MarvelSNAPランク戦とマッチングシステム再考

MarvelSNAPの新シーズン「デイズ・オブ・フューチャーパスト」が始まった。そのタイミングでランク戦システムに変更が入った。さらに、今後ランク戦とマッチングシステムに変更が計画されているらしい。

そこでこの機会にMarvelSNAPのランク戦とマッチングシステムの現状と課題を再確認してみたい。

現状のランク戦仕様

まずは現状のランク戦の仕様から、ランク戦はランク1のルーキーからスタートし、ランク5のエージェント、ランク10でアイアン、そこからは10ランク刻みでtierと呼ばれるランクグレードが上がり、そのランクへの到達報酬がもらえる。最高tierはランク100のインフィニティで、そこから先もランクの数値はいくらでも上がっていくが、ランク到達報酬がないためランク100到達が全プレイヤーのひとまずの目標と言える。

ランク戦は1か月ごとのシーズンで区切られており、各シーズンが終わるとランクはシーズン終了時のランクから3tier下がって再スタートとなる。インフィニティに到達していた(ランク100以上)の場合は、ランク70のヴィブラニウムからスタート、ランク85でシーズン終了した場合は3tier下がってランク50のプラチナからスタートという具合だ。

ランクを1つ上げるには、コズミックキューブと呼ばれるポイントを10集める必要がある。1戦で得られるキューブは最低で1、最大で8なので、ランクを上げていくのは、かなり大変だ。1つのシーズン期間は概ね1か月なので、シーズン終了時にインフィニティからランク70まで下がった場合、単純計算だと1日1ランク(10キューブ)ずつくらいのペースで上げていく必要がある。

ただ追加で新しいtierに到達したときにボーナスキューブが貰える。これが現シーズンで変更された点で、前シーズンまではこのボーナスキューブが10だったのが、50になった。わかりやすく例を出すと、オメガ(ランク80)に初めて到達したとき、前シーズンでは10キューブでランク81になったのだが、現シーズンからランク85になるようになった。これはランク戦で1か月のシーズン期間中にインフィニティまで到達するのが、プレイ時間を十分に取ることができないプレイヤーなどにとって相当な負担だったため、これを楽にするためと思われる。

ランク戦とマッチングシステムの課題

さて、そんなランク戦システムであるが、正直に言って現状、様々な課題があると言わざるを得ない。今後への期待も込めてこの課題を確認していきたい。

格差マッチング

低ランク帯やカード資産が不十分なプレイヤーにとっての課題は、格差マッチングだ。↓ツイートはランク40で前シーズンのインフィニティ到達報酬のカードバックを付けたプレイヤーと何度も対戦していると報告している。30ランク上のプレイヤーとマッチングしているわけだ。

このようなことが起きてしまう理由の1つは内部レートに基づくマッチングと考えられる。インフィニティ到達後の特殊仕様としてランク100以下にはランクが下がらなくなるという恩恵がある。そのためインフィニティ到達後に負け続けると内部レートが大きく下がり、実ランクと内部レートがずれていく。これを半ば悪用するような形でわざとインフィニティ到達後に内部レートを下げておくことで、次のシーズン到達後に格下のプレイヤーとマッチングしやすくなり、楽にランク上げができるという方法があるという。

ここまで極端な話ではなくても、インフィニティ到達者とオメガ帯くらいのマッチングは常態化しており、格差マッチングの問題はかなり深刻に生じている。インフィニティ到達後はランクが100以下には落ちないので、趣味的なデッキを使いやすくなり内部レートと実ランクの乖離が生じやすくなることも一因だろう。この問題は何かしらの対応が必要と考える。

botマッチング

ランク戦においてbotとマッチングすることも色々な問題を内包している。botとのマッチングがどういう条件でおきるかは明確にはわからない。また、botの運用方法を含めたマッチングアルゴリズムを頻繁に変えている節もある。例えば前々シーズンにおいてはオメガ帯とギャラクシー帯では、botとのマッチングは皆無と言える状況であった。しかし、前シーズンではオメガ帯、ギャラクシー帯でも一定程度botとのマッチングがなされていた。そのため、前シーズンはかなりランクが上げやすい傾向が見られた。

さて、それではbotとのマッチングの問題を考えていこう。

1.戦績報告の価値を損なう
bot戦の1つ目の問題は戦績の価値を損なってしまうことだ。Twitterなどのコミュニケーションでは、早期インフィニティ到達報告、高勝率デッキ紹介、短時間でのキューブ獲得実績などが行われている。ただ、botが存在することによって、これらの戦績の比較は意味をなさない。
「1時間で50キューブ荒稼ぎしました」
「1日でインフィニティ到達しました」
確かにすごい。でも、botとどれだけ当たっていたかで話は全然違ってくる。なんせインフィニティ到達までに64.7%もbotと当たったなんて報告もあるほどなのだ。この方をけなしているわけではない。これだけbotと当たるのはおそらく内部レートが極端に高いからで、この方が抜きんでて強いことの証明だろう。ただ、botと当たらずに同じスピードでランク上げられるかというと、それは全然違う話ということだ。

2.対人戦の価値を損なう
bot戦の2つ目の大きな問題は、せっかく対人戦の面白いゲームなのに対人戦の価値を損なっている点だ。対人戦は難しい。勝つのは難しいし、大きく勝つことはもっと難しい。だから、勝つととても嬉しい・・・のだが、bot戦が水をさす。
bot戦は、対人戦と違って勝つのはとても簡単だ。また少しコツがあるが大きく勝てる(4キューブ、8キューブ稼げる)可能性も、対人戦よりはるかに高い。だから、botとある程度マッチするのであれば、対人戦は大負けしないようにちょぼちょぼ戦い、botから荒稼ぎした方がはるかに効率的だ。楽して稼げると真面目に働くのが馬鹿らしくなってしまう。
これは報酬設計の問題で、本来は難しい対人戦で勝った方が報酬が大きいべきなのに、簡単なbot戦の方が報酬が大きくなってしまっている。これはかなり大きい問題だと思う。

3.ラダー配信の魅力を損なう
bot戦の問題の3つ目は、少し変わった切り口だが極めて深刻な問題だと最近感じているものだ。それはbot戦がラダー配信の魅力を損なってしまっているということだ。
Marvel SNAPは本来配信向きのゲームだと思う。SNAPを含めた駆け引きは熱く、ロケーションなどのRNG要素も相まって、配信者の魅力を引き出して視聴者を惹きつけられるコンテンツになり得ると思う。実際、自分自身もリリース後は自分もプレイしながら、配信者のラダー配信をちょくちょく観ていた。しかし、今はほとんど観ないし、配信そのものも減ってしまっているんじゃないだろうか。その理由は色々あるだろうが、自分が観なくなった大きな理由はbot戦だ。
ラダー配信が面白いのは貴重なキューブを巡る手に汗握る駆け引きを観ることなのであって、bot相手にキューブを稼ぐ作業を観ても面白くもなんともない。botが出てくると配信は盛り下がり、配信者にとってbot狩りの作業を面白く見せるのは至難と言わざるを得ない。
ゲームプレイの配信が面白いということは、そのコンテンツの魅力を伝え裾野を拡げていく上で地味ながら重要な要素であり、現状はもったいないの一言だ。

インフィニティ到達後

現状のランク戦とマッチングシステムの3つ目の課題は、最高tierのインフィニティ到達後だ。インフィニティに到達してしまうと、そこから先は正直ランクの数字を増やす以外に本当にすることがない。ランキングシステム(リーダーボード)のようなものもなく、報酬もない。しかも、インフィニティランクで勝ち続けて、内部レート(MMR)が高くなると近い内部レートのプレーヤーが少なくなるためか、bot戦の比率が高くなるようだ。結果、botを狩って数字を上げるという作業ゲームになってしまう。ランク何百と上げている海外のプレーヤーもいるが、よくモチベーションが維持できるなと思う。それだけこのゲームを好きでいてくれるということだから、そういう人にきちんと報いるようなシステムを用意してあげて欲しい。

まとめ

さて、色々と問題を挙げてきたが、私自身じゃあどうすればいい?と言われると難しい。個々の問題は複雑に絡みあっており、1つの問題に手を入れると他の問題がより深刻になる可能性も十分にある。1例を挙げるとbotマッチングの問題を解決するために、botをなくしてしまったら、格差マッチングはより深刻になる可能性が高い。botをなくし、格差マッチングもなくそうと思えば、対戦相手を探すのに長時間かかるようになってしまうだろう。実際、ハースストーンというDCGでは、上位プレーヤーはキューを入れてからマッチングに数分を要することもざらにある。対戦時間が短く、サクサクと遊べるのが魅力であるMarvel SNAPでは、こんなことになれば致命的と言える。海外プレーヤーもランク戦とマッチングシステムの課題について闊達な議論を行っている。一例が↓ツイートだ。

  • インフィニティ到達後に内部レートに基づくランキング(リーダーボード)を作る

  • インフィニティ到達後はbotマッチングを劇的に減らす

  • ランク戦で30,50,70ランクにそれ以上落ちない壁を作る

  • 最終ランクではなく最大到達ランクに基づく報酬

  • シーズン終了後3tierではなく20ランク落とす

概ね妥当な提案に見える。しかし、これをやれば先述したように上位プレーヤーはマッチングに長時間かかるようになってしまうだろう。やはり問題は簡単ではない。ただ、それは開発側も理解していると思うし、その上で変更を加えようということみたいなので、楽しみに待ちたいと思う。

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