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名大で初めて〇〇した日vol.10

 名古屋大学メールマガジンNEXTをお読みいただき、ありがとうございます。2022年もあと僅かとなりました。一年の最後に、在りし日に思いを馳せていただこうと「名大で初めて○○した日」シリーズをお届けいたします。
 今回は、生命農学研究科にて動物科学を研究されている一柳健司教授に在学時代の思い出についてのお話を寄稿いただきました。一柳先生は名古屋大学理学部を1994年にご卒業されております。 

生命農学研究科 一柳健司 教授

「初めての留年、初めてのバック転、初めての九蓮宝燈」

 私の入学は1989年、共通一次試験の最後の世代です。大阪の公立高校にいた私はあまり授業に出ておらず、高校3年生の進路面談で「理学部、下宿したい、関東はイヤ、浪人はイヤ。」と言ったら、担任に「いっちゃん、その前に、これ以上学校休んだら卒業できへんで。」と釘を刺されつつ、名大と東北大はどうかと言われ、その2つを受けて合格しました(当時、名大がA日程、東北大がB日程で併願できました)。既に大学の生化学の教科書で勉強していて、かつて岡崎令治教授がおられた名大にもともと魅力を感じていたので、名大を選びました。

 名大理学部に入学し、「さあ、本当の学問を学ぶぜ!」と意気込んでいたのも初めだけ。講義を面白いと感じることができず、教養部時代も学部時代も、授業にはほとんど出ませんでした。そんなわけで、教養部では英語の単位が1単位だけ足りずに留年しました。当時は教養部科目の合格者の学籍番号が教養棟の建物の前の広場に張り出される形式だったので、まず、下宿で飲み会をし、飲んだ勢いのまま、みんなで夜に結果を見に行くのが私たちの通例でした。酔いながら「あれっ?俺、1個足りひんのとちゃう?」となったのですが、重く受け止めずに下宿に戻り、飲み会を再開しました。実感したのは翌日ですね。でも、留年中の1年間が一番楽しかったです。友人の多くも留年しました。教員になった今、単位が足りないと泣きついてくる学生達にこう言っています。「特別に単位を認めることは無理だけど、そもそも留年したって、人生終わり、じゃないですよ。これから始まるのです。」

教養部棟前広場 1991年6月4日撮影

 大学1年の春に体操部に入部しました。機械体操は未経験でした。体操部の先輩の中には未経験者も多く、未経験者でも吊り輪の2回宙返り降りや鉄棒の離れ技などをサラッとやっていたので、かっこいいなと思いました。体操は楽しかったです。このコラムのテーマは「名大で初めて〇〇した日」ですが、初めてのバック転、初めてのバック宙、初めての鉄棒の逆手車輪に順手車輪、初めての吊り輪での倒立などなど、できる技が増えていって、自分の成長を感じるのです。筋肉もつき、169cmで48kgだったヒョロ男が10kg体重を増やして、体育会の学生っぽくなりました。今はさらに10kg増えて、中年男性らしくなりました。体操部の良いところは先輩・後輩の上下関係がほとんどなく、男子も女子も仲が良いことです。学年は関係なしに、技をできる部員がチームメイトを教える、そういう集団でした。それから四半世紀が経ち、名大に着任して、今、体操部の部長をしていますが、部員たちが今でも昔と同じムードで練習していて、嬉しく思っています。

 学生時代のもう一つの中心は麻雀で、週に4日は徹夜麻雀でした。大学の単位は負け越しましたが、麻雀では常勝でした。麻雀は刻々と確率が変化する中で、見えない部分の推定を繰り返しながら最善手を選ぶゲームで、とても面白いのですが、最近はやる学生が減りましたね。麻雀には私の下宿が使われることが多かったです。一度でも私の下宿で麻雀をした人は100人を超えます。ちゃんと毎回の成績も記録していて、月間ランキングを発表して盛り上がっていました。そんな「初めて〇〇した日」は初めて九蓮宝燈をアガった日です。初めてと言っても、生涯の中でその一回だけです。2,5,8,4,7の5面待ちで、2だけ九蓮宝燈になる形。分かる人にしか分かりませんね。これに振り込んだ体操部の先輩(当時大学院生、前出の2回宙返り降りの人)には、徹夜麻雀の後、朝ごはんを奢ってあげました。大学3年目の夏、私が自動車学校の合宿に行っている間に、ついに先輩たちが「一柳に勝つための麻雀強化合宿」を始めました。今でも続く夏の恒例行事です。

 4年次の卒業論文研究は阪大で行いました。研究を始めた途端、学問へのスイッチが入りました。大学院も阪大に進学しました。博士課程では2回目の留年も経験しましたが、遊び呆けた初回の留年と質的に異なり、ほぼ研究に時間を使い、国際学会で発表し、論文を書き、翌年からのアメリカでのポスドクの契約を得て、と研究者の階段を少しずつ登っていきました。私に青春をくれたのが名大で、私を研究者に育ててくれたのが阪大だと思っていて、どちらにも感謝しています。

 最後に、昨年、名大生の有志で運営している「名大教授図鑑」(←詳細はクリック)にピックアップして頂きました。こんな学生生活送っていた私が今、名大生とどう向き合って教育しているのか、興味がある方はご覧ください。
 
📚一柳健司教授の略歴(研究室HP)(←詳細はクリック)

📚名大からのプレスリリース(↓詳細はクリック)
「生き物の進化におけるSINE配列の機能を解明」(2021年)
「内在性レトロウイルス配列によってヒトのエピゲノムが変化してきたことを発見」(2022年)