【物語詩】果報ラッピング職人
箱に詰めて包装して届けるのがワシの仕事
何から何までオーダーメイドだぞい!
送り主が決めた品物以外はな
そう言えば 珍しいことがあったんだ
同じ品物 同じ人物宛てで
まったくラッピングの異なる注文が入った
2人同時に依頼があってな
1人目は 穏やかで慈愛に満ちた眼差しで
桐製の木箱 カラフルな緩衝材で
淡い包装紙に桜色のリボンをあしらうよう
それは柔らかな声で頼んできた
もう1人は 刃のように尖った声音で
鉛のケースと土塗れの新聞紙を使い
麻の紐で縛り上げてくれと
涙か血を流しそうな目元をこちらに向けた
白い服と黒い服
2人はお互いを見遣る仕草はなかったが
まるで双子のような顔立ちで
双方の依頼が完了すると同時に去って行った
果たしてそこに、どんな因果があるのか
あると決まりきったわけでもないが
ワシにできることは職を全うすること
できあがった手製の箱それぞれに
そっくりなリンゴの置物を詰めていく
陶器製か ずっしりとしたその品物には
宛て人への想いが込められている
きっと大層なことをした人なのだろう
こんなに想われているのだから……
じゃないとワシに仕事も来んわい
余計な詮索をせぬのが仕事の鉄則
何かを成した人へ 贈与したい人が
ワシに依頼する それを包むだけ
何も恐れることはない
受取人は 果報を寝て待て
必ずやワシがお届けしようぞ!