2016.09.16〜19 宗谷本線
北海道に興味を持ったのはいつのことだろう。この趣味を持ってから常に憧れの場所であり続け、最終的に居住までしてしまった魅力はどこにあるのだろう。知れば知るほどその魅力を感じる大地を初めて本格的に味わったのは2016年の夏のこと。安く買ったボロボロのマイカーで北海道を一周したのである。様々なカットを撮った。様々な風景を見た。様々な道を走り、様々な思い出ができた。とりとめもない旅の中で唯一くくることができた宗谷線の写真をまとめることにする。
紋別から名寄本線の廃線跡をめぐり、名寄に着いたのはすでにとっくに昼も過ぎた時間。せっかく宗谷本線沿いに来たのだから、何か撮りたいと時刻表を開くと、上りサロベツが迫っているではないか!当時のサロベツは旭川方がスラントノーズ。取り逃すわけにはいかない。急いで撮れそうな場所を探し、カメラ片手に走り出すともう踏切は鳴っていた。上がる息を堪え、望遠レンズで山間の小さな踏切を走るサロベツ・スラントノーズを切り取った直後、我慢できずしゃがみこんだ。
翌日は稚内にいた。宗谷岬を観光し、駅の近くで適当にサロベツを撮っていたらすでに夕方。狙いを定めやってきたのは抜海の丘陵地。天候はイマイチゆえに接近戦を仕掛ける。スーパー宗谷は編成を強調し、続いてやってきたキハ54は夕方っぽさを表現してみた………何よりも、スーパー宗谷幕が鬼籍に入るとはこのときは思わなかったものである。
この日は駅舎めぐりをした。といっても、南幌延の駅に駅舎はない。あるのは板張りの小さなホームだけ。ちょうど列車が来たのでフレームにおさめてみると、そのホームの小ささがよく分かる。というか54ってこんなに大きいのかとも思わせてくれる。宗谷線らしい雄大な景色。駅では誰も乗り降りはしなかった。
昨日に引き続き抜海の丘陵地にやってきた。前日に比べると天気は良い。まずは同行の友人から借り受けた80-200mm/f2.8でスーパー宗谷をケツ撃ち。なんというかちょうどいいカーブだ。そのままレンズを付け替え、海岸線を入れた広い画角で列車を待つと、幌延へ向かう普通列車が通り過ぎた。薄暗くなってきた初秋の宗谷地方。似合うのはヘッドライトよりもテールライトだと思う。
車中泊をしていると、突然友人の叫び声で叩き起こされた。「晴れてる!行こう!」 眠気眼をこすってすぐに行動を開始し、勇知の牧草地帯に車を止めた。緑の牧草の奥にスーパー宗谷が走るロケーション。朝飯前には贅沢すぎる。さらにやってきたのは増結編成。6両の幸運を噛み締めてシャッターを切った。
そのままやってきたのは抜海駅。日本最北の木造駅舎とも言われていて、昨今は廃止もとりだたされている駅でもある。空はさらに青さを増し、良い一日を期待させてくれる。2番ホームから、発車を待つキハを駅舎とともに切り取った。その後は少し時間を潰してから稚内市街地の外れの跨線橋からキハ54を狙う。ギリギリ影に飲み込まれないで撮ることができた。
だんだんとタイムリミットも迫ってきた。車の保険の関係で夕方までには100キロ以上離れた羽幌に着かねばならない。しかし、スラントノーズを逃すわけにもいかない。ギリギリのタイムスケジュールの中、豊富駅の跨線橋に狙いを定めた。まっすぐ迫ってくる車両、草木生い茂る夏の北海道。車両の熱気から生まれる陽炎。昔ながらのY字分岐を絡めて183系0台の勇姿を見つめた。