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天気の子を読む 2/29用メモ

Ⅰ.「大人」との対照 「大人」のカウンターパートというニュアンスでの「少年」 ・「少年」という呼びかけ(須賀、夏美) 未成年、未熟、イノセンス、社会的弱者 ・帆高が家出した理由「なんだか息苦しくて」 『キャッチャー・イン・ザ・ライ』によって暗示される少年性 「phony」(インチキ):大人、欺瞞への皮肉・反抗心  cf.サリンジャー、イノセンス礼賛(「大工よ、屋根の梁を高く上げよ」など) 「息苦しくて」逃げ出したかったのは大人たちが当たり前に享受している社会、コミュニティ、

    • 書き続けてください、という呪い(6 自分の悩み)

      書き続けてください、と初めに言ったのは誰だったか。わたしを文芸部に誘ってくれた彼女かもしれないし、その顧問だったかもしれない。あるいは、別の誰かが。 覚えているのは、高校3年生の夏、文芸コンクールでのことだ。 文芸誌の片隅にほんの申し訳程度に寄せた、提出するつもりもなかった「随想」と呼ぶには不恰好すぎる文章。それを、なんとも幸運なことに、選考委員のお一方が、目をかけてくれたらしい。「書き続けてください」。本来であれば選考対象ですらない文章に対してかけられたその言葉を、わたし

      • 明るい場所(3 コンビニエンスストア)

        江國香織の『泣く大人』というエッセイ集に「居場所がある、という気持ち」という一説がある。曰く、不良はあかりが好きだ。ファミリーレストランだとか、パーキングエリアだとかの、闇の中で、一つだけこうこうとさすあかり。 私は高校生の時に江國香織を読んでしまったので、その上、周りに尊敬すべき(尊敬すべき?とにかく、自分が大人になるにあたって指標となるような、という意味)大人の女性がいなかったものだから、当然彼女の思想をなぞるように今や立派な不良になった。 社会人になりたてのころに住ん

        • 灰羽連盟ノート③レキと、廃工場の灰羽たち

          ※以下文章には『灰羽連盟』本編、および『灰羽連盟 脚本集』(第一巻~第八巻)についての引用およびネタバレが含まれています。出典が示されていない「()」内の話数は、アニメ話数に準じ、せりふ書き起こしはは筆者聞き取りによる。 この作品の良さに、登場人物描写のリアリティがあげられると思う。物語のメイン軸は、ラッカの視点で進んでいくから、もちろん焦点はラッカの心理に沿っている。しかし、その背景に映り込む他の灰羽、話師、街の人間たちの描写が細かく、それぞれに物語があるように思わされる

          『灰羽連盟』ノート①ー「存在」への原初的な承認

          ※以下文章は、『灰羽連盟』のネタバレを含んでいます。 カタルシスの正体『灰羽連盟』をみた。ぐるりと高い壁に囲まれた街と、そこでの「灰羽」たちのあり方を描く物語だ。一度みて、簡単には言い表せない読後感に襲われることになった。おそらくこの感覚は、私だけではなく、この作品を見た人にある程度共通する感覚であり、この作品を好きになってしまう理由の1つなのではないか。私は、そのカタルシスの由来を明確にしたいと思った。 なぜ『灰羽連盟』はこんなにも私たちの心を揺さぶるのか。思うに、この作

          『灰羽連盟』ノート①ー「存在」への原初的な承認

          『灰羽連盟』ノート②「部屋」から読み解く心理

          ※この文章にはネタバレが含まれます。 また、作品世界観や設定について推察し、その妥当性や正しさを追及するものではありません。出展の確認ができず、二次引用となっているところは、すみません。 「部屋」に入るということ作中で何度か、個人の部屋についての描写があった。ほんの些細な日常の描写だけれど、登場人物の心理をうまく描写するギミックになっていると感じたので、まとめてみた。 まずは、ラッカについて。 ラッカは、生まれてしばらくはゲストルームに居座っている。しばらくして、「ここは

          『灰羽連盟』ノート②「部屋」から読み解く心理