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ラヴ・ペンタックス

今回はどうしようもなく、PENTAXへの愛を綴りたくて文章をしたためることにした。(下にいっぱい写真があるよ)


もちろん俺はカメラのプロであったり、様々な機種を使い分けたりしたことのある訳じゃなくて、未だに10年近く前に買ってからずっと大事なシーンを共に過ごしてきたカメラについてつらつらとラブレターを書いて、これを読んだどこかの誰かが興味を持ってPENTAXのカメラが一台でも多く売れれば、何だか楽しいカメラがまた発表されるんじゃないかなんて思ったりするだけの人だ。奇特でしょ。




俺とPENTAXの出会いはなんてことの無い、大宮のビックカメラのカメラ売場だった。

当時美大の建築系の学部に通っていた俺は、先輩やら同級生達が「一眼レフ」なるものを持ってきて自分の作品や風景など撮ってプレゼンの際に使い始めるブームを感じていた。

例に漏れず、俺もなんだかあのカッコいいカメラで作品を撮ればもっともっと評価されるんじゃないかなんて短絡的な考え方―――つまりは煙草吸い始めたのと同じようにただ「かっこよかった」が入口だった。

彼らはNikonかCanonかなんて言いながら楽しそうに会話をしていて俺も早く混ざりたかったが、なかなかに一眼レフは大学生(しかも貧乏建築学生、課題の製作で結構金が無い)にとっては高過ぎる代物だった。

貯金が出来ないタイプの俺はバイトで稼いだ金をあっという間に使い切って毎月末は貧乏だったはずなのに、どういった裏ワザを使ったかあまり覚えていないが20になった夏にカメラを買う覚悟を決めて前述のビックカメラに向かったことを鮮明に覚えている。

 この時もちろんPENTAXなんて聞いたこともなく、売り場に並ぶ違いが各社のロゴくらいしかわからない(正直今も知識ベースで違うことはわかっても実情どんだけ違うの?といったレベルだが)状態で俺はAFとテストで切れるシャッターの感じをただ楽しむことしかできなかった。

そうして店員からの「ああ、冷やかしね」といった視線を背中に浴びながらも熱心にファインダーを覗いてはシャッターを押す。良し悪しはよくわからない。その行為を売り場にあるカメラで端から順番に試していったのだ。

この時、やはり違いはよくわからなかったが各社なんとなく感じたのは「シャッター音が違う」と「握りやすさ(重さ含めた)」と「高いやつは高いなりになんか色々付いてる」ということがわかった。


そこで一際、少年心をくすぐるあまりにも重厚感のある、それでいて重苦しくないシャッター音のカメラがあった。

PENTAX k-50だ

聞いたことのないメーカーの入門機は、Canonの軽めのシャッター音ともnikonのちょっとわざとらしい(と、そのときは思った)シャッター音とも違う心地よさを感じたのだった。
というか音が一際デカかった。あまりにも写真を撮っています!という音がした。

あとは値段もちょっと安くて、付いてくるレンズの35mm単焦点もコンパクトで緑のラインが入っていてカッコよかった。

その時点で楽器や機材にたくさんお金を使ってきた俺は、こういうのは最初に見た時、触ったときのフィーリンに従うと幸せになれることをよく知っていたから滞在時間約15分程度、PENTAXのカメラを買うことを決めたのだ。

買って早速、ビックカメラの駐輪場か街路樹のところのベンチか忘れてしまったけど座り込んで箱を開けて、一緒に買ったeneloopとメモリーカードを挿し、ガチャリとレンズを嵌め込んでスイッチをオンに回す。


そのカメラで覗いたファインダー越しの景色は1つ、俺を何者かにしてくれたような気がした。
ガシャリ、とPENTAXが言って写真を1枚表示させた。
何を撮ったかもあまり覚えていないけど、多分オートで撮ったただの写真だけど光の具合に感動した事を覚えている。

後にも先にも、写真に感動したのはその時くらいだったかもしれない。


撮影日を見るに、買ってから数日ほど経った日に撮った写真たち。

背景のぼかし方がわかって楽しくなっていた時期
そこにあった光がよりドラマチックに見えることに震えた


ともあれ、念願の一眼レフを手にした俺は大学で意気揚々と周りの誰も持っていないPENTAXをぶら下げて何でもないかのように写真を撮った。

早速自慢気にカメラで撮った課題の模型
ところで模型凄い上手じゃない?

今見ると流石に黄色すぎるよねとか(PENTAXのAWBってすごい黄色にならない?)画角がさあ、とか思っちゃうんだけど本人は結構何考えず楽しく撮影しているのでいい感じなんだと思う。

ここから更に沢山の旅先や場所で写真を撮ることになる。


キセログラフィカを人から貰って撮った写真。なぜモノクロにしたかはあんまり覚えていない
糸島の海。海に憧れがあるから海の写真はたくさん撮った
鎌倉の宿。入る光があまりにも優しくて思わず


カメラをやる人ならわかるかもしれないけれど、時々自分でも想像していない光の入り方や出方をするとんでもなく良い1枚が撮れることがあると思う。

人がどう思うか、どれくらい素晴らしい写真かはわからないけど、その写真が撮れてしまってから確実にカメラにどんどんのめり込んでいったのは間違いない。

福岡のショッピングモールで何気なく撮った1枚

この写真を撮って画面で確認したとき、外にも関わらず思わず「うわあ…」と声を漏らしたほどに震えた。

まさか自分で撮った写真で震えるとは、という気持ちと、俺はこれを撮るためにあの時カメラを買ったのかも、だからPENTAXを選んだのかもとさえ思った。

―――つまり俺はここでPENTAXと恋に落ちた。


そのへんの道端の花。やっぱり光が最高
また海撮ってる
度々、シンプルな画質の良さに驚く

この時大体2021-22年くらいだから「PENTAXは俺の女や!」などと触れ回っている俺がPENTAXに本格的に向き合ったのは比較的最近の話だった。

それまでカメラを使うことは多々あったが、何かを「撮る」というよりは記録に「残す」ような使い方がメインだった。


そうこうしてるうちに気がつけば2024年、これを書いている年の夏前。めちゃくちゃホットな話題だが、これまでずっと最初にレンズキットで手に入れた35mm単焦点のみで撮影に臨んでいたが、突然新しいレンズが欲しくなってしまった。

レンズはとりあえず2本買おうと思った。

1つは前々から気になっていた魚眼レンズ、DA fisheye10-17mm
あともう1つはどうしてもlimitedシリーズを手に入れたかった。

流石に顔が写っているからこんなわけわかんない名前で運用しているアカウントから発信するわけにもいかず、風景写真ばかりさっきから出しているが人物撮影がメインでやることが多く、一時期は周りの読モ崩れやバンドをやっていたからその付近の人間を片っ端から飯で釣り、爆裂に写真を撮っていた。

それもありポートレート用の取り回しのよくいい絵が撮れそうな、評判のいいlimitedシリーズはこれからの撮影に大変役に立つだろうと、そういう考えだった。


こういうとき俺はあらゆる隙間時間を興味のあるものに費やす傾向がある。

この時も例にもれず、とにかくレンズの作例やブログ、レビューを見漁った。


そうしていくと、段々自分に合った―――もとい欲しいものが見えてくる。
これは中古のエフェクターを音も聴かずに(You Tubeとかでは聴くけど)買い漁ってきた実績とたくさんの失敗で磨いてきた技術だが、とにかく買うlimitedレンズを決めた。

DA 20-40mm Limited

K-50に装着された20-40

色々候補はあって、最終的に31mmのlimitedと20-40の一騎打ちまでは絞れたがどうしても決めきれなかった。

が、夜中までそれをベッドの中でブツブツ言いながら考えていたら「20-40ってことは実質31mmが網羅できてるじゃん」と、絶対に違う結論だがもうそうやってイチャモンを付けないと決められないようなレベルまで飛躍して、放っておくと両方買いかねない性格だったため、なんとか昂ぶる気持ちを落ち着けて20-40mmとfisheye10-17mmを買うことになった。


俺は昔から、ゲームを買ってもらうと帰りの車の中で説明書を読んで気を紛らわせる位には新しいものを手に入れると我慢ができないタイプだから、レンズが届くとそのままササッと箱から取り出し写真を撮りに行くことにした。

20-40mm Limited
同じカメラを使っているのか?というくらい繊細な描写
fisheye10-17mm
魚眼の楽しさは街並みを撮るときかもしれない
fisheye10-17mm
デカイもの撮るときもいいかも

散歩がてら、と思ったら意味不明に3時間も練り歩いてしまった。新レンズ、恐るべしと思いつつここから更にカメラにのめり込んでいくのだった。


カメラ本体、レンズと来れば三種の神器ラスト1つはレタッチだろう。
元々PENTAXの色表現は好みのものも多く(やっぱりAWBだけは黄色くなりすぎるから最近めっきり使わない)jpg撮って出しで十分満足していたが、大学でLightroomやPhotoshopを多用するようになって操作は一通り知っていたし、仕事でもパースのレタッチ等で「絵」に対しての編集は割ともう感覚的にハッキリと出来るようになっていたから、もうレタッチいっぱいしちゃおうねって感じになるのは自然な流れだった。

俺の好みは明白で、全体的に青が緑に寄っているちょっと古臭いコントラストと彩度感の所謂フィルムっぽい懐かしさある写真が好きだ。
こればっかりは好みの問題で、デジタル一眼レフでそんな風にするのはナンセンスという考えもあるだろうが、俺が好きなんだから仕方ない。黙れ。
ちなみにフィルムカメラは何だかちょっと割高感あるなあと言うのと、撮った写真をすぐ見たいせっかちな性格が災いして手を出せないでいるが憧れはある。

とにかく、勝手にこれを自分の作風として確立することにして、RAWで撮ってはジャンジャンLightroomの作ったプリセットを掛けまくり写真を量産している

どう編集するかというと

これが
こう


そもそもRAWの時点で20-40mm Limitedの曖昧さと最高のボケ感、APS-Cの画素数で殴ってこない感じが好き。

それをこう、見ての通りすごい変えちゃう。でも俺はアフターのほうが好き。みんなも好きになってほしい。


こうして緑っぽい写真を量産して、やはり今日もPENTAXと愛を育むのだ。

窓から射し込む明かりがやわらかい
まーーーーた海を撮る
魚眼とモリモリの雲は相性最高
モリモリじゃない雲でもいい感じ
これはもう写真見ただけでこれを撮ったときの空気と気温、匂いまで思い出せる
星も撮れます
海が綺麗すぎて雲が反射しちゃう
すんごいフィルムっぽくなって嬉しかった写真
雲が嘘みたいに良かった
ここで死んでもいいなと思うくらいいい景色だった
海見るとすぐ撮っちゃう
なんかめちゃくちゃデブが座ってるみたいな入道雲
光が性癖過ぎた
光ってるところがウサギに見えてつい



もはや写真を見せつけるだけの時間があったけど、俺が長々と何を言いたかったかというと

正直iPhoneで十分素敵な写真が撮れる時代で、しかも一眼もミラーレスがメインストリームの時代で一眼レフを使うことはシャッター音のデカさもカメラ自体の重さも、俺が初めて電気屋で持ったときのワクワク感と興奮をいつだって忘れさせない。
だから俺は多分このカメラ達と死ぬと思う。

何度も電気屋やカメラ屋に足を運んではミラーレスが欲しくなって(マジで一眼レフ重いしちょっとでかいからよく嫌気が差す)シャッターを切ったりファインダーを覗くけど
機能的に最低限のシャッター音と画面越しのファインダーにどうしてもときめけなくて、行く度に家で俺を待ってるPENTAXが愛おしくなる。

これを読んでいる人の中に、カメラに関わらずこんなに想いを馳せたり、悩んだりすることはあるだろうか。
あるとしたらそれは多分恋だし、多分俺はあの日福岡でうっかり撮った写真を見てから本当にカメラを、PENTAXをたまらなく愛してしまったんだと思う。

多分カメラの魅力、魔力はそういうところにあると思ってて、ミラーレスを否定するつもりも全く無いけど、一眼レフが店頭に山盛り並んでる時代にカメラを買えたことが俺にとってはラッキーだったんだと思う。

だから街なかでたまにいる、妙にでかいカメラを持ってうるさいシャッター音を響かせてる奴を見たら、多分それはカメラと愛を育んでる最中だと思うし、あんまり煙たがらずにそっと距離をとってやってほしい。

この文章や写真が、なんかちょっといいかもと思ったら是非カメラを買おう。と言うかPENTAXを買え、PENTAX以外買うな、俺と同じ業を背負おう。PENTAX以外のカメラを愛せなくなる業を。

「ラヴ・ペンタックス」

ぬくもり

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