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カメになりたい女、魚になりたい男、鳥になりたい女。

去年(それもだいぶ前)、フォロワーさんから『Jewel Fish』で何かnote書いてと言って頂いていたので今更ながらゴニョニョと何か書こうかと思い至って筆を取った次第。

『Jewel Fish』はGARNET CROWの7枚目のシングル『Last love song』に収録されているカップリング曲。

ネオ・ネオアコ路線と謳っていた初期の楽曲の中では個人的にこのシングルCDが完成系だと思っている。
『Last love song』『Jewel Fish』、どちらの楽曲も爽やかさと切なさを絶妙なバランスで持ち合わせたアコースティックサウンド。
儚くも瑞々しい中村さんの歌声がマッチして溜め息ものの完成度。
とにかく透明感がすごい。
個人的好みは考慮せず、総合的な判断材料でGARNET CROWのNo.1シングルを選べと言われたらカップリングも含めこの1枚。
あとジャケ写が好き。全ジャケ写の中でも1.2を争うくらい好き。

(というかこの辺りにリリースしてた楽曲が化け物クラスにレベル高いネオアコ連発でやばすぎるのでピークと言われても仕方ないと思ってる)
(夕立の庭とかcall my nameとか)


そんな名カップリング曲である『Jewel Fish』
作詞家AZUKI七さんによると歌詞のモチーフは映画の『アリゾナ・ドリーム』とのこと。

ファンの間で有名な『交通事故で死別説』についても目を通したことがあるが、今回はそちらには触れずに進めていくことにする。
作詞家ご本人が一応モチーフについて言及しているのでそれを尊重したいが、それにしても『Jewel Fish』の歌詞自体が本当に『交通事故で死別説』とも解釈することが可能な内容なので最初にこれを発見した人すごい。天才か。
そして歌詞の解釈は人それぞれスタンスのAZUKIさんなので、もちろん色んな解釈で考察するのもGARNET CROWの楽曲の楽しみ方のひとつ。



で、『アリゾナ・ドリーム』の話をする。

『アリゾナ・ドリーム』は1994年に日本で公開された映画。製作国はフランスとアメリカ。
若き日のジョニー・デップが主演を務めている。
(余談だがゆりっぺはジョニー・デップが大好き)

以下、簡単なあらすじ抜粋。

主人公のアクセルは、叔父の結婚式の為にアリゾナへやって来た。
そこで彼は、夫を射殺した過去を持つ未亡人の家に住み込み、自殺願望癖の娘と恋に落ちる。
そして、それぞれの夢を抱いた人々は、自ら破滅の道を辿り始めるが……。

物語のキーになるのは『夢』

アラスカでオヒョウを釣りたい主人公。
俳優になりたい友人。
時代遅れの車を積み上げて月へ行きたい叔父。
自作飛行機で空を飛びたい未亡人。
自殺してカメに生まれ変わりたい未亡人の娘。

主要人物それぞれがアリゾナの地でを抱いている。

ブラックユーモア映画というだけあって終始シニカルな雰囲気でずっと暗かった気がする。
観る人を選ぶ内容であることは間違いない。
観てる途中で本当にこれ『Jewel Fish』のモチーフなのかと思った記憶がある。

当時は観終わってすぐ歌詞を読み返してみたが、以前noteで紹介した『JUDY』『海をゆく獅子』ほど原作そのままの内容ではない。
もう少し抽象的で、ふんわりとモチーフが見え隠れする程度。
というより、よくこの映画をここまで優しい歌に仕上げたなという感想。

個人的に歌詞の中で一番しっくりきたのは

世界の何処にいたって僕らは
星屑よりも小さくて
そして大きすぎる夢もみれる

誰も未来をまだ知らないで
此処にいるから希望抱いてゆける

かな。
ここが『アリゾナ・ドリーム』のサビな気がする。

広大なアリゾナの地でみる夢は、作中に登場する浮遊する魚のようにふわふわと漂うだけで叶わない。
色々な形で壊れていったり、悲しい結末を迎えてしまったり、ぶつかったり愛しあったり。
人々は愚かで矮小な存在だが、誰もまだ未来を見据えられないからこそ、希望を持って前に進んで行ける。
大きすぎる夢もみることが出来るのだ。

あと本当に「目隠ししたまま雨にうたれてる」シーンあるじゃん……って謎に感動したことを覚えてる。笑

もしこれから観てみようと思う人がいればぜひ。
でもあまり人に気持ちよく勧められる映画でもないのが悩み。
引き金って何ぞやという疑問も恐らく解消される。

そして、この映画をこんなにも優しい歌詞に昇華させるAZUKIさんのワードセンスに脱帽。
爪の垢売って下さい。言い値で。


最後に。
Jewel Fishはヒラメでしたとさ。

おしまい𓆝𓆟𓆜𓆞




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