「めいだい・りべらるあーつ」vol.3
名古屋大学にて最先端研究を行う研究者についてお伝えする新企画「めいだい・りべらるあーつ」。約2年ぶりの「第2弾」につづき、連投の「第3弾」です。
今回は名古屋大学環境医学研究所にて栄養代謝や免疫について研究を行う伊藤パディジャ綾香講師にお話を伺いました。
伊藤先生に一問一答!
「What about in animals?」
-先生はどのような研究をされているのですか?
栄養代謝が免疫応答をどのように制御しているか、栄養代謝の異常は病
気の発症にどのように関与しているかを研究しています。「医食同源」と
いう言葉があるように、食べたものが私たちの体の調子に影響しているこ
とを経験的に知っていますが、その実態は明らかになっていないことも多
いです。食べたものが体の中で、免疫細胞の中で、どのように使われてい
るのかを明らかにして、免疫が関わるさまざまな病気の治療や予防に役立
てたいと考えています。
-研究の道に進んだきっかけは?
研究者になりたいという強い意志があったわけではなく、大学の卒業研
究に興味を持って、もう少し研究を続けたい、という気持ちが続いた結
果、今に至っています。虚血状態にあった肝臓に再度血流が回復するとき
には、再灌流障害が起こります。卒業研究では、虚血再灌流時の肝臓にお
いて、抗酸化作用を持つビタミンCやビタミンEが減少することが明らかと
なり、その後、食事(栄養素)と病気の相互作用や、食事の変化による病
気の発症機序を明らかにしたいと考えるようになりました。
-研究が面白い!と思った瞬間はどんな時ですか?
自分の考えていたことが実験で証明できたときは嬉しいですが、自分の
仮説や、論文で報告されていることと異なる結果が出た時には、何か新し
い発見なのかも!と気持ちが高まります。簡単には説明できない生命の複
雑さを解き明かすのが、研究の面白さなのだと思います。思うように進ま
ず、悩むことも(悩むことの方が?)多いですが笑
-今だから言える、ここだけの話を聞かせてください。
留学先でのポスドクトレーニングを終えて、帰国した後、しばらく研究
を中断した時期がありました。その期間、留学先のメンターが毎日のよう
に夢に登場して「What’s new, Ayaka?」と聞いてくれました。そのラボで
の研究生活がとても充実していて、恋しく感じていたのだと思います。し
ばらくして、そのメンターが来日する機会があり、「やりたいことをやれ
ばいい、友人として応援する」と言って頂けたことがとても励みになり、
研究を再開することにしました。挫折しそうな時は、メンターの言葉を思
い出すようにしています。
-休日はどのように過ごされていますか?「健康」のために気を付けていらっしゃることがあれば教えて下さい。
子育て中ですが、平日は一緒に過ごす時間がほとんどないので、休日は
なるべく家族と過ごすようにしています。少しの時間でも良いので、必ず
外に出かけるようにしていて、天気の良い日はピクニックするのが好きで
す。また、食文化と深く関わる年中行事を楽しむようにしています。
健康のために気をつけていることは、手作りの食事を食べることです。
食べることは生きる基本だと考えています。幼い頃から、おいしく楽しく
健康に食べることが、健康な体や精神を育てるうえで大事だと、管理栄養
士で料理研究家の母から言い聞かせられ、私もそうだと感じているので、
「食」は大事にしています。
-先生は学生時代を関西・関東でお過ごしですが、名古屋/名古屋大学の印象についてビフォー&アフターでお聞かせください。
高校生まで名古屋市近郊で育ったので、名古屋大学といえば、地元高校
からの進学者が多く、地域密着型の大学、というのがビフォーの印象で
す。その印象は間違っていなかったと思いますが、それに加え、全国各
地、世界各国の研究者が在籍していて、世界に研究成果を発信している素
晴らしい大学であること、さまざまな分野の一流の研究者たちと交流しな
がら研究を進められる、恵まれた環境であることを今、実感しています。
今よりも学内の国際化が進み、多様な人材が活動しやすい大学になると、
さらに魅力的な大学になりそうだと感じていて、どのように進化していく
のだろうとワクワクしますし、大学の進化や発展のために少しでも役立て
ることがあれば嬉しく思います。
-My Best Wordを教えて下さい-
What about in animals?
-この言葉を選ばれた理由は?
留学中のメンターが頻繁にラボミーティングで口にしていた言葉です。
医学生物学の研究をする上で、細胞を用いた実験や試験管内での実験をす
ることは多いですが、その現象が生体内でも起こっていることなのか、生
体内で意味のあることなのかを明らかにすることは、とても重要だと感じ
ていて、研究を進める上で意識しています。また同様に、同じ実験を繰り
返して再現性が得られることはもちろん、モデルや方法を変えて、別の角
度からも同じことを言えるのか、という意味での再現性も確認しながら研
究を進めています。