ゲーム「リトルナイトメア2」を音楽分析で考察してみる
リトルナイトメア2とはバンダイナムコより発売されたダークファンタジーアドベンチャーゲームである。「リトルナイトメア」の続編であり、子供が見る悪夢をそのまま具現化したかのような、可愛らしさと不気味さが高度に混じった世界観が引き継がれている。
前作に引き続き本作も、文章の全くない語り口のおかげか非常に意味深なストーリーになっているため、この作品の正体について様々な考察がなされている。
筆者はここであえて、音楽の観点から何か読み解けるものがないか考察してみる。
記事の性質上、リトルナイトメアの「1」と「2」の完全なネタバレなのでご注意ください。
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①シックスのテーマ
オルゴールで嫌というほど聞くことになるであろうテーマ。メニュー画面にも使用される。
実はシックスのテーマはリトルナイトメアの「1」と「2」で若干異なっている。上記「2」のシックスのテーマはとても「マトモ」であり、きちんと一つのメロディとしてまとまっている。理論的に言えば、古典的な調性システムを用いている。
これに比べて「1」のシックスのテーマは不気味な不安定なコードで奏される。理論的に言うならば古典的な調性システムとは言いがたく、いうなれば転調を常に繰り返した不安定な和声進行である。
またテーマの使われ方も対象的である。
「リトルナイトメア2」においてはシックスのメインテーマとして堂々と使用されているが、
「リトルナイトメア(1)」では、空腹のシーンで徐々にこのメインテーマが現れるしかけになっている。つまりどちらかというと謎めいたシックスの本性(邪悪さ)を象徴するテーマとして用いられている。
さらに「リトルナイトメア(1)」のシックスのテーマと述べたが、実は「リトルナイトメア2」内でも「1」の歪んだシックスのテーマが登場する。それはラスボス戦と、壊れて歪んだオルゴールから鳴らされる。
いずれにせよ、「1」のシックスのテーマは邪悪さそのものであるが、「2」のシックスのテーマはきちんとしている。しかしそれはオルゴールのテーマだからきちんとしてると言える。
思うに、作中のオルゴールの扱いを見るに、「2」のシックスのテーマは、「支配されたシックス」を表すのではないかと思う。シックスは本来飢えに乾き最終的に人の魂を次々と奪う怪物なのだが、「2」ではとても無力な女の子だ。しかし彼女を支配するオルゴールが破壊され歪んだ時に、彼女の本性は歪み、そして発揮されるようになった、という考察をすることができよう。
余談だが、「1」のラスボスであるレディの鼻歌はシックスのテーマにとてもよく似ている。音程も6度(シックス)である。
②モノのテーマ
モノは終盤で明らかになるようにシンマンだったため、彼に関するメロディはモノのメロディといえる。(このメロディはシンマン戦で常に流れ続けている。)
これはけっしてこじつけではなく、学校でモノがシックスを助けてほんわかするシーンでも極めて類似したメロディが流れるのである。
なおこのシーンではモノのテーマは出るが、シックスのテーマは登場しない。つまりモノが一方的にロマンに浸ってる、というかなり皮肉めいた解釈が音楽から導き出すことができる。
なお、モノのテーマは、最初にテレビの中に侵入した直後にも流れる。この辺終盤に向けてモノの正体を明かしていくような音楽構成は前述した「1」のシックスのテーマに似たものを感じる。
また、「2」のシックスのテーマはオルゴールが使われている。そして、先ほど掲載したエンディングのモノのテーマ(モノ=シンマンとわかるシーン)はオルゴールで奏されるため、オルゴールはループの象徴として用いられているということがわかる。
なお、モノのテーマとシックスのテーマは実は似た音程である。
いずれもモチーフの冒頭が「ド シ ラ ソ♯」の減4度の関係にあるからだ。
これは単純にデザイン面でダークファンタジーっぽい音程だから、というのは無論あるだろうが、むしろそれゆえに、モノがシックスに親近感を抱く間接的な要因が、音楽によって仄めかされているのではないかと思うのである。
同じ邪悪さを秘めている、と・・・。