鳥の目虫の目
ひたすら音楽に没頭して、各楽器の音やハーモニー・歌詞の意味を味わう時間は、私にとっての貴重な息抜きです。
吹奏楽をやっていた経験から、曲全体として楽しむと同時に、各パートの動
きや旋律にも感覚を研ぎ澄ますようになりました。
そのきっかけは、高校で私が所属していた吹奏楽部で、必ず「反省会」をしていたことです。
この反省会とは、合奏やパート練が終わった後、生徒たちが改善点や、合奏の中で気になったポイントを共有し合う時間です。
自分の音さえよければ「いい演奏ができた」と言えないのが、吹奏楽の面白さでもあり難しさでもあります。
自分のパートの調和
木管/金管/打楽器それぞれの調和
高音/中音/低音楽器の調和
旋律/支え/装飾それぞれの調和 etc…
ざっと挙げるだけでもこんなに考えることがあります。
しかも自分の楽器を吹きながら。
(ちなみに、ここで言う「調和」とは、ピッチのずれであったり、音量のバランスであったり、和音の響きであったり、音の粒のそろい具合だったりします。マルチタスクすぎますね。)
反省会は、演奏しながらこれらのことを考える訓練でもあったのでしょう。
反省会では、なるべく1人1回は発言をしようという雰囲気があったので、合奏ごとに何かしら気づいたポイントや改善点を見つける必要がありました。
私は、中学校では、小編成でコンクールにも出たことがないような規模の吹奏楽部だったので、反省会なんてしたことがありませんでした。
そのため、高校で部活に入って初期の合奏では、自分の音に気を配るのに精一杯で、他のパートや全体のハーモニーを聴く余裕は全くありませんでした。
ところが面白いことに、諦めずに感覚を研ぎ澄ませて合奏に参加する練習をしていると、いつの間にか他のパートの音が聞こえるようになってくるのです。
まるでラジオのつまみを回して、局を合わせるような感覚です。
私にとって、吹奏楽部での経験は、全体と細部を同時に捉えるということ、つまり鳥の目と虫の目をもつ感覚の訓練でもありました。