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【物語詩】君を登る

 どうしてこんなに惹きつけられるのか
 登山家の血が騒いだのか
 とにかく登りたくて仕方ない

 君は最高峰ではない
 君は美景観というわけでもない
 でも とにかく登りたくて仕方ない


 山肌を踏みしめる度に感じる
 谷に遺してきた厄介ごとの恨み言
 それらから逃げたくて登るのに
 山びこのように 追いかけてくる

 辛くて諦めかける度に君は言う
「振り返っちゃダメだよ」
「こっちだけを見て」
 頂上の方から声がする


 コツコツと積み重ねた努力が
 山と同じ高さになるまでに
 どれほどの時間が流れたのだろう
 山奥の湧き水が海に流れるぐらいだろうか

 上り坂の果てにあったのは1つの成果
「ここの赤い実は食べられるよ」
 甘酸っぱい果実の汁を嚥下しながら
 改めて見たのは

 山の頂上にしかない景色と
 山を登り切った自分自身と
 君がコロコロと笑っている声
「どうぞ この世界を堪能してね」

 登る前と 登った後は違う
 それは良いことなのか 悪いのか?
 分からないまま 人は変わっていくんだ
 それって人生そのものかもしれないな


 時は経ち 君もいつしか変わってしまった
 さらに大きく 違う形の山となる
 麓にいる私は微笑んで足を踏み出した

 とにかく登りたくて仕方ない
 たとえ難攻不落の難題と言われたくても
 君に登りたくて仕方ない






 あの、エロいつもりはないです。
(※言い訳)


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