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【物語詩】カラスの塗り絵
「ねぇ おばあちゃん聞いて
この前みんなで塗り絵したんだ
そしたらカラスがあったんだけど
コウくんが乱暴に墨をぶっかけたの
ほら オレって天才だろって笑って
もしかしてカラスのことが嫌いなのかな?
ぼくはバケツで掛けられた想像をして
カラスのことが可哀想だと思ったから
上から修正テープで白くしたんだ
そしたらミキちゃんが拍手をして
白いカラスなんて素敵って褒めてくれた
コウくんは何すんだよ馬鹿って怒ったけど
ミキちゃんはぼくのこと天才って言って
なんだか塗り絵は終わっちゃった
ぼくって天才なの? 馬鹿なの?
でね さっきママにも質問してみたら
世界のどこかに白いカラスもいるから
どっちも正解なのよって言ったんだ
すごいね! コウくんとミキちゃん!
ぼくなんてどっちでもない平凡な人だぁ」
おばあちゃんはニコニコしながら
ウンウンとぼくをナデナデしてくれた
──そんな幼き記憶を今でも覚えている
大人になった僕はずっと平凡なままだ
でももうカラスを白く塗ることはない
少なくとも 修正テープではね
今ならもっと綺麗に 鮮やかに塗れる
あの日のカラスが僕にそうさせる
握り慣れた絵筆は まだ未熟者で
天才も 馬鹿にもなったりするけれど
うーん。大人になった僕は蛇足かなぁ。悩み。
それにしても、修正液とか修正ペンがもはやマイナーで、小道具に使いにくくなっているのには参りました(笑)。