【物語詩】いとしのラクガキ
秋も色づいてきた休日の昼
今日もいそいそと兄貴の家に行く
兄貴は頼れる兄貴! オレの自慢
7年前に結婚して男の子が1人居る
甥っ子は小さい頃のオレに似てるってさ!
だから弟分の成長を見守る気分で行くのさ
義姉さんにお菓子を渡して子供部屋に行く
いたいた 今日も元気だなぁ!
この前まで赤ん坊だったのに もう3歳か
弟分はクレヨンをゴリゴリと擦っている
どうやらお絵描きをしているらしい
……なぜほっぺにクレヨンが付いている?
「あっ! アニー!」
甥っ子はオレに気づいて万歳ポーズをする
よしよし オレが兄貴分だと分かってるな
できれば「アニキ」って呼んで欲しいが
「何をやっているんだ~?」と訊いてみると
「これー! できたのー」と指を差している
覗き込むと……
……何やら黄色と茶色のマルがいっぱいだ
なんだこれ?
「えーと お団子か?」
「ぶっぶー!」
「じゃあ ミートボール??」
「ぶぅー!」
やばいな…… どうやら食い物ではない
「アニー これよ……??」
オレの弟分は瞳をウルウルとさせている
やばいな…… 次これ正解しないと泣くぞ
ラストチャンスに緊張した背筋が泣く
「どうしたんだ?」
ふわっと涙を拭うように声をかけられる
振り向くとそこには……
「パパー!」「アニー!」
「アニーはお前だろ」
頼れる兄貴は呆れながらも近寄ってくる
そして自分の息子の絵を一瞥すると
「あー これ……お前を描いたんだよな?」
と オレを指差しながら息子に問う
「ぴんぽーん!」
甥っ子は満面の笑みで笑い出した
……この大量のマルがオレ……?
「確か 向日葵とライオンの色だよな?」
記憶を辿るように兄貴は呟いた
「ぴーぽーぴーぽーん!!」
もはやサイレンのように弟分は喜び狂う
……向日葵と ライオン……?
あっ どっちもオレが好きなやつだ……!
そういえば 好きな花と動物を訊かれたんだ
まさか オレを描こうとしてくれて……?
「そっ……そっか……!」
嬉しさで瞳をウルウルさせてオレは頷いた
「ありがとう……大事にするな」
「やー! あげなーい!!」
「えー!?」
てっきりくれるのかと思っていた!!
「アニーがいないとき アニーなの!!」
頬をプンプンに膨らませて弟分は言う
「ああ……甥っ子たらしだよな お前は」
むっつりとぼやき 兄貴は口を尖らせる
「うふふ……愛されてるわね 弟さんは」
いつの間にか姉さんが扉口で笑っている
……なんだろう これは……
なんだか 心の中がいっぱいだ……
いつの間にか団らんは終わりを告げ
オレは帰途を歩んでいる
なんだか……思うのだが……
悲しくないのに泣きたい気分だ
なんで泣きたいのだか……
あのラクガキを貰えなかったからか?
あの子と ずっと傍にいられないからか?
わかんないけど
この気持ちはずっとしまっておこう
きっとこれは……
名実ともにアニキになれた暁に
きっと理解ができるだろうから