【哀悼詩】上島竜兵さんをしのぶ
鳥が逃げたニュースから逃げて
たどり着いた温泉の岸辺
蒸気でぼやけた瞳を澄ませると
とぼけたシルエットが向こうに居る
ばたばた ジタバタ
その影は何かを言いたいのかもしれない
いいよ言ってよと大きく返す
ばたばた ジタバタ
──言わないのかよ!
笑い声のようなさざ波が広がっていく
ひとしきり怒ったり帽子をひらりと被ったり
声がどうしても聞こえないから
チャップリンみたいじゃんってなるじゃん
いつもみたいに怒鳴ってよ!
ボコボコと感情を吸い上げた温泉と
俯いた本音から零れた涙が混ざる
「とり乱しました」湯気の消えた彼岸で
ジタバタと動きながら人は鳥になった
ばたばたと腕を羽ばたかせ
鳥はお辞儀をして空へ去っていく
飛ぶんじゃなくて走っていくものだから
飛べよ! とズッコケて目が覚めた
ざわざわ ざわざわ
街中の喧騒でぽつねんと一人
夢かよと振り返るとダチョウが2羽
寂しそうに空を見ていた
夢じゃないねんと悟る一人
鳥をとり逃がしたニュースを持って
そっと家へ帰ろう
寂しさが沸騰する前に
上島竜兵さんの訃報を知り、なんだか書きたくて、でも「お悔やみを」「ご冥福を」はまだ何かが違ってて、気持ちが追いつかなくて、自殺のワードはジョークにすら感じて、でも笑えなくて、詩を書きながら事実を噛みしめました。ツッコませてくださいよ。
執筆そのものは3時間弱。ニュースを知って既に半日。
まだ楽しそうにおどけている姿を鮮明に思い出せるよ。今なら嘘でしたって登場しても誰も怒らないよ。