[Marvel SNAP]強いデッキとは何かを考える

Marvel SNAPにおける強いデッキとは、どんなものだろうか?シンプルな問いながら意外に定義が難しい。それは、Marvel SNAPに特有のSNAPと撤退によるところが大きい。強いデッキは相手に撤退される確率が高く、大勝ちするのが難しかったり、ブン回る確率は低いが回った時にSNAPを絡めて大勝ちできる可能性が高いデッキなども存在するからだ。そのため、Marvel SNAPにおいては、デッキの勝率だけでなく、キューブの獲得効率などが指標として用いられている。今回は、これまで高Tierを獲得してきたデッキなどと関連づけながら強いデッキの定義を考えてみたい。

強さの指標

Marvel SNAPのデッキの強さが単一の指標で測れないのは明らかだ。そこでデッキの特徴を分析する指標を考えてみた。今回考えたのは以下の項目だ。

  • 制圧力

  • 妨害耐性

  • カバー力(事故率の低さ)

  • 妨害力・対応力

  • 予見困難性

  • (初見殺し力)

それぞれの項目の意味をもう少し詳しく説明する

制圧力

制圧力は、そのデッキがある程度理想とする動きができたときに勝ち切る力だ。お互いに回った時にどっちのデッキが強いかで制圧力を評価できる。例としてシュリデッキで、シュリ→レッドスカル→タスクマスター+ゼロと動けた場合に、上から押し切れるデッキはほとんどないだろう。シュリデッキは制圧力の高いデッキと言える。

妨害耐性

妨害耐性は、アンチカード、メタカードに対する耐性の高さを示す指標。いかに制圧力の高いデッキであっても、シャン・チーなどのアンチカードで簡単に逆転負けしてしまうデッキは強いとは言えない。先ほどのシュリデッキを例にとると、序盤にアーマーやコスモを並べておくことで、相手の妨害に対する耐性も高いデッキになっていることがわかる。だからシュリデッキは強いのだ。

カバー力(事故率の低さ)

カバー力は、そのデッキが理想とする動きをできない場合に、どれだけ戦えるデッキになっているかを示す指標と定義する。またそもそも理想とする動きができない確率が低ければ良いので、事故率が低い場合もカバー力が高い場合に含めることとする。まとめると、サブプランが豊富で、なおかつ十分戦えるかどうか、デッキの理想的な動きの再現性が高いかどうかをこの項目で評価する。例としてはギャラクタスデッキを挙げたい。ギャラクタスデッキでギャラクタスが引けない場合に勝てるかというと、多くのギャラクタスデッキは正直厳しいだろう。サブプランが乏しいギャラクタスデッキはカバー力が低いと言える。

妨害力・対応力

妨害力・対応力は、相手のデッキの動きを妨害したり、相手の動きに対応して勝つ能力がどの程度あるかを示す指標だ。シャン・チー、コスモ、キルモンガー、エンチャントレスなどのアンチカード、メタカードを多く採用したデッキはこの指標が高くなる。コントロールデッキなどは、かなりこの項目に特化したデッキと言える。

予見困難性

予見困難性は、相手から見たときにデッキがどの程度回っているかどうか、勝てそうかどうかを判断することが、どのくらい難しいかの指標だ。理想は6ターン目の状況を見ても、勝てるかどうかの予見が相手から見て難しいことで、例えばサノスロックジョーデッキで、6ターン目にもロックジョーに複数枚のストーンを投入できる場合などだ。早い段階で理想的な動きができているか見破られやすいデッキでは、それよりも早くSNAPをすることが2以上のキューブを稼ぐには必要で、アベレージを高く保つには厳しい条件となる。この例もギャラクタスが適切だろう。ギャラクタスのロケーション破壊が成功した時点で予見されるのはもちろん、その前のウェーブが出た段階ですら予見可能性が十分にある。

(初見殺し力)

初見殺し力は厳密にはデッキの強さではないと考えているが、概念としては重要なので項目として挙げておく。初見殺し力は、相手がそのデッキのことを知らない場合に、4キューブや8キューブを獲得できる可能性の高さを示す指標だ。予見困難性に少し似た概念であるが、初見殺し力は相手にネタバレしていないときのみ有効なもの。例えば相手が4ターン目にムーンガールで手札をコピーし、5ターン目をパスした場合、6ターン目にシーハルクが2枚出てくる可能性が高いと予見できる。しかし、ムーンガールとシーハルクのコンボを知らなければ、4キューブや8キューブを失ってしまう可能性は高い。最初に述べた初見殺し力がデッキの強さではない理由は、その強さが期間限定だからだ。そのデッキの勝ちパターンが知れ渡れば、神通力は失われる。厄介なのは初見殺し力の高さをデッキの強さと勘違いしやすいことだ。twitterなどで8キューブをガンガン稼げるデッキと紹介されるデッキにこのタイプが多い。最近だと、↓のようなデッキはまさに代表的だ。

5ターン目にマジックを出し、6ターン目にサイロックとウェーブを出し、7ターン目にモードックとヘラを出すことで、一気に盤面展開して勝つデッキだ。知らなければ最終ターンにどんなことが起きるかわからずに最終ターンに8キューブ失う可能性は確かに高い。しかし、デッキの存在が知れ渡った時点で、5tマジック、6tサイロック+ウェーブの時点で最悪ケースを想定する。5枚のカードが必要なこのコンボの成功率が決して高くないことを考えると、決してトータルで強いデッキになりえないと考える。初見殺し力をデッキの強さと勘違いしないようにしたい。

主要デッキの分析

それではこれらの指標で、主要デッキを分析してみたい。デッキの強さを定義する上で、どの項目が重要かを判断したいので、ナーフされたデッキも最盛期の強さで分析を行う。数値は1(低)~3(高)の3段階で、データに基づくものではなく、あくまで主観的な評価ということでご容赦願いたい。

サノスロックジョー

サノスロックジョーデッキは、ロックジョーにストーンを投入し、高コストカードを早いターンから着地させることで、圧倒的な制圧力を誇る。また、ロックジョーあるいはタイムストーンを絡めることで4ターン目にリーチで相手の手札能力を封印できることが少なくない。リーチによる手札能力の封印は、相手の妨害カードの能力を封じることと、相手のデッキの理想的な動きの妨害を同時に行うことができる。シャン・チー、キルモンガーやレーンコントロールの妨害を受けやすいので妨害耐性は中とするが、リーチ、シャン・チーとストーンを含め妨害力・対応力は高い。低コストカードがストーン以外に少ないため、ドローが回らない事故が一定頻度で起きることからカバー力は中、予見困難性はロックジョーと動きの多様性から高とする。

シュリゼロ

シュリゼロは、シュリからレッドスカル・シーハルクなどの動きで2レーンを確保する制圧力はやはり圧倒的だ。またアーマーとコスモにより、天敵のシャン・チーから守ることができて妨害耐性も高い。エアロも怖いが、エアロのナーフでこちらも追い風。シュリが出せない場合、デッキパワーが落ちるが、シーハルク・エアロやゼロ→レッドスカルなどバックアッププランもないわけではないので、カバー力は中とする。盤面制圧に特化したデッキなので妨害力・対応力は低。予見困難性も4~5ターン目に勝ち目があるかどうかほぼわかってしまうために低とする。

BAERO

BAEROは、5ターン目のウェーブから、6ターン目に自分だけがデス・シーハルク+6コストの動きが取れる。サノスロックジョーやシュリゼロに比べると制圧力は劣るが十分に強い動き。大きな動きが最終ターンに固まっているため、妨害耐性も高いと言える。また特定カードへの過度な依存がないためカバー力も高い。ヨンヅ・シャン・チー・キルモンガー・ウェーブと相手を妨害する動きも豊富。6ターン目開始時点で、相手の動きの最大値は予測できるので予見困難性は高いとは言えないが、6コスト枠を環境に合わせてマグニートーやドクタードゥーム、ナーフ以前であればリーダーと自由に変更できるほか、エアロも含めて動きのバリエーションはあるので中とする。

ギャラクタス

ギャラクタスデッキは、変則的ではあるがギャラクタス着地からのヌル・デスによる制圧力は十分に高いと表現して良いだろう。しかし、非常に採用率の高いエアロをはじめ妨害手段が複数あるため、妨害耐性は低い。またバックアッププランもほぼないため、カバー力も低い。相手の勝ち筋を潰すカードとしてシャン・チーに加えてドクターオクトパスが採用されることが多く、これが功を奏するケースが少なくないことから妨害力を中とする。予見困難性は極めて低いため、どうしても手の内がバレたうえで戦うことを強いられてしまう。

セラサーファー

全盛期のセラサーファーは、ブルードを含めた3コスト大量展開から一気に+3バフをばら撒くことができ、サノスロックジョーやシュリゼロには劣るものの制圧力のあるデッキだった(今は低に近いだろう)。3コストを並べてバフする動きには、シャン・チーやキルモンガーなど、ほとんどのアンチカードが機能しないため妨害耐性も高い。3コストカードを多く採用している関係で、大事故は起きにくいが、シルバーサーファーを引けるか引けないかでデッキの出力が大きく変わるためカバー力は中とする。妨害力・対応力は、3コストカードに優秀なアンチカードが多いため高く、最終ターンも動きのバリエーションが多いため予見困難性も高い。

セラコントロール

セラコントロールは、一応低~中コストのカードを展開して、アンジェラ・ビショップを育てつつノヴァでバフするという動きこそあるものの、制圧力は他の高tierデッキと比べて明らかに低い(妨害耐性は高いが)。セラが出せるかどうかにより柔軟性は変わるものの事故率は低い。妨害力・対応力はコントロールデッキということで極めて高い。むしろ、こちらがメインの勝ち筋と言ってもいいかもしれない。セラによって、最終ターンに大きく動けるため予見困難性も低くはないが、デッキパワーの最大値が低いため、どう動かれても負けはないという状況が発生してしまう。ランクとしては中に設定する。

まとめ

提案したデッキの強さの指標をもとに、主要デッキのいくつかを分析した。個人的な分析結果は下記のような感じ

  • 制圧力は、おそらく最重要と言ってもよい指標。制圧力が低い場合はいくら他の指標が高くても、環境の支配は難しい。

  • 制圧力は重要であるが、一定以上の妨害耐性を伴っていることが重要。簡単に妨害・逆転されるデッキは制圧力が高くてもtier2以下に留まる(ギャラクタスなど)。

  • カバー力は低い(事故率が高い)と問題だが、回った時にきっちり勝ち切れるデッキなら、一定程度の事故は許容できる(制圧力の方が重要)

  • 妨害力・対応力はあるに越したことはないが必須ではない(制圧力の方が重要)。BAEROなど無理なくアンチカードを組み込めるデッキはtierが1つ上がるイメージ。

  • 予見困難性は、制圧力が高いデッキが持っていると最強(サノスロックジョーなど)。制圧力がそれほど高くない場合は、動きの振れ幅が大きく予見が困難でも上から踏みつぶされてしまう。

  • 初見殺し力は、デッキの本質的な強さではないので勘違いしないように。あなたが初見殺しデッキを知った時点で、環境ではネタバレしている可能性が高い。

確かに撤退やSNAP判断も重要だけど、トップtierのデッキを分析していると、結局のところ「この動きしたら返せないでしょ」という動きがあって、その動きができる確度が高いデッキが強いと感じる。現状だとシュリゼロあたりか。サンスポット→アーマー→コスモ→シュリ→レッドスカル→タスクマスター+ゼロ(ティタニア)と動いた場合に勝てるデッキは、かなり限られるだろう。

これは、カードゲーム開発で難しいところでもあると思う。作り手は、決まった動きをすれば脳死で勝てるデッキが強いゲームなんて、もちろん作りたくないはず。だから本当は、駆け引きや状況に合わせた動き方が大事なデッキが強いデッキであって欲しい。しかし、そういうデッキは安定した勝率が出しにくいので、実際に強いデッキは相手の動きに依存しないで決まった動きをすれば勝てるデッキになってしまう。現状を分析する限り、Marvel SNAPもこの呪縛から抜け出せてはいないように思う。

最後に1つ注意点。今回評価は基本的にランク戦を想定したもので、大会などのバトルモードでは少し話が変わる。基本的なところは、今回の議論が通用すると思うが、初見殺し力や予見困難性の価値が上がるイメージを持っている。環境で支配的なデッキから1、2枚相手差し替えて相手の意表を突けるデッキに仕上げるのが強いのではないだろうか。ただし、このあたりは経験も実績も足りないのであくまで1つの意見ということで。


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