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【物語詩】花火になりたくて
これは花火職人を父に持つ少年の話
花火を打つ父の後ろ姿に憧れつつ
ついつい寄り道で野原で寝てしまう春の頃
彼は絶賛反抗期中でサボリがち
まだ成人前だからと子ども扱いされ
雑用ばかりさせられるのが気に食わない
軽い気持ちで招いた睡魔が
本気の昼寝になりかけた頃
「ねえねえ」と しきりに声を掛けられた
寝ぼけ眼で少年は声の主を探す
その不思議な声は野原の坂道の上から呼ぶ
のこのこと坂道を上った少年は
そこにたくさんの草が生えているのを見た
いや 正確には草ではなかった
「私たちは向日葵よ」と声が名乗ったからだ
「ねえねえ あなたは花火の人よね?」
向日葵に問われ少年は戸惑った
「私たちも空で咲いてみたいの!」
壮大な夢を聞いてさらに驚いた
向日葵には代々の記憶があるらしい
「ご先祖様は太陽と花火を眺めてばっかり」
子孫の夢は 前代未聞の夢だった
「お願い 花火の人にしか頼めないの」
少年は即座に無理だと言いたかった
しかし その無理は
自分の夢まで無理となりそうで言えない
僕は花火を作るんだ
だから向日葵の花火なんて造作もない
一世一代の決心をした!
まずは父親に相談をしてみる
頼むよ 向日葵が願っているんだ
しかし父親は渋い顔を横振りするばかり
父親の仲間の職人にも訊いてみたり
なにかヒントはないかと探してみたり
いつの間にか逞しく仕事をこなしていた
息子の熱心な様子に根負けした花火職人
ついに花火職人の卵に手招きをして
考え抜いた打開策を打ち明ける
少年は向日葵に策を説明した
「本当に……やってくれるの?!」
まだ開かぬ蕾が嬉しそうな声を出した
来たる祭日 真夏の夜の夢物語
仰げば天の川が広がる星の街へ
花火を打ち上げるときが来た
花火職人たちと少年は力を合わせる
地上の街の人々は見守って
光り輝き 彩る 花火を
最後に盛大に打ち上げられたのは
一際大きな ロケット型の花火
ピューと轟音を鳴らしながら
大きく丸い 金色の花を空に描いた
野原の坂道の上では
間引きされた向日葵が歓声を上げて
それからは毎年 その街では
最後に金色の花火が打ち上げられる
いつしか野原一面に咲き誇る
向日葵の見える夜空で
「花火」はテーマに上げていましたが、イラストを描いた時点で「向日葵」を主役にしていなくて、向日葵っぽくならなかったです(苦笑)。