2021.11.09〜11 阪堺電車④
午後になっても阪堺を追い続けていた。カメラバッグをずっと背負っているせいで肩がパンパンである。北天下茶屋での撮影の後、電車に揺られて降りたのは住吉。阪堺線から上町線が分岐する、一応ジャンクションである。とはいっても、今の実質的な本線は上町線。ポイントを渡るところが狙い目だ。
分岐点脇の歩道からファインダーを覗く。小さな待合所の屋根も良い感じだし、さらにはかつて住吉公園駅まで線路が分岐していたことを物語る、やけに立派な架線柱が往時を偲ばせる。登場したモ503とモ605はともに岡崎屋質店の塗装。何両分の広告を出しているんだと思わなくはないが、見慣れてくるとこの色合いも愛着が出てくるから不思議なものである。
専用軌道入り口に向かって歩いていると、背中から来たのはモ354。塗装は北陸を彷彿させる青だが、車両の形は旧式そのもの。急いでカメラを取り出して記録に勤しむ。専用軌道から出てきたのも、塗装は比較的落ち着いているモ707。昨夜よりも少し広い画角にして、昼間の雰囲気をセンサーに焼き込んだ。
続いて向かったのは帝塚山四丁目。併用軌道の終わりにホームがある停留場である。見る限り帝塚山エリアは古くからの住宅街という雰囲気。かつてはもっと多くの商店が、電車通りに軒を連ねていたのだろうか。今も閑散とはしていない。やってきたのはモ355。塗装は安心感すら覚える岡崎屋質店である。この車両が見てきた景色も随分変わったろう。令和の大阪を走る姿を、記録しておこう。
この日の阪堺電車最後のロケ地は松虫。近鉄の大阪城ことあべのハルカスバックの撮影地である。上六だけでなく阿部野も近鉄のテリトリーやでという圧を感じるハルカスを、南海傘下の阪堺越しに撮りたいのである。来た車両は低床車とパンダ塗装となんとも言えないものだったが、ロケ地としてのポテンシャルは見いだせた。