【物語詩】リンゴ泥棒
さぁ皆 集まったかな?
一同が揃うのはノアの箱舟ぶりかの
呼び出した理由は他でもない
我らが楽園の知識の実が盗まれたのじゃ
そうじゃ 前回は人の子が犯人じゃった
共犯の蛇にも厳しく𠮟ったのは懐かしいの
今回は違うじゃろ? ワシに誓いなさい!
ふむふむ はっきり否定したの よろしい
あっ 人の子 ついでに頼みたいのじゃ
「ぼーはんカメラ」とやらを今度おくれ
やれやれ 早く取り付けるべきであった
こうして皆を疑うのはワシとて悲しい……
ところでリンゴ泥棒よ 名乗り出ないか?
早めに言った方が恥ずかしくないのじゃ
アレ けっこう高いんじゃよ~
なにせ叡智が詰まっとる 謝っておくれよ
おお狐に烏 えっ推理をしてくれるのかい
犬に蜜蜂も匂いで行方を探してくれると?
お前たち……優しく育って嬉しいぞ
ならば件の果樹のもとへ案内するぞい
ほら ここだ……ん? どうしたのじゃ?
皆して木の根元を見て……はっ これは!
知識の実が転がっておる……!
まさか 熟れ過ぎて落ちてしまったのか?
皆よ ……申し訳ありませんでした!!
誰も罪など犯しておらんかったのだな
ワシったらろくに探さず決めつけてもうた
恥を知るべきはワシの方じゃ!!
おお そんなに緩い笑顔で見ないでおくれ
ポンポンと肩を叩くのも ちょっと……
うむ? 猫に狸 どうしたのじゃ
そんなに体を摺り寄せてきて 何々?
お詫びとして宴を開いて欲しいと?
お前たちは……意外と足元を見るのじゃな
致し方ない 手間賃代わりに用意するか
ほれ 御馳走に葡萄酒だ たんとお食べ!
金糸雀や鈴虫たちが歌い出す
ペンギンや孔雀は踊り出した
やれやれ これは収拾がつかなくなるぞい
子らに恵まれるのは良いが悲喜交々じゃ
後片付けは大変じゃろうのぅ……
リンゴでも齧って対策でも練っておくかぁ