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草の実のような随筆集

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週に一度程度更新するエッセイをまとめました。
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2023年6月の記事一覧

偉大なる猫

偉大なる猫

うちで長く暮らす猫の話だ。

彼女についてよその人に話す時は、まず年齢のことから入る。25歳以上。
なにせ、今はもう成人して働いている長男を産む前からのつきあいである。うちに来た時は既に子猫ではなかったから、正確な年齢はわからない。
なんだかんだで我が家で暮らし始めてから、25年はゆうに経っている。
いくら最近のペットは長寿傾向とはいえ、長生きにもほどがあるのではないかと思っていた。

綺麗な三毛

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娘の帰省で知る潮時

娘の帰省で知る潮時

離れて暮らす娘が先日しばらく帰省していた。
この日に帰るよという連絡をもらった時は、そりゃあ嬉しくて、よく晴れた日に彼女の部屋の窓を開け放ち風を通したり、布団を干しておいたり。
何が食べたい?と聞いて食材を準備したり。
そうだ、ちゃんと家中…特に水回りを綺麗にしておくか、と念入りに掃除する。
このあたりで、ふと「ん?」と自分のやっていることに、これまでとは違う感覚を覚えたものの、忙しいので気にしな

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スマホがなかった時代の夜

スマホがなかった時代の夜

昨夜、Twitterでゆきほ(@yukifox)さん の「スマホがなかった時代の夜、みんな何してたんだっけ 泣いてたんだっけ」という呟きが流れてきて。
その呟きと窓の外に響く雨音に、あの頃の夜が蘇った。

スマホどころかガラケーさえ存在しない。
毎晩私は、実家の暗い廊下で友人のSと長電話をしていた。
家族に聞かれないよう居間から固定電話をできるだけ引きずり出し、2時間3時間だらだらと話していた。

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老いた私の目が見せるもの

老いた私の目が見せるもの

前記事(誰がそこまで見せろて言うた|ぬえ (note.com))に引き続き、
目というか見え方の話。

中学1年生くらいからドがつく近視である。
授業中に、なんだか黒板の字が見えにくいなと思ったら、みるみる身の回りのもの全ての輪郭がぼやけていた。
30代から乱視も加わって、眼鏡やコンタクトレンズを装着していないと、常に水の中で物を見ているような状態である。

50代となり老眼までスタート。近視・乱

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