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草の実のような随筆集

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週に一度程度更新するエッセイをまとめました。
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2023年7月の記事一覧

なにがなんでもということか

なにがなんでもということか

コロナ禍で海外渡航の機会を失ったこともあって、パスポートの有効期限が切れたままだった。このたび必要があり久しぶりに更新することにし、そしてついでに娘も一緒に作ることになった。

娘は平日役場に行けないので、私が代理で二人分の書類を窓口まで受け取りに。窓口の女性は、娘の年齢を確認し真剣な眼差しで私に言った。
「あのですね…申請用の写真を撮る時は、カラーコンタクトレンズは使わないでくださいね。女性は写

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桜散る海を

桜散る海を

桜の花びらのようだとも、ピアノ教室の先生の綺麗な爪のようだとも思った。

私の母、祖母の実家は海辺の小さな村落にある。すぐ近くに遠浅の砂浜が広がる、曾祖母の家に遊びに行くのが幼い頃の楽しみだった。
海風に吹き上げられた細かな砂が、そこかしこに散る土間でサンダルを履き、古い木造の家から浜辺に向かって駆け出してゆく。
浜までの家々の軒下には青い網が広げられ、そこには釜から茹で上がったばかりの真っ白なシ

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Twitterが好きだったのだ

Twitterが好きだったのだ

玉ねぎを切っていて、なんとはなしに目の近くを指で触った。
その瞬間ツーンと目鼻を襲う刺激。
あわわわ、やってしまったと思わずまた指で目頭を触り、更にツーン。
まったく私ときたら、どうしてこうもそそっかしいのだと、泣きながら手と顔を洗ってしばし考える。こういうドジな話は、誰かに語りたくなるなと。

家族や友人に話してもいいが、Twitterに投稿してみる。
「玉ねぎを切っている最中に目のへんを触った

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