たのしいぞ郷土資料館 「練馬区立 石神井公園ふるさと文化館」
杉並区、中野区ときた。武蔵野三兄弟はまとめてめぐっておこうじゃないの。次は練馬区だ。「練馬区立 石神井公園ふるさと文化館」へ行ってきました。
石神井公園に隣接する郷土資料館。石神井公園がすごくすごくすごーく、すてきな公園だった。石神井公園は練馬のプリトヴィツェや!
1.施設概要
・施設名称 練馬区立 石神井公園ふるさと文化館
・営業時間 午前9時 ~ 午後6時
・入館料 無料 ※特別展が有料の場合あり
・休館日 月曜日
・写真撮影 撮影&SNS OKの表示、一部展示品がNG
指定管理者制度を適用しており練馬区立文化振興協会が事業を展開している。
2.まずはホームページで予習
石神井公園ふるさと文化館がどんな郷土資料館面(づら)をしているのか。まずはホームページで予習していこう。
これが指定管理者というやつか。ちゃんとしたサイトにまずびっくりした。
郷土資料館のサイトというのは基本しょぼい。先日の中野区なんてのが最たるもので、現地にある紙パンフは素敵なデザインをしているのにホームページは区役所サイトの間借りで味気ないったらない。中野区は(おそらく)業務委託をとっている。決裁権は(おそらく)区。紙媒体の決裁はおりるけれどホームページはNG、いわゆるお役所の紙文化というやつではないかと踏んでいる。
サイトにだってもう少し色気(お金)を出せばいいのになんて思う反面、実際のファビュラスな施設とのギャップが楽しかったりもする。ホームページのしょぼさもまた郷土資料館の魅力のうち。そういうことだ。
練馬区立 石神井公園ふるさと文化館の予習に話を戻そう。
どんな展示が待っているのか。練馬にはいったい何がある(あった)のか。ホームページでは常設展についての説明は控えめで多くは語っていない。
練馬区、正直なところ大根くらいしか思い浮かばない。
練馬に対する見識の浅さはお恥ずかしいかぎりだが、杉並区でも中野区でも「名産のたくあん」的な展示をわたしは見てきた。
なんてったって武蔵野三兄弟の中では本家だ。練馬大根だもの。武蔵野の長男と言ってもいい。大根についてはそれ相応の熱量で推してくるだろう。
気になる来館者数。
練馬区立文化振興協会経営計画によれば、来館者目標値は年間20.6万人、令和3年度実績16.4万人、コロナ以前が20万人ペースで推移している。
年間300日営業として一日平均660人。
え、660人?!
およ?これまでの施設と桁がちがうぞ?
3.アクセス
最寄り駅は西武池袋線「石神井公園駅」で徒歩15分。石神井公園という大義があるからして徒歩15分など取るに足らない。
わたしはというと、なんと自宅の近くを走るバス路線が施設最寄りのバス停まで連れて行ってくれることが判明。んま、家から6kmというところで手っ取り早く今回も走った。帰りはバスだな。都バスの乗り方も予習した『23区内は前乗り・前払い』上手に乗れるだろうか。緊張する。
4.外観と周辺環境
石神井公園がいい。とてもいい。とんでもなくよかった。池のきわに木道がはしっていて水面のギリギリを散策できる。そこにプリトヴィツェみがあった。
練馬区で白いのは大根だけであって欲しいものですね。
あと、石神井池の北側の豪邸具合がやばい。おいおい聞いてないよ!練馬にこんな豪邸があるのかよー!
5.いざ、入館
のっけから練馬大根である。
エントランスすぐの導入部分は、毎度おなじみ地層の説明にはじまり貝の化石、矢じり、縄文・弥生土器・・・一揃いの展示があった。ほぅほぅ。いつもの時系列展示ですねと思いきや、大根干しと漬物大樽のご登場から事態は一変する。
予想をはるかに上回るレベルの練馬大根推し。大根、大根、練馬大根、長いのも、中くらいのも、短くて太いのも、み~んな練馬大根。どこまでも大根の展示が続く。
写真を見返して気づいたぞ。
導入部の地層にも、ちゃっかり練馬大根がいたー!
練馬大根の時系列展示。江戸時代から始まる「練馬大根史」は昭和を経て現代まで続く。練馬大根供養記念品てなによ。果ては練馬大根を使った最近の学校給食の献立表までもが展示されていた。
「土地の成り立ちから現代までを時系列で、どの時代もとりこぼさず網羅」これが郷土資料館の基本型とおもわれる。
練馬区は大根一本で区史を見せてくれた。練馬区には鎌倉時代の「石神井城址」があり中世の展示も盤石なはずだ。だがこれも一瞬で流して大根に徹底フォーカスである。郷土資料館にはこういう展示もあるのか。こりゃすごい。
導入部分のここもポイントが高い。
武蔵野は、かつてススキが茂る野原であった
(歌の出典は続古今和歌集から江戸時代に広まった俗謡のようです)
いいよ練馬区!そうです。わたしは知っています。中世の武蔵野ってのは草っぱらが3日も続かんばかりに何もなかったのー!我らが杉並区は中世の武蔵野を「萩、女郎花、荻、薄より外」無い状況が三日も続く(出典はとはずかたり)と示した。練馬区も杉並区も、ただの草っぱらが続いた中世を語っているのがうれしい。
地味だが興味をそそる展示
さほど広い地域ではないのに多様な構成があるのが興味深かった。川沿いの低地に水田、台地上に畑とあるが、おしなべて稲作には向かない土地だったことが分かる。主食は麦。ピンとこなかった「武蔵野うどん」の来歴がわかった。
練馬大根界隈がおもしろすぎてまたしても近現代を流してしまうが、鉄道、昭和の街角とおうち、漫画・アニメが出てくる。各時代で随所に練馬らしさが感じられ最後まで息切れすることなく見せてくれた。
6.休憩コーナーで武蔵野うどんがたべられるだって?!
しかも人気のお店みたい。
東京都に飲食併設の郷土資料館は5施設あるが、うどんが食べられるのはここだけだ!
7.ミュージアムショップあり
ショップというほどではないが1階の事務室前に物販スペースがある。図録や書籍などとともに、オリジナルグッズの取り扱いあり。
鳥観図のオリジナルマスキングテープもそそられたがマグネットをお買い上げ。200円なり(安いよ)
8.入れるタイプの移築古民家あり
入れるタイプの移築古民家、郷土資料館のポイントを押さえてきている。
9.よりみちして買ったのは練馬区産レモン
練馬区にゆかりのあるものが買いたいと狙っていた洋菓子店が定休日だった。・・・と、近くにJAの直売所を発見!
10.最後に
「練馬区立 石神井公園ふるさと文化館」は民間の企画力をおおいに感じる施設だった。来館者も多い。平日の昼間に訪問したが企画展などは常に誰かが見学している状況だし、図書の閲覧スペースも気軽に利用されている様子。うどん屋まで併設していて地域住民が集う場所として健全に機能している。
でも指定管理者だから立派で優っているとか、そうでないので地味でダメとか、古くて冴えない、新しいから良い・・・郷土資料館はそういうものではない。みんなちがってみんないいのだ。
練馬区立 石神井公園ふるさと文化館、たのしいよ。是非!