魔術師は長い長い模倣犯にクロスファイア
って、なんじゃそりゃ!(セルフツッコミ)
さて、なんでしょう?(ドヤ顔でクイズモード)
「何を一人で百面相しているのかね?」
あっ! あなたは……迷探偵ユタカ!!
いいところに! このタイトルを読んでください!
「むむ、これは複雑怪奇なセンテンス……。暗号のようだ。いいでしょう、私に任せない!」
マイペース主義な温水ミステリー、開幕?
「そこで疑問形にするのは、お止しなさい」
手掛かりは「宮部みゆき」だ……
それにしても、いくつも特徴的な言葉がちりばめられていますね……。一体何を示すんでしょう?
「『魔術師』……『長い』……『模倣犯』……『クロスファイア』。よし、検索と。おお、これは!」
あれ、ユタカ探偵? もしかして、ネット頼み?
「これを見たまえ!」
はあ……チラリ。宮部みゆきって人に関する記事が、いくつもヒットしていますね。
「そうとも。ミステリー界に留まらず、時代小説、ファンタジー小説も手掛ける、あの宮部みゆき先生だ!!」
そこまで言うなら検索する前に閃いてくださいよ。
「魔術師」は長い長い模倣犯にクロスファイア
それで、まず「魔術師」の謎は?
「『宮部みゆき 魔術師』。――ずばり『魔術師はささやく』だな。3人の女性が、事故とも自殺とも取れない形で死を遂げるのだ。そのうちの1人がタクシーに撥ねられ即死するのだが、そのタクシー運転手の甥・守が主人公として、少しずつ事件の核心に迫っていく」
朗々とした朗読ですね……。
「この作品の魅力は、伯母夫婦の元に身を寄せ暮らしていた少年の家族愛、それに少年と犯人の関係だな。物語が進むにつれ深まり、ラストでわかる「ささやく」の意味。トリックが時代性があるというか眉唾物なのだが、その独自性が相深まって、特に印象的だったらしい――」
え? 誰がですか?
「ん? ああ……誰だったかな」
魔術師は長い長い「模倣犯」にクロスファイア
それでは、次の推理をどうぞ。
「次は、『模倣犯』だな。これはテレビドラマでも映画でも制作されているので、知っている人は多いのではないか」
急に視聴者頼みに!
「ただ、原作を読み込むのが一番の味わい方だ。超長編なので抵抗感を覚える人もいるかもしれないが、物語の深さは底知れない。被害者家族の思い、犯人の周囲の思い、「模倣犯」に立ち向かうルポライターの思い。それらが濃厚なハーモニーを奏でる」
……視聴者頼みにするくせに、原作推し。
「なぁ、君はどう思う? 公園でたまたま、女性ものの鞄と右腕を見つけたら。……さわれる?」
知らないというか、想像できる方が怖いんじゃ!?
「ちなみに『模倣犯』に出てくる刑事・武上悦郎氏だが。後に『クロスファイア』の石津ちか子氏と、クロスオーバー捜査をしている」
……そうなんですか。いや、どういうことです?
「スピンオフ的作品の『R.P.G.』にて、本来は交わらない2人が、事件の真相を追っているのだ。石津刑事は、放火捜査班だしな」
魔術師は長い長い模倣犯に「クロスファイア」
放火捜査班? ……そういえば『クロスファイア』って、炎が交差しているイメージですもんね。
「『クロスファイア』は、念力放火能力(=パイロキネシス)をもつ女性を主人公にしたミステリー小説だ」
え、超能力……いや、異能力使い? それでもミステリー小説ですか?
「あぁ。スタイルとしては、犯人が最初に判明している『刑事コロンボ』や『古畑任三郎』をイメージするといいかもしれない」
つまり……その超能力をもった女性が、犯人だと?
「そうだな。女性は、とある事情で犯罪グループらしき男どもを焼き殺す。その際にグループの1人を逃すのだが、そいつを追う女性と、放火犯を追う石津氏、という構造で成り立っている」
それ、本当に古畑任三郎でいいですか?
「面白いぞ! 原作ラストが切ないんだ!」
はいはい。それ、誰の意見です?
魔術師は「長い長い」模倣犯にクロスファイア
あと残っているのは……「長い長い」ですね。
「これは『長い長い殺人』のことだろうな」
シンプルな言葉ですが、なぜ2回言うんです?
「それは……著者が明かしていないので、闇の中だ。まぁ、大事なことだから2回書いたとか、そんなではないのか?」
……「長い」ことが?
――ピピッ。
あれ、スマホに通知が。「近くのコンビニに行け?」
「犯人からの連絡か? 今すぐ行こう!」
疑えよ! ちょっと……あーもう!
「ここだな、何か手掛かりが……ああ!!」
静かに! ……すいません、店員さん。ほんとに。
「こっちだ。これを見たまえ!」
この記事の犯人は……
あ。……あー。新刊? 新刊の宣伝?
「いや、この作品は30年前のものだ」
さ……30年!? そんな本が、コンビニに?
「ちなみに、このミステリーは一風変わっていて……おや、この本、何かが挟まっている」
本当だ。よくある栞ではなく……えーと。
……どゆこと?
「うむ……これは、手紙のようだな」
わかってますよ。だからどゆこと?
「要するに、この手紙に導かれ、謎を解いたのだな」
……ぇえー。何それ、小芝居ごっこ?
「まぁ良いではないか。気の赴くままに歩き、謎に触れ、解かしていく……そして頷く。それが探偵の散歩の仕方」
うわぁ、さすが迷探偵。何言っているの?
「なんて?」
というか、散歩していたんですね。それは知らずに、大変失礼いたしました。どうぞお先へ、さあ。
「待ちたまえ、そういうの良くない……オンスイ君!」
温水だよ!