【旅】モンゴル ロードトリップ |DAY3| 冒険開始。夕日に輝く虫と焚き火とキャンプ[観光じゃない旅クロニクル]
いよいよロードトリップ開始。モンゴル最西、カザフスタンとの国境辺りの1300kmほど離れたバヤンウルギーを車で数日間かけて目指す。
目的は鷹狩をする遊牧民に会うこと。
前の夜に歯磨きをしてたら、「記者」の部屋から私の名前を呼ぶ声が聞こえて、なんだと思ったら、「6時に起きなかったら起こして!」っとのこと。
出会って二日目。少し心を開いてくれたかな?と一人でほっこり。今回の旅の仲間はみんな、最初に会った瞬間からあまり初対面な感じがしない、どこか会ったことある様な、昔からの友人に久しぶりに再会した気分。
朝は結局ギリギリに起きて、バタバタと準備して現地コーディネーターのサロールさん、サンサルさんと合流。
7時。いざ出発。ウランバートル市内は激混み。車がひしめき合う。しばらくすると、なんとなく想像していたザ•モンゴルな景色に。
一日中車の中で過ごす。お話したり、爆睡したり、タバコ吸ったり、音楽を聞いたり、物思いに吹けたりの繰り返しを続ける。
お昼は、ウランバートルから230kmほどのウブルハンガイ県北西部のオルホン河畔にあるカラコルム遺跡周辺で「ボーズ」という、羊肉餃子などのモンゴル料理を食べた。
モンゴルでは食事と一緒に塩っぽい「スウテイチエ」というミルクティーを飲む習慣がある。最初は慣れないけど、次第に、ご飯を食べる前に飲みたくなっていた自分がいた。とにかくモンゴルのご飯は毎食。、お腹がパンパンになる。
夕方頃、旅の相方が『ちょっとここで写真撮りたいから車止めて』と。
私も車を降りて崖の羊の写真を撮ったけど、、、相方は何かに向かって熱心にシャッターを切っている。
私はなんとなくつられて車から降りただけで少し恥ずかしい?気持ちになった。そっか。私は一体何が撮りたいのか?なんかよくわからないまま来てしまったぞ。と不安な気持ちになった。何が撮りたいのかはここ数年悩みの種になってるテーマでもある。
でも、今回の旅は邪念を捨てて、「カラ」になって流れに身を任せるために来たことを思い出した。一瞬の間に不安と解放が交差した。いつも考えすぎと言われるけど。考えることをやめることにした。決めた。自然とカメラに手が伸びた時にシャッターを切ればいい。そしたら、少し脳みその霧が減った気がした。
今日の移動距離は500km弱、移動時間は14時間ほど。
夜はアルハンガイ県、イフタミル村周辺のタミル川沿いでキャンプをすることに。21時頃に到着。
夕日があまりにも綺麗にオレンジ色に光ってたから、衝動に従って、夕飯を準備してくれたサロールさんに申し訳なさを感じつつも、食べる前にカメラを持って陽の当たるところへ。
夕日に遊ぶちいさな大量の虫たちがキラキラしてて幻想的だった。この虫たちが繰り広げるキラキラに感動したのか、牛たちの暇そうな目に癒されたのか、こころのバルブがすこし開いて肩の力が抜ける気がした。
何年ぶりだろう。自分のただ思うがままに写真を撮るの。そういえば、ここ数年くらいは仕事以外の「自分の写真」をちゃんと撮っていないことに気づいた。
夜ご飯はパンにサラミとチーズとピクルスをのせて食べた。幼少期を過ごしたドイツを思い出す懐かしい味がして、胸がキュンとした。私はこの後も、この旅では驚くほど何度も「懐かしい」という感情が湧くことをまだこの時点では知らない。
人懐っこいクマみたいなでかい犬もいた。近くの遊牧民の犬かな。とても綺麗な目をしていた。汚くなることを一切気にせずに、たくさん戯れた。やっぱり犬が好きだ。この犬にもう一度会いたい。
少し日が沈んできたとこで「記者」がカメラを持って歩きだしたから、あとを追った。少し暗くなっていたけど、夕焼けを見にいきたかったし、彼が何にレンズを向けるのかに好奇心をいだいていた。
もうほとんどカメラには限界の暗さ。「記者」の後ろ姿は綺麗。ついカメラを向けたくなる様な、余裕のある食物連鎖の上の方にいる動物のような動きをする。
暗くなってから一緒にテントがある場所に向かった。人工的な光がない、足元がほとんど見えない中、牛のフンを踏みながら、小川をふたつ飛び越えて、林の中を歩く。
冒険感溢れる暗闇に心拍が上がる。
こういう時間がすごく好きだ。
知らない土地の暗闇の自然の中を歩くと普段眠っている「ただ、生きねば」という感覚が目覚める。自分の足音と、夜の野生の音。安心できるテントや仲間がいるとこまで辿り着けるかほんの少しだけ危うい緊張感と、たどり着かなくてもこのまま自然の中に吸収されればいいや、という解放感が混ざったこの気持ち。
・・・無事もどるとサンサルさんが焚き火を起こしてくれてた。すこしのウォッカを分けてくれた。
星の写真をダラダラ撮り、小さくなった焚き火の火を消さないように周りにある小枝をかき集めて、火が消えるまで「記者」とおしゃべりして寝た。悔しいことに何を話したかは今は思い出せない。けど、あたたかい、少し複雑な気持ちになったことだけ覚えている。
私は焚き火が消えないことを静かに祈っていた。
私は焚き火をする度にそうしているのかもしれない。
最後の最後まで焚き火から離れたくないのはいつも自分な気がする。
火が炭になる直前、ネオンオレンジに光る部分が風に当たって波打つ様子と、最後の最後に息を吹きかけると明るい光を放つ焚き火が、息を引き取る瞬間を見るのが好き。最後の小さなオレンジの光がなくなるまで見ていてたい。
そして火の温もりが消えてスッと寒くなる瞬間の虚しさを感じたい。自分で自分を十分に温めることさえできない、弱い人間という生き物であることを思い出させてくれて、なんだか安心する。そもそも強くないから。強くならなくてもいいって。
今回の旅では電波がほとんど届かない、wifiもないデジタルデトックスな旅。心が溶けていくのがわかる夜だった。
大自然の中のキャンプ特有の、夜の地球と一体化する感覚。
夜の生き物や川の音を耳にスッと眠りについた。
2023/6/28
=================================
ソフトボイルドに旅の記録を綴る、何者でもない写真旅人。2023年6月、「記者」の同行で【鷹狩のカザフ族とモンゴルの遊牧民族】取材を目的にモンゴルへ行きました。心が動いた瞬間を忘れないように記憶。
=================================