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サンタ・ルチアと言えばイタリアじゃないの?
12月のスウェーデンでは、クリスマス前の12月13日にルチア祭を祝う。毎年教会、学校などではコンサートが行われるのだ。白い衣装にろうそくの冠をかぶったルチア(スウェーデンではルシアと発音する)役の女性とともに三角のとんがり帽を被った“stjärngosse“(星の少年)たち が歌いながら登場する “Luciatåg” (ルチアの行列)は、スウェーデンの冬の風物詩である。しかしサンタ・ルチアといえばイタリアを思い浮かべる人も多いはず。あの有名な曲も学校の音楽の授業で歌った人も多いのではないか。そんな疑問も持ちつつ、今年はストックホルムの王宮横にある大聖堂(Storkyrkan)のルチアコンサートに足を運び、この行事の魅力を改めて感じてきた。場内は撮影禁止だったので下記の映像をご覧いただきたい。雰囲気が伝わるはず。
サンタ・ルチアのルーツ
サンタ・ルチア(聖ルチア)は、イタリア・シチリア島のシラクサ出身の殉教者で、光と慈愛の象徴とされている。彼女は目の守護聖人として崇敬され、12月13日は彼女を記念する祝日だ。特にシチリアでは大規模な行列やミサが行われ、ルチアの像が街中を練り歩く姿が見られるそうだ。この映像を見てあまりの違いにびっくりしてしまった。
スウェーデンにルチアの伝説が伝わったのは中世のこと。イタリアのカトリック的な伝統と北欧の冬至祭の風習が融合し、現在のルチア祭のような祝い方になった。
スウェーデンで最初のルチア祭
260年前、スウェーデンで最初に記録されたルシア祭は、シェブデ郊外のホーン村で開催された。 1764 年にカール・フレドリック・ニーマンが、朝にコーヒーとパンを携えたルチア行列で目覚めた様子を記録している。ルチア祭の伝統はおそらくヴェストラ・イェータランド(Västra Götaland)地方に起源を持ち、19 世紀に全国に広まった。
大聖堂でのルチアコンサート
今回訪れたストックホルム大聖堂のルチアコンサートは、その荘厳な雰囲気と美しい音楽で心に深く刻まれる体験だった。
教会内の照明が落とされ、キャンドルの光だけが優しく揺れる中、聖歌隊が歌いながら登場した。白いローブに身を包んだルチア役の女性が、頭にろうそくの冠を乗せて先頭を歩く。その後ろには、星の少年たち(というか青年)や白い衣装を着た女性たちが続く。
1時間のコンサートの最後の締めの曲はやはり「サンタ・ルチア」。この曲はイタリアのナポリ地方で生まれた舟歌がルーツで、スウェーデン語の歌詞に翻訳されて今ではルチア祭に欠かせない楽曲となる。優雅なメロディーに包まれたまま、行列は退場した。その旋律を聞きながら、イタリアから北欧へと伝わったルチアの物語に思いを馳せた。
おわりに
ストックホルム大聖堂でのルチアコンサートは、音楽と伝統が融合した特別なひとときだった。もしスウェーデンの冬を訪れる機会があれば、ぜひルチア祭の行事に触れてみていただきたい。教会の中のろうそくの光と、優しい歌声が、心にしっとりと響くのではないだろうか。