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場は人がつくる(小学生の放課後のこと)

「ドナドナ」とわたしだけが呼んでいる現象があります。

人形劇を学童(小学生が放課後を過ごす場所)で公演していると、途中でこどもが次々とランドセルを背負って帰っていくのです。

ドアのそとには派手なワゴン。

放課後学童教育サービスのお迎えワゴンです。時間になるとやってきます。学校の終了と同時、というのは難しいので、その隙間を学校隣接の無料学童で過ごし、お迎えが来たらそれに乗って、次の場所へ行くのですね。

振り返り振り返りかえっていくこども達に、わたしは「またね」と手を振ります。公演中であっても。

本来、劇中でそんなことはしたくないのですが、わたしには無視できないのですよ。だって、その子の心は私の手の中に残っているのだから。

で、「ドナドナみたい・・・」と思ってしまうわけです。まあ、あれは牛が市場に売られていく歌なので、命名としてはひどすぎるのですが。

批判しているわけではないのです。

「そんなところにこどもを預けるな」と言ってはいない。

両親とも働いていたり、シングルの親だったり、夜働いていたりと、事情は様々。どうしようもないことなんです。どうしても制度から漏れてしまう人もいます。

でも、だからといってこどもを放っておくわけにはいかない。どこで何が起きるかわからない。こどもにスマホを持たせてGPS発信をさせて、今どこにいるのかを把握しておいたとしても、明らかな行先がないとだめなんです。

ということで、学童サービスの教育ビジネスが誕生。

学童サービスにいれますとね、毎日をたくさんの習い事で埋めてくれます。英語・水泳・体操・プログラミング・・・しかもお迎え、送りつきのサービスもあります。忙しい親にとって迎えに行かなくていいというのは、大メリットです。


ところで。

ご存知と思いますが、こどもたちは朝8:30から50分程度を基準に、刻まれた時間割を5,6コマ受け続けています。ずっと誰かと一緒にいるんです。そのあと、学童等に移動し、また雑踏の中で、集団行動です。やりたかろうがやりたくなかろうが有無を言わさず、やらなければいけないんです。


「教育はハイリスクノーリターン」というのはわたしの父の言葉で、それは思うようにならなかったわたしを歯がゆく思いつつも冗談で言ったもの。

でも、これは事実で、教育に投じたものは自分には帰ってこない。その次の、そしてさらにその次の社会にかえって行くもの。へたしたら自分の眼で確認はできない。まさに「ハイリスク」であり「ノーリターン」です。

つまり、今の教育の結果は、何十年か前に施した教育の結果なのですよ。

だから、教育をビジネスにしてはいけない。ビジネスは、いま、結果を出さないといけないから。ビジネスの結果とは、利益です。

教育をした結果ってなんですか?その子がおとなになってから社会に出て、どんな人生を送ったかでしょう?

その月の利益を追うとなると、教育ビジネスのターゲットは「こどもにとって最善な場所」という観点ではなく「(スポンサーである)親にとってどんな都合のよいカリキュラム・サービスができるか」ということになり、それは教育ではなくなります。


「こどもにとってどうなのか」「学校を終えたこどもにとって良い場所とはなにか」

完全にその視点だけで、作られた場所があります。

三重県津市にあるので、わたしは見学にすら行っていないのですが、フェイズブック全ての記事に毎回目を通しています。読めば読むほど、すごい場です。

いいことばかりではないと思うのですよ。たくさんの問題と共に存在していると思うのです。だって、それが現場だから。問題のない現場なんてこの世にありえない。

でも、その問題にここのスタッフさんたちは必ず向き合っていらっしゃいます。そして、改善策を模索し、トライをし、それをくりかえしていく。結果的に前に進む材料になっていると思うのです。

別府さんという会長さんが、また愛情の塊。お会いしたこともないのに、よくもまあ書きますが、スタッフの皆さんが別府さんに寄せている言葉は、愛にあふれていて、本当の気持ちだとしか言いようがないのです。

そして、そのスタッフのみなさんの愛情がまたさらにすごい。場と子どもたちに対する愛の熱量が、もうやけどしそうなほどです。

こんな学童なら、わが子に行って欲しかった。たぶん「行きたい」というに違いない。

こどもにおしゃれな場所は必要ない。人の知恵と工夫と愛情に満ち溢れた場所で、安心できる大人がそこにいて、仲間がいればいいんです。

放課後は、こどもたちにはできれば、そういう場所にいて、のびのびと過ごしてほしい。

そもそも、6、7時間以上学校にいて、そのあとさらに宿題だの塾だのなんだのと勉強する気持ちに、おとなのあなたはなれますか?

働いた後に飲む、居酒屋さんでのビール。解放された気持ちで食べるおつまみ。おとなにはそういう時間があって、こどもにはないなんてさ!ひどいよねえ。こどもたち!

「放課後はどうしたいですか?」という質問をこどもたちにしてみて、その意見から「じゃあ、こういう場を作りましょう」という逆のやり方は、できませんか?

絶対に、この質問は、保護者にはしちゃいけません。

待っててみて。

こども達の方から「ねえ。この時間は宿題をした方がいいんじゃね?」という声がきっと出てくるから。

待っててみて。

ねえ。おとなたち。こどもたちを待ってみて。お願いだから。


ちなみに、どんな場においても、「いろいろこどもたちのことを考えてくれる先生」という人材にあふれている現場は、それが教育サービスであろうと無料の学童であろうと、関係なく、素晴らしいこどもたちの場所となります。場は、人が作るのです。


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もり まさの /縫う人/おはなし届け屋さん/人形劇士
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