

          深夜に作業する時は、なんとなくベタに恋愛の喜びや幸福感を声高に押し付けるような曲を聴きたくなくって、かと言って夜の闇の中で夢や希望をハイテンションで歌う曲を聴くのはいかにも人工的で違う気がするし、クラシック音楽を聴くと眠くなってしまうので(眠るべき時間なのだけれど)、なんとなーくクリープハイプを聴くようになった。 クリープハイプについて評することが出来るほど詳しくは知らないけれど、なんだか今の私にちょうどいいバンドだ。ファンクラブだけ入ってライブにはまだ行ったことがない。変な

          確定した公共料金はただの生活の記録で

          余命宣告

          一昨日から体調が芳しくない。不調に身を任せてぐったりしておきたいところだったけれど、余計なことを考えてしまう出来事がいくつかあって、何度か泣いた、ひっそりと。ただひたすらに時間が経つのを待つだけだ。 私はいよいよ本格的に"生きる価値のない人間"になったのかもしれないと思った。女にとって加齢って、本当に恐ろしいもの。 だからこそ生きてやると決めた。それは去年の誕生日のこと。産まれて初めて母に「産んでくれてありがとう」と言えたのだった。 私にとって、家族にとって、私が歳を重ねら

          余命宣告

          夏が嫌いです

          私は夏が嫌いです。正確には嫌いになってしまいました。 夏生まれだし南国育ちなのに、どうしてだろう。私は冬の方が好き。 歳を重ねると人混みが苦手な友人たちが増えて、行きたい夏祭りも花火大会もフェスも行けなくなって、休日の昼間はひたすら部屋でぐったりしながらアイスクリーム食べるだけ、時々お昼からお酒呑んだりしちゃって。そうだ、人の家って居心地が良いよね、どんなに汚くても。夜になると少し元気になって街に繰り出し夏なんて関係無いお店で食事したりして。 そんな風に過ぎ去って行く夏、

          夏が嫌いです

          トニー滝谷

          村上春樹の短編集『レキシントンの幽霊』に収録されている「トニー滝谷」が、私が村上春樹作品の中で最も好きだ。 どうして好きなのかは分からない。 彼女が妻にした女性は「服を着るために生まれてきたような人なんだ」と、トニー滝谷は語った。彼女は「服が、自分の中の足りない部分を埋めてくれる気がして」と言い、お給料のほとんどを服に使ってしまうとトニー滝谷に話した。 恋人がいる彼女にトニー滝谷は猛アタックし、結婚にこぎりつけた。そこに至る過程は書かれていない。私は、彼女はトニー滝谷の

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          魂の午前3時

          時計が好きだった。 好き、という言葉はひょっとしたら違うかもしれない。 とにかく、時計を沢山所有していた。時間に追われていたのかもしれない。いつも時間を気にしていた。 東京23区内の狭いマンションでも死角なんて沢山あるから、私はどの場所にいて何をしていてもすぐに時間が分かるよう、あちらこちらに時計を置いていた。 リビングに掛け時計をひとつ。デスクに置時計をひとつ。キッチンに掛け時計をひとつ、置時計をひとつ。玄関にもひとつ。バスルームにもひとつ。 そして、腕時計は安いも

          魂の午前3時

          404 Not Found

          今日はとても疲れてしまった。特に午後からは。 楽しそうに写真を撮ってる子がいて羨ましくなったり、閉店詐欺だと思っていたお店が本当に閉店しちゃっていて悲しくなったり、馴染みの美容室へ久しぶりに顔を出す勇気が無かったりした。 夕方、九州で地震が発生した。私は九州出身だ。 両親に電話をかけると「とても大きい揺れだったよ、特に被害はないけど」と言い、今は夕食を食べていると言った。電話を終えた後、私は急に涙が出てきちゃって、久方ぶりに泣きながら帰った、いい歳をした大人なのに。 今

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          完璧なわがままについて

          村上春樹の『ノルウェイの森』という有名な小説に登場するミドリが言う、「私が男性に求めているのは"完璧なわがまま"なの」と。 20代の頃の私は、こういう女の子だったように思う。 でも今は30代だ。30代が私の思う、"完璧なわがまま"はーー 「ショート・ケーキが食べたい」とは言わない。 なので、もちろん、窓からショート・ケーキを放り投げたりなんかしない。 「何がいい?チョコレート・ムース?それともチーズ・ケーキ?」 なんて聞くような男はくだらない男だと思う。 私は私の求

          完璧なわがままについて

          淡々と

          今年の夏は例年より暑い気がする。生命の危機を感じてしまうから、夏らしいことをせずに終えそうで少し寂しくなる。だったら何かすればいいのに、ひたすらぐったりしてしまう。後悔するかもしれないのに、動けない。何もしない夏、嫌いな夏、そういうのを肯定してくれる音楽を聴いている。 最近は淡々と暮らしている。私なりに。 もともと感情の起伏が激しかったので、これでも私の中では落ち着いてきた方。 「自分のご機嫌は自分で取ろう」とよく言うけれど、私はいつまでも子どもみたいに、他人や環境のせい

          百五円の恋

          書ききったら本当に終わりになる気がするから、書くことが出来なかった。 あれは消費税率が8%になる前に終わった恋だった。つまり2014年より前の出来事である。 彼は、私が一目惚れしたあの人は、総合格闘技のプロ選手だった。階級はバンタム級。しかしながら負けっぱなしだったらしく若くして引退を決めたらしい。 あの人が引退した頃に私たちは交際を始めた。 あの人は契約社員をしながら格闘技をやっていたので、定職に就くことを考えていた。あの人が目指したのは理学療法士である。ご両親から学

          百五円の恋

          からだが教えてくれること

          どんより体調が悪い一日を過ごしてみると、腹を立てたり憎んだり悲しんだりすることにも体力がいるということに気付く。 同じ日々を淡々と塗りつぶす事や、そういった日々に向き合う人たちを「つまらない」と言う人たちが沢山いるのだろうけれど、穏やかに笑っていられるなら、それも良いと私は思う。 祖父の遺影の柔らかい笑顔に泣ける。 晩年は仏様のようにいつも笑っていた。私が帰省した時に顔を合わせると「笑っていれば大丈夫」といつも励ましてくれた。 時には、よく帰って来たと、まるで戦争から戻っ

          からだが教えてくれること