【VALORANT】Fnaticが見せたヨルを使ったSplitの攻め
はじめに
初めまして!アナリストを目指しています「しゅう」といいます。アウトプットの一環としてnoteを始めました。
今回FNCが見せた構成は今までのSplitの構成のスカイをヨルに変えたものでした。この構成を使ったFNCの攻め方が他にない特殊なものでとても興味深かったため共有しようと思います。
そもそもSplitのヨルってどうなの?
「そもそもスプリットのヨルは逆張りだろ」という声が聞こえてきそうなのでまずそんなことはないということを示そうと思います。(ご存じの方は飛ばしてください)
FNC以外にスプリットでヨルを採用したチームとしては以下のチームがあります。
ヨルの大まかな採用理由
ヨルの採用理由として今回は軽く3つ挙げようと思います。
1)スカイの弱体化による影響力の低下
スカイが弱体化されフラッシュが2つしかなくなったことで「雑に鳥を流して情報を取る」という使い方ができなくなり取れる情報量が少なくなりました。今まで圧倒的な情報量を取ることができたため必須だったスカイの地位が低下し、同じように手前フラッシュを入れられるヨルの地位が向上しました。(=ヨルのイニシエーター的役割が向上した)
(↓ スカイナーフを理由に3デュエリスト構成を試したと語るf0rsaken選手)
2)ヨルのチョークを抜けるデュエリストとしての強さ
一般的に「スプリットはラッシュが通りにくいマップ」といわれています。その理由は主に二つで1つ目は入口が狭いこと。2つ目はサイトを挟むことが難しいことです。例えば直接A攻めをしようとしてグレ一個返されて止まってしまうみたいな経験はあるあるだと思います。
ここで言いたいのはスプリットでラッシュを通すためにはチョークポイント(サイトの入り口など止まりやすい場所)を抜ける人数が通常より多く必要ということです。今回の本題であるFNCのラッシュを見てみましょう。
このラッシュはヨルのデコイでミッドに圧をかけつつ、
①レイズのブラパ
②ヨルのTP
③オーメンのシュラウドステップ
の三つのアビリティでBメインのチョークを抜けています。このラウンドは落としてしまいましたがこの「チョークを抜けられる人を一人増やせる」というのがヨル採用の大きなメリットとなっています。
3)デコイとTPを使ったフェイク
これはスプリットに限った話ではないのですがヨルのTPとデコイはフェイクをするのに強力です。
ここではPRXがvsGENGの第二ラウンドで見せた攻めを見てみましょう。
この前のラウンドは下の動画のようになっていて、「前のラウンドのBラッシュが印象に残っている敵は足音を聞くだけでBに人を寄せるだろう」という読みの元少し時間をおいてAラッシュをしています。(このラウンドはセカンドでGENGがAに賭けていたため刺さりませんでしたが)
他にもいろいろな強みがありますが一度ここら辺にしておいて本題に移ろうと思います。
FNCのヨルを使った攻め
通常のチームのスプリット攻めは例えばヴァイパーの壁を使ったAの様々な攻め方を押し付けてからB攻めをするとかみたいなA攻め主体の考え方や、とりあえずミッドを取るという攻め方だったりが多く、これがスプリットでのヴァイパー採用が多い理由になっています。(このAのヴァイパーを使った攻め方が上手なチームとしてはSENがあります)
しかしFNCの面白いのはチョークを抜けられるデュエリスト二人と完成度の高いスキルセットを使った「Bセット」を第一戦術(一番自信を持った作戦)として戦っているところです。
この場合その後のラウンドの進め方がシンプルで例えば「Bラッシュ通ったからAの人数減らしたいよね?Aラッシュ行きます。」とか「BラッシュとAラッシュ見せてミッド薄くなっただろうからミッド行く」とか次のラウンドに敵がやってくる対策を予測して試合全体を組み立てられていてかっこいいです!
この「スキル全部使い切ってでもBセットを通す」という考え方実は理にかなっていて、スプリットの特にBにおけるリテイク成功率はとても低く、rib.ggのデータを使って自分で計算したところAのリテイク率は35%でBのリテイク率は30%でした。つまり「B設置≒勝ち」となっているのです
まずはvsTH戦でのラウンドの流れとなぜその動きにしたのかをざっくりまとめてみました
1st: AフェイクB、B人いたから止めて少し待ってからB挟み
2nd: Bメイン取得、ミッドゆっくりとる(ミッド圧なくてスタック怖かったのかな)→ヨルデコイAに流して圧かけた後B挟み
3rd: Bラッシュ
4th: ひとつ前のラウンドの対策としてB奥に敵が入ると予想してセットを変更したBラッシュ
5th: THエコだしB人数多めにして敵がBメインを取り返したり強く当たってくる読みで最初Bメイン人数かけて取りに。→取り返しにきたTHをぼこして薄いと予想したAへ
6th: ヨルウルトを合わせたBセット
THタイムアウト
7th: タイムアウトで話し合ってBに人数寄せてるんでしょ?いつもと同じサイファーラークの顔してヘヴン取ってAセットや!(THの対策が素晴らしいラウンド)
8th: 一個前のラウンドBメイン取ったから寄り早かったんだろうなぁ→ミッド薄そうだからミッド取って敵が寄せづらくしてからA行こ→止まっちゃって敵寄ってきたからBローテ
9th: そろそろ「Bメイン取ってこないなぁ」ってなったんじゃない?久しぶりのBセットどーん!
10th: 一回広がって相手の詰めとかヴァイパーウルトの場所とか見よっか→あんまちゃんとBメイン取ってないからTP音とフラッシュで取った顔してまとまってAラッシュしようか→ミスって止まっちゃってBローテするも時間負け
11th: ミッドとBメイン取って6ラウンド目と同じヨルウルトセットのふりしてA行こ
12th: 今までみたいに軽くBメイン取っただけの顔してBセット行こ
こうしてみるとどれだけFNCが相手がBセットを嫌がることを前提に自分たちのやりたいことを押し付けていることがわかります。また12ラウンド中5ラウンドでBセットをしています。
ここからは特定の「これうま!」というラウンドについて解説しようと思います。
3rdのBラッシュ
このセットを見て違和感ありませんか?このセットの問題点は「スキルが入っていない場所がある」ということです。そしてこれはミスではありません。(ブリーチのアフショはさすがにミスじゃね?と思ってます)
このセットを見せた3ラウンド目はFNCにとってボーナスラウンドです。普段のランクだと「変なことしてワンチャン刺さってラウンド取れたらいいな~」と考えがちだと思いますがプロシーンではそれだけでなくボーナスやエコなどの取れなさそうなラウンドを後のラウンドを取るための布石として生かすことが多々あります。
このセットを見せた後の4ラウンド目のラッシュを見てみましょう。
4ラウンド目のBセット
このラウンドは3ラウンド目と異なり攻めをぼかしてスタートしています。Aメインではサイファーがケージのセットアップを使ったり相手の鳥に引っかかったりして状況をわからなくさせ、Bメインは足音を鳴らして取得、ミッドではレイズが姿を見せています。TH目線「なんか相手どこにでもいるなぁ」となり、FNCが本命として攻めたがっているBに人数を寄せられない状況になります。
そしてデコイとベントスモークでミッドに圧を掛けてBヘヴンの敵がミッドに意識を割かざるを得ない状況にしてからBセットを開始します。
ヨルウルトを使ったBラッシュ
6ラウンド目に見せたヨルウルトを使ったBエントリーも見ていきましょう。
ヨルウルトで見つけた敵へしっかりスキルを入れてつぶしていますね。これもし今までのラウンドでTH側が「これBもう無理だから人置かないでリテイク」となっていたらヨルウルトで敵がいないことが確認でき、エントリーのスキルを減らして相手のリテイクに対して吐くことができます。
考えられるFNCの攻めに対する対策
本題から少しそれてしまいますがFNCの攻めに対する対策を考えてみようと思います。(プロチームでコーチをしている知人に「対策を考えられるようになるのが大事」と教えていただき練習中です)
ちなみにTHはとても上手にFNCの攻めに対する回答を出せていたのでそれも紹介しようと思います。
対策1: Aスロープ上のカウンター
まずFNCの構成の攻めにおける弱点って何だと思いますか?それはAへの攻めが弱いことです。FNCは5,7,10,11の4つのラウンドでAを大人数で攻めていますがそのうち3つのラウンドを落としています。(取った5ラウンド目もBメインで5-3の人数有利を持った状態から1v1まで持っていかれた)
その理由はAサイトはなんだかんだ言ってBサイトと違いスキルだけでサイト全部をつぶせないからだと思います。だからこそFNCはA攻めの際ヘヴンを取ることを徹底しています。(ヘヴンから見えるポジションに敵がいれない+リテイクが苦しくなる)ちなみにこの試合以外でも同じです。
このAヘヴンを取りに来るのをうまくつぶすことができればラウンドを取ることができます。
THの7ラウンド目のカウンターがとても上手でした。
こんな感じでFNCがヘヴンを取りに来ることを前提にそれをつぶすスキル合わせを用意することは対策の一つになります。(FUTもこの対策を用意してました)
対策2:Bメインの情報を取る
すごい当たり前なことを言っていますが、FNC相手は特にBメインの情報取りが重要になります。FNCは基本最初にBメインを取りに来ます。そのためスカイの鳥を流して鳴らすだけではあまり意味はありません。最初取られてもそのあとにBメインを取り返して敵の本命がどちらかを判明させることが大事になります。イメージがつきにくいと思うのでTHが行っていた取り返しを見てみましょう。(サイファーワイヤーで失敗してしまいますが)
対策3: Bメインを前目に当たる
そもそもFNCのBセットはとんでもない量のスキルを使います。このスキルを減らすためにBメインを前目に当たることも対策になるでしょう。この時目的はキルを取るというのではなくスキルを吐かせたり情報を取ることになるのでシュラウドステップで引けるオーメンが奥側にわたってクロスを組む感じにするとよさそうです。既に紹介したラウンドですがTHがこの動きをまさしくやっていたので改めて紹介します。
スカイがフラッシュを出すと同時にオーメンがシュラウドステップで抜けてワンウェイを炊き、いないと分かったタイミングでオーメンを残して二人がAへ寄っています。この寄りによってこのラウンドを取るのですがこれはBに敵がいたとしてもスキルをはかせてオーメンがシュラウドステップで離脱することでBセットを弱体化させることができます。
対策4: 普通にBセットを止める
このBセット、実は柱裏のポジションにフラッシュしか入っていません。それだけなら「いやカバー取られて終わりだろ」って感じですがこのBセット、とてもタイミングが緻密なんです。しっかり全部のスキルのタイミングが合ってないとどこかつぶせていない箇所が生まれてしまいセットが瓦解します。そのためにパラを構えたオーメンを置き、だれか撃ち合えるもう一人を柱周りに置くことで相手のセットのタイミングをずらしてスキルを避けて撃ち合うことができます。THも最終ラウンドにこの対策を実現できていたので見てみましょう。(THはスカイの犬でB入ってくるかの情報取りとセットの阻害を同時にこなしてる)
対策5: Bをリテイクする
「いやお前さっき自分でBリテイクきついって言ってたやん」となると思いますが、対FNC戦でめちゃめちゃ大事なのが「Bセットを避けてFNCがスキルを切らした状態のリテイクに勝つ」ことです。FNCのB攻めってヤバくて、持ってるスキルを全部使い切ってサイトを取りに来ます。
「FNC側にスキルがない状態でのリテイクなら5v5でも勝てる」Bリテイクを持っておければBセットを警戒しすぎずFNCに「Bセット怖いよなぁ?」と来るかわからないBセットにおびえ続けて試合を進めずに済みます。
でもこのBリテイク、めちゃめちゃ難しいです。ブリーチなどを採用していればスキルで場所をつぶしてリテイクができるのですがそもそもこのマップで多い構成はSENTINELSが使っていた下の構成です。
SENTINELSは防衛の際よくBに人数を寄せてAをリテイクにするチームで、このAリテイクがとてもうまく敵チームを苦しめました。今回のStage1のデータを見てみると、SENTINELSはAリテイク成功率が80%なのに対しBのリテイク成功率は25%しかありません。何が言いたいかというとこのメタ構成でBリテイクするのはきついということです。改めてFNCのこのSplitのコンセプトがいかにうざいかがわかりますね。
Q.「そんなBサイトをどうやってリテイクするの?」
A.「撃ち合いです。」
え、ここまで「俺valorantわかってます」みたいな顔しておいて撃ち合いかよって思うと思うのですがこのBリテイクに関してはほぼ撃ち合いで勝つしかありません。というか考えてみてください、こっちにはリテイクで使いたいスキルが残っていて、FNCはほぼすべてのスキルを使い切っている。この状態で撃ち合い負けてたら正直どうしようもありません。ちょっとその撃ち合いを楽にするためのアイデアを下にいくつか置きます。
1.オープン設置はさせない
撃ち合いでサイト中はつぶせたとしてもオープン設置をされていたら勝機は薄いです。ヘヴンからの抜きなり耐えスモーク炊いていやがらせをするなりしてオープンプラントだけは咎めなければなりません。
この際ヘヴンからグレなどを入れてしまってもいいと思います。「グレを避けた後でオープンプラントを通す」という判断をしてきた場合はファストリテイクで人数有利状態で撃ち合えます。
2.サイファーのケージを一つは残しておく
守り側のBリテの際一番怖いのはヘヴンを降りるときです。ヘヴンから降りるのを楽にするためにサイファーのケージを残しておき、ヘヴン下にフラッシュを入れて降りることで「ヘヴンから降りるときにフリーキルを取られる」ということはなくなります。
3.そもそもヴァイパー壁をBリテイク用に置いておく
どこのチームが使っていたのかは忘れてしまったのですがどこかのチームが使っていたBのヴァイパー壁を使うのも良いと思います。この壁は耐えスモーク的な使い方もできてヘヴンから降りやすくもするため耐え→シャーペンという使い方もできますし、リテイクの際に「手前のエリアを取ってから壁向こうの敵と撃ち合う」というように敵のカバーラインを切って二段階に分けてリテイクすることができます。(特にFNCはフラッシュ使い切ってることもあるので)
まとめ
いかがでしたでしょうか?普段は「きりはなプロジェクト」というYoutubeのチャンネルの台本を書いているのですがnoteを書くのは初めてなので色々読みにくいところなどあったと思います。これから精進していきますので温かい目で見て頂ければ幸いです。また、他に「これについて書いてほしい」などございましたら教えて頂けると幸いです。