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量子コンピューティングを齧る ベクトル空間とテンソル積
ベクトルだったらテンソル、ベクターだったらテンサーだろう。
もちろんグーグルとアップルもグーガーとアッパーに違いない。
じゃないとスカラーもスカラルにしちゃうぞ。あ、なんかアライグマみたい。
あの…全然先に進めないんですけど。進まない、か。
1.ベクトル空間
ベクトル空間とは
ベクトル空間は、ベクトルの足し算と、スカラー(実数など)との掛け算が定義された数学的な空間です。
基本的な性質
ベクトル空間では以下の操作が可能です。
ベクトルの足し算
v + w(vとwはベクトル)
例:[1, 2] + [3, 4] = [4, 6]
スカラー倍
cv(cはスカラー、vはベクトル)
例:2 × [1, 2] = [2, 4]
重要な法則
以下の法則が使えます。
身近な例として、平面上の点や矢印、力や速度なども、ベクトル空間の要素として扱うことができます。
結合法則
(u + v) + w = u + (v + w)
交換法則
u + v = v + u
分配法則
c(u + v) = cu + cv
(c + d)v = cv + dv
2. テンソル積
数学的な定義
テンソル積は、2つのベクトル空間 V と W に対して、新しいベクトル空間 V⊗W を作る双線形写像です。
重要な性質
双線形性(bilinearity:2つの入力空間であるベクトル空間V, W から出力空間 U への写像 f: V×W → U について、それぞれの入力に関して線形性を満たす性質)
(a + b) ⊗ c = (a ⊗ c) + (b ⊗ c)
a ⊗ (b + c) = (a ⊗ b) + (a ⊗ c)
(ka) ⊗ b = k(a ⊗ b) = a ⊗ (kb)
※ k はスカラー
次元の関係(dim:dimensionの略でベクトル空間の次元を返す関数)
dim(V⊗W) = dim(V) × dim(W)
dim 関数はベクトル空間の大きさ(自由度)を表す重要な概念
具体例
ベクトル空間 V, W がともに2次元の場合
V の基底 = {e₁, e₂}
W の基底 = {f₁, f₂}
テンソル積空間 V⊗W の基底は {e₁⊗f₁, e₁⊗f₂, e₂⊗f₁, e₂⊗f₂} つまり4次元の空間になります。
2次元ベクトルのテンソル積の表記例
2次元の状態ベクトル$${|x\rangle}$$と$${|y\rangle}$$のテンソル積を行列で表現します。
まず、状態ベクトル$${|x\rangle}$$と$${|y\rangle}$$を以下のように定義します。
$$
|x\rangle = \begin{pmatrix} x_1 \\ x_2 \end{pmatrix}, \quad |y\rangle = \begin{pmatrix} y_1 \\ y_2 \end{pmatrix}
$$
これらのテンソル積$${|x\rangle ⊗ |y\rangle}$$は4次元ベクトルとして以下のように表されます。
$$
|x\rangle ⊗ |y\rangle = \begin{pmatrix}x_1y_1\\x_1y_2\\x_2y_1\\x_2y_2\end{pmatrix}
$$
3. 基底
基底(basis)とは
基底とはベクトル空間のすべての要素を一意に表現できる最小の線形独立なベクトルの組です。
2次元空間の標準基底の例
Vの基底 {e₁, e₂} の一般的な例
e₁ = [1, 0]
e₂ = [0, 1]
Wの基底 {f₁, f₂} の一般的な例
f₁ = [1, 0]
f₂ = [0, 1]
テンソル積空間の基底
V⊗Wの基底 {e₁⊗f₁, e₁⊗f₂, e₂⊗f₁, e₂⊗f₂} は
e₁⊗f₁ = [1,0]⊗[1,0] = [1,0,0,0]
e₁⊗f₂ = [1,0]⊗[0,1] = [0,1,0,0]
e₂⊗f₁ = [0,1]⊗[1,0] = [0,0,1,0]
e₂⊗f₂ = [0,1]⊗[0,1] = [0,0,0,1]
4. ベクトル空間とベクトルの表記について
一般的な表記法
ベクトル空間:大文字(V, W など)
ベクトル:小文字(v, w など)
数式での表現
V = R²(2次元ベクトル空間)の場合
v = [1, 2](Vの中の1つのベクトル)
w = [3, 4](Vの中の別のベクトル)
v ∈ V(ベクトル v はベクトル空間 V の要素)
v, w ∈ V(ベクトル v と w は両方とも V の要素)
表記揺れは見逃してつかあさい。KaTeX形式になれとらんもんで…