2021.11.09〜10 南海汐見橋線
阪堺と同時に狙っていたのが、南海電車のローカル線こと汐見橋線である。厳密には高野線だが、愛着的に汐見橋線と今回は呼びたい。大阪市内に残されたノスタルジックな2両電車。コロナ禍で大手民鉄といえど経営が苦しくなれば、廃止に論が進んでもおかしくない。この遠征の第二目的として足を運ぶことにした。
住吉で阪堺を撮ってから、南海に乗って芦原町で降り立った。ここも木製のホーム屋根が哀愁を誘う駅も、地図で見れば大阪の繁華街からそう遠くない場所。歩いて5分のJR芦原橋駅は賑わっているが、この駅は嘘のように静まり返っていた。この雰囲気、大好物。せっかくなので汐見橋から戻ってくる電車を1本撮ろう。露出の難しさはあれど、雰囲気を切り取った。
この日も阪堺の合間に汐見橋線を撮り歩くことにしていた。向かったのは西天下茶屋駅。駅の周りには活気ある商店街が広がっている。東京で言えば東武亀戸線の小村井を彷彿させる駅な気がする。まずは到着後まもなくして現れた電車を踏切から後追いで撮影し、返しをかつては栄えたであろう駅舎越しに切り取った。駅舎に歴史を感じられるのも汐見橋線の良さだと思う。
商店街、良いよね。踏切脇の肉屋でホルモン焼きを買ってから、にぎわう商店街越しに撮ることにした。光線は万全ではないが、曇っているよりはよかろう。1本目、岸里玉出行きは近くから肉屋メインで構図を組んで撮影。返しの汐見橋行きは、望遠で商店街を入れ込んで撮影。ちなみにホルモン焼きはめちゃくちゃ美味しく、うっかり昼間から酒を飲むところだった。飲めば良かった。
夕方になって再び南海へ。木津川駅は都会の秘境駅と評される閑散とした駅だ。駅に着くとすぐに踏切が鳴ったので急ぎホームに居る姿を切り取る。返しはどうしようか。とりあえず来るところと駅を絡めたカットは複数狙うしかない。結果はご覧の通り。2両といえど、この車両の魅力も相当ある気がしてきた。
始発駅の汐見橋。かつてのターミナルは、きょうも静かだ。30分に1本の電車を、駅員が見守る。改札上にある案内絵図も気がつけば新しいものになっていて、しばらく見ない間に細かく変わっているようだ。出発を待つ電車に、去りゆく電車。少ないながらも客を乗せて、およそ10分の短い旅が始まっていった。
ちなみに、かつて飾ってあった昭和30年代の観光路線図はこんな感じだった。往年の時刻表の路線図みたいなデザインである。経年劣化でずいぶんと剥がれていて、こののちに撤去されたようである。しかし、その後新たに現代風に作り直して再び設置する南海の心意気は、実に粋なもんだと私は思う。