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風の余韻

まだ身体がなかなか本調子にならない中
昨日は久しぶりのバレエのお稽古に行って来ました
全身が筋肉痛
やはりバレエできちんと筋肉を使っていないと
わたしの身体はたちまちわたしのものではなくなってしまうなぁと切実


1週間前の今頃
あのテントの中でたくさんの方に作品を手に取っていただいていたのでした


これは前日の設営の時
「刺繍」と書かれたテント
ここに向かって春から舟を漕いできました


前日の午後、飛行機を降りてホテルに荷物を置いて会場のあるニッケコルトンプラザに向かいました

バスを降りて目に入って来たのは


壁に大きく飾られたメインビジュアル
写真を撮りながら始まる前からひとり胸が熱くなったのでした
あぁ、本当に来たんだ
始まるんだ


この日は夕方遅くまで風人さんたちに手伝ってもらいながらひとりで設営して、神社にお参りしてホテルへ


ここに立つのは榎という木で
私が大好きな葉っぱ
いつも必ず拾うもの

真っ赤な一枚をお守りに拾いました



帰り際、中ではまだ作業中の風人さんたちの姿が



今回私が出展させていただいたのは
お庭の入り口から左側、ひとつ目の花壇の前でした
薄暗い中後ろに並ぶお庭のようす


1週間も経っているのは、ここに、何をどんなふうに書こうか迷っていたから

いろいろな人に送った御礼のメッセージや言葉のやりとりや、振り返って交わす会話の中で
自分の心の中にあるもの、気づいたこと、
忘れたくないもの、嬉しくて涙ぐんだこと
たくさんの心模様があって
どれをどんな順序で並べたらよいかまだわからないのでした

うまくお伝えできるかわからないけれど
ここに来てくれる人たちはいつものわたしの思いのままに綴るnoteを、そうとわかっていて懲りずに読んでくださる方と思って、今回も長々と思うままに書こうと思います


会場でお会いできたら
「noteよんでます」とお伝えくださいねと
この間書いておきました

すると、会場で「note読んでます」と
作家仲間の方がおっしゃってくださったり
お客さまがとても熱心にお読みくださって
書いていたことと作品を丁寧に照らし合わせてご覧くださったりしてとても嬉しかったです

では、風の余韻

長くなりますがお読みください


初日は薄曇り
熱くもなく寒くもなく、風もなく
薄手のブラウスでちょうどいい
心地よいお天気でした



とはいえこの日は写真がほとんどないほど
一日中ずっと
テントにはたくさんのお客さまと
知り合いの作家さんや友人が来てくれていました


嬉しかったことばかり
思い出すどの場面も宝物

わたしの出展を楽しみに心待ちにしてくださる方のいることのありがたいことといったら


6年前
初めての出展が決まった時、わたしは札幌の百貨店で展示の最中でした
朝、ディレクターの稲垣さんからのお電話で
秋の出展が叶ったことを知り
震える手で運転しながら展示に向かったのを覚えています
売り場に着いてはじめにいらしたお客さまが
偶然にも千葉の方とおっしゃって
わたし、秋に千葉で野外展示に出ることになってとお伝えすると、なんと驚いたことにその方はこのニッケコルトンプラザのすぐ近くにお住まいとのこと

何という偶然(必然なのかな)
その方は秋にも必ず行きますねとおっしゃって
あの6年前のテントにちゃんと来てくださっていました
物静かな方で、テントの中をゆっくりと何度も眺めてお気に入りを手にしてわたしに「あの時の」とおっしゃって

本当に嬉しかった

そして、6年経ってこの初日にまた来てくださっていました

やっぱり静かに、気に入ってくださったものをいくつか手にして「あの時の」とおっしゃって
さらに「運命的でしたよね」って
ほんとうに、こんなことあるんだ、なできごとでした

思い出してもなんだか涙がじんわり出てしまいます

ゆっくりお話しできなかったことがとても心残りです
またどこかでお会いできたらいいなぁと思っています
「あの時の」って、きっとおっしゃってくださるといいなぁ



今回最後に刺繍したエプロン「彩り」を
ぜひにとおっしゃるお客さまが来てくださいました

以前から作品をとても気に入ってくださっていて
今回もkohanaの大きなワンショルダーをお持ちになってくださいました

丁寧に、時間をかけてみてくださる

どの方もそうだけど、これほど全部の作品が並ぶことは札幌以外では無いことなので
刺繍も鞄のかたちも、ゆっくりと手に取って眺めてくださる

わたしにとってはいちばんの嬉しいこと

この生地を、どんなかたちのものにしよう
何をモチーフに、そしてどんな糸の色で刺繍しよう

ほんとうに、ひとつひとつ考えて作りました
手を抜かず、選んで作ったもの

彩りの刺繍はエプロンの紐の長さをちょっと調節して、後日その方のお手元に届く予定です

・*・*・*・*・*・*・*・*

ずっと隙間なくお客さまが続く初日のテントの中、午前のうちにお選びくださった方が
そのあと何度も繰り返し来てくださっていました

それもとても嬉しいことで、そんな方には「おかえりなさい」とお声かけをしてまたゆっくりと
ごらんいただいていたのだけど、そんな心もちを静かに聞かせてくださる方がいらっしゃって
嬉しさのあまりこれまた売り場でじんわりしてしまったのでした

毎年工房からの風に来られていて、いつもははじめに何周かして気に入った作家さんのところでお買い物をされるのだそう
それが今回は最初に来られて他を回る前にここで選んでくださったとのこと
そして、会場をお楽しみくださってその後も何度も戻って来ては嬉しそうに恥ずかしそうに「見たくてまた来ました」とおっしゃるのです

不思議な感覚
こんなふうに、誰かが何度も眺めてくれるなんて
わたしの好きを、いいよねと言ってくれる人がいるなんて

・*・*・*・*・*・*・*・*

中学生という女の子がふたり
「刺繍!かわいい!」と走ってきました
きゃっきゃっと嬉しそうに手に取り眺めてから
会場の奥にきらきらと消えて行きました
しばらくして戻って来て
巾着のショルダーを眺めて
「来年は買えるかな。来年きますか?」おっしゃいました
来年はアルバイトする予定なのかな

残念ながら来年は出展できないのだけど
いつか彼女たちがどこかで手にとってくれることがあったらとても嬉しい

若い感性に、この並んだテントからどんなものが伝わっているのだろう
大人が真剣を楽しんだ空気が伝わっているでしょうか
人の手が生み出すものの味わいや手触りを感じてくれているだろうか

歓声をあげながら刺繍を眺めてくれる彼女たちを見て、今回サポートしてくれていた娘が涙が出そうだと言っていました

世界はなんだか不条理なことも多くて、流れるニュースに言葉を失くしてしまうけれど、この若い感性が美しいものをえらぶ豊かさを守りたいなぁと思いました
もしかしたらわたしたちものつくりが真剣に作ることには、そんなことの役にたてる何かがあるのかもしれないと、弾むように帰ってゆくおふたりを見送りながら思いました

・*・*・*・*・*・*・*・*

noteを、ずっと見てくださっていて
お会いするのを楽しみにしてくださっていた方がエプロンやその他にもあれこれとお選びくださっていました
百草の庭さんでお選びくださった鞄を持って
たくさん並ぶ作品たちを、ほんとうに長い時間ゆっくりと見てくださって

カードの決済のときに開いたわたしの携帯の待ち受けに一瞬映るドロップの写真をみて
「ドロちゃん」とおっしゃってくださって驚きました

出発前にドロに「一緒にきてね」と話してありました
頑張ってくるからね、一緒にいてね

その方の言葉に、あぁ、ドロはやっぱりちゃんとそばにいるんだと改めて思いました
ドロは、わたしにこの道を歩かせてくれた存在のひとつ
そんなつもりはまったく無いだろうけれど 笑
ドロのおかげで今のこの嬉しい時間があることは間違いないのです


・*・*・*・*・*・*・*・*

他にもたくさんたくさん嬉しい出会いがありました

懐かしい、以前の作品をお持ちくださる方もいて
それはそれは長く気に入ってそばにいたのだとはっきりわかるようすでした
今のわたしから見ればまだ拙い刺繍だったと少し恥ずかしくなるけれど、大切にしていただいている、だけどしっかり使っていただいているとわかる、その鞄は堂々として凛々しくもありました

黄色の花びらの揺れる野菊

鞄は角から少し擦れてきているけれど、刺繍はなんにもなっていないの、そう言って見せてくださいました

嬉しいなぁと思うと同時に
これまでのことがここにちゃんとつながっているのを感じました
わたしが作っているだけじゃここに辿り着かない

作るわたしを導いて、支えて、背中を押してくれた人たちがいて、今この人たちの前でわたしは作品と一緒に立っている
そして今立っているわたしも、きっと未来のわたしにつながっていく


初めて出展した6年前、誰もわたしを知らなかった
一本どりで刺繍していることも、ひとりですべて作っていることもここに来るほとんどの人は知らずに出会った
そこから折りに触れて作品を見ていただく機会を経て、遠くからきたわたしを「ようこそ」と言って待っていてくれた


「ようこそ」

それはミーティングのはじめに一枚の紙に書かれた言葉でした

今回終わってから胸に残る言葉はその「ようこそ」でした


工房からの風には風人さんといって
過去に出展経験のある作家さんの中から手を挙げてサポートする側を担ってくださる方たちがいます
惜しみなく、裏方となり、準備からおしまいまでどんなことも全力で支えてくれます

6年前はそのことがぼんやりとしかわかっておらず、ただただすごいなぁと思っていました
人のために、ご自身の製作の手を止めてこれだけの下支えをどうしてできるだろう
わたしにはきっとできない
きれいごとを本当にやっている
そんなことを思いながら帰ってきたのを覚えています

あれからわたしには仲間ができました

風で出会った作家さんたち
遠くてもInstagramを通じて互いの近況をなんとなく知っていたり、がんばっている様子をみて自分もまたがんばろうと思える、仲間です

中でもデンマーク組はちょっと特別
久しぶりの再会は本当に嬉しかった
互いに、今も時々あの旅の写真を眺めると話してあの旅がみんなの中で同じように色褪せることなく大切なものになっているのが、再会して改めてわかりました

作り手の仲間たち、そして風人さんたち
みんなが「ようこそ」といってくれている気がしました


テントの中にいて、ふと顔を上げるとお庭の中に白い屋根が並んでいて
そのすべてに、ここに向かって漕ぎ続けた見えないオールが立てかけてあるようでした
自分で舵をきり、作っては眠り、また作る
そんな日々を重ねてここにいる

風人さんたちにはきっとそのオールが見えている
真剣にがんばらないとここに辿り着かないことを知っているから、今日この日に最高の2日間を!と全力で支える
困った時にはすぐに動いて、不安な時には「大丈夫、落ち着いて」と隣にいてくれる
なんでも無い話を笑って交わす
忙しいなかでも作品や接客の様子を遠巻きにちゃんと見ていてくれる

だからかぁと思いました

この、作り手が作る循環の輪の中にいたいなぁとしみじみ思いました
うまく言葉にするのは難しいけれど
わたしがいつか惜しみなく誰かの助けになることができたらと思っています




風人さんのほかにここには庭人さんという方たちがいらっしゃいます

一年中、ここのお庭を豊かに育み
それを楽しみながら工房からの風の大きな支えとなってくださっています

風の日、庭人さんたちはお庭の植物たちを丁寧に摘んでお水に入れて作家さんたちのテントに飾るためにご用意してくれていました

写真はメインビジュアルの絵を描かれている大野八生さんが「ぬいとりのイメージ」とおっしゃって束ねてくださったスワッグ
「これも、これも、これも!ぬいとりに!」

まさに、わたしの刺繍のメンバーそのもの
しかもよもぎは北海道のものと違って小さくてかわいい
ちいさなつぶや、細い穂が並んでいて
遠くからわたしの作品を八生さんがちゃんと見てくださっていたこともとても嬉しかったです

いちにちの中に、こんなにも嬉しいがたくさんあって、総じてまだ心の中でそれぞれの居場所が定まらないほど溢れたままで書いています


ほんとに長くなりすぎていて、読んでくださる方に申し訳ないので今日はここまで
一つにまとめようとするから無理がある
だってこんなにも溢れているのに



八生さんの妹さん、風人の大野七実さん(陶器の作家さん)が撮影してくれた浮かれるわたしを載せて続きはまた明日書くことにします

会場のようすや、風のあとに巡った場所
最後に起きた信じられないできごとなど
よろしければまたお読みください

長い文章にお付き合いくださってありがとうございました

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